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「トップガン」騒動で暴かれた中国のハリウッド買収工作

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33年前に大ヒットした米戦争映画「トップガン」の続編(2020年夏公開予定)の予告編で、主演のトム・クルーズ氏が着ているフライトジャケットの背中のワッペンから、前作にはあった日本と台湾の旗が消えていた問題は、ファンの間にとどまらず、米政界にも波紋を広げている。

 

共和党の重鎮、グラム上院議員は、続編に中国企業「テンセント・ピクチャーズ」が出資していることが原因だと断じ、「これが中国マネーの力だ。最悪だと思う」と嘆いた。

 

16年大統領選の共和党候補指名争いで健闘したクルーズ上院議員も「トップガンは米映画の傑作なのに、ハリウッドを仕切る連中が中国共産党に媚(こび)を売っているのは極めて残念だ」と非難。中国は米国と同盟関係にある台湾の権利を侵害しているにもかかわらず、「米映画界は言論の自由のために立ち上がるのを恐れ、中国の台湾政策に加担している」と訴えた。

 

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ハリウッドはかつて、中国共産党によるチベット住民弾圧を描いたヒット作「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(ブラッド・ピット主演、1997年公開)を世に送るなど、多くの映画人が中国の人権侵害に抗議の声を上げていた。

 

ところが、これに危機感を覚えた中国共産党指導部は、米映画界に中国マネーを注入し、作品内で中国に肯定的な描写を増やすようにさせる宣伝工作を年々強化させている。

 

米紙ニューヨーク・タイムズによると、97~2013年に全世界で興行成績上位100位に名を連ねた作品のうち、中国が資本参加した作品は12本。しかし、14~18年は一気に41本に増えている。

 

これら全てが中国を題材にしたり、作品中で中国に言及したりしているわけではない。しかし、中国を批判的に扱った作品が見事なほど一本もないのも事実だ。

 

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象徴的事例は、旧ソ連の米本土侵攻を描いた1980年代のアクション巨編「若き勇者たち」をリメークした「レッド・ドーン」(2012年公開)だ。

 

この作品はもともと、中国による米国侵攻を題材にしていたが、撮影途中で作品の内容に気付いた中国が制作会社の米MGMに圧力をかけ、撮影済み映像のデジタル処理で敵役を中国軍から北朝鮮軍に変更させた。

 

しかも、こうした傾向は今後、さらに拍車がかかることが予想される。

 

中国で新聞や出版、テレビ・ラジオ局、映画産業を監督する「国家新聞出版広電総局」が昨年3月、中国の最高行政機関である国務院の管轄から中国共産党中央宣伝部の直接管理下に置かれたためだ。

 

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中央宣伝部は、共産思想や党の路線を周知徹底させるプロパガンダ機関だ。

 

同総局を管理下に置いたのは、中国の映画産業を党の監視下に置くことに加え、中国市場を重要視する米映画産業に対し、中国国内での公開許可をエサに、中国の政治的主張に沿った作品をつくるよう「自主規制」させる意図が込められているのは確実だ。

 

しかし、そんな宣伝臭の強い米映画など、誰が見たいだろう。米議会では「続・トップガン」の件を機に、中国の工作活動に対する懸念が急速に高まりつつある。今回の騒動がハリウッドの「正常化」につながることを祈りたい。

 

筆者:黒瀬悦成(産経新聞ワシントン支局長)

 

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