日本の乏しい危機認識を憂う

 

 

令和の時代の日本は、国家の基本にまつわる重要かつ困難な課題をひとつまたひとつと解決していかなければならない。パクスアメリカーナ(米国による平和)の下で労せずして平和の配当を得た平成の30年間とは対照的に、私たちは自らの手で日本国と国民、国益を守る力を養わなければならない。

 

令和元年は北朝鮮による断続的なミサイル発射で始まった。2年は米国によるイラン軍司令官殺害、それを受けてのイラン政府の報復宣言及び2015年核合意に反して無制限にウラン濃縮を行うとの発表で幕が上がった。

 

 

緊迫度増すホルムズ海峡

 

この状況下、わが国の安全保障の脆弱性が目に余る。北朝鮮の軌道修正型ミサイルは現時点の日米の防衛体制では撃墜不可能だ。日本列島全体が北朝鮮のミサイルの射程内にあり、彼らがすでに完成させていると見られる小型核爆弾或いは生物化学兵器搭載のミサイルの脅威に直面している。それ以前に、中国のミサイルは1970年代初頭から日本全土をとらえている。

 

米国とイランが対立をどのレベルで抑制できるのかは定かではない。中露両国は対立の深刻化と米国の力の消耗を好機ととらえているはずだが、彼らにイランへ肩入れして米国と戦う意志があるとは思えない。

 

複数の大国を巻き込んだ紛争にならずとも、米イラン紛争はホルムズ海峡の緊迫度を高め、原油はすでに値上がりした。中東由来の原油の安定供給は日本の産業、経済、国民生活の命綱である。

 

ホルムズ海峡を通る日本向けタンカーの安全は日本国の最重要課題で、わが国は付近の海域に自衛艦を派遣する。だがその根拠は「調査・研究」である。しかも自衛艦はホルムズ海峡には入らない。一体どの国が日本のタンカーを守ってくれるのか。日本国の船も国益も日本自身が守るのが当然で、その為に必要なのが憲法改正であることは明らかだ。

 

 

改憲へ踏み出せ

 

しかし、現実は厳しい。安倍政権といえども、どれだけ真剣に憲法改正を目指しているのか。憲法改正に背を向ける主要閣僚も少なくなく、首相一人が旗を振っても無理である。

 

国民の意識はどうか。米国によるイラン軍司令官殺害直後、諸国のネット空間で最も多く飛び交った言葉が「第3次世界大戦」だった。日本では「ガチャピンとムック」だった。30年程前、子供たちに大人気のテレビ番組の主人公のガチャピンとムックが新たにスマホゲームになったことへの反応だという。彼我の世論の認識のなんという落差か。

 

衰退と滅亡の渕にあるかのようなわが国の現状を厳しく認識し、責任ある国家への道の第一歩を踏み出すことが令和の日本の課題である。

 

筆者:櫻井よしこ(国基研理事長)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第646回・特別版(2020年1月8日付)を転載しています。

 

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Yoshiko Sakurai, Japan Institute for National Fundamentals

Author:

Yoshiko Sakurai is president of the Japan Institute for National Fundamentals.

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