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核廃絶の気運高まるか ローマ法王訪日に期待を募らす広島と長崎

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キリスト教最大の教派、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(82)が11月下旬、世界唯一の戦争被爆地である広島市と長崎市を訪問する。

 

全世界で13億人以上の信徒を擁するローマ・カトリックのトップに立つ法王は、核廃絶に向けて被爆地でいったいどのようなメッセージを発信するのだろうか。特に原爆慰霊碑の前で、どのような平和アピールを世界に届けるのだろうか、注目が集まっている。

 

世界が核軍拡競争の時代に再び突入したとみられるなか、法王が発するメッセージはとりわけ重要になってきている。

 

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国際社会を見渡せば、米国とロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した。同条約に一度も参加したことがない中国は、核戦力を増強し続けている。その一方で、国際世論に反して、北朝鮮やイランは核保有国を目指して核開発を続行している。さらには、核軍縮を目指すことを目的とした画期的な国際条約である核拡散防止条約(NPT)体制はメルトダウンをしているかのようだ。2020年のNPT再検討会議に向けた今年5月の準備会合は、何らの具体的な成果も上げることができずに終わった。

 

核軍縮に逆行するような動きが目立つ中、法王はどれだけ核拡散の流れにブレーキをかけ、核なき世界に向けた機運を高められるのか。

 

 

11月24日に訪日予定

 

日本メディアの報道によると、フランシスコ法王は4日間の滞在予定で日本を訪問する。11月24日に広島と長崎を訪れ、原爆の犠牲者に追悼の祈りを捧げる。翌25日に東京で天皇陛下や安倍晋三首相と会見する予定だ。

 

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1945年8月6日に広島に投下された原爆では、同年末までに約14万人が亡くなった。同年8月9日に起きた長崎への原爆投下では約7万4000人が死亡した。

 

被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は2018年度末時点で14万5844人となり、初めて15万人を割り込んだ。被爆者の平均年齢は過去最高の82.65歳となり、高齢化が急速に進んでいる。

 

ローマ法王の訪日は1981年2月に法王として初めて訪日した故ヨハネパウロ2世以来、38年ぶりの2度目となる。

 

ヨハネパウロ2世は、1981年の訪日時には広島の平和記念公園の原爆慰霊碑の前で「平和アピール」を読み上げた。この平和アピールは、世界に核兵器廃絶を強く呼び掛け、全世界の人々に大きな感銘を与えた。ヨハネパウロ2世は熱心な「平和の使者」としての国際的な名声を得た。

 

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フランシスコ法王もヨハネパウロ2世同様、平和や核廃絶への強い思いを抱いている。フランシスコ法王は2017年末の休暇シーズン中、長崎原爆で亡くなった幼子の弟を背負いながら火葬場で順番を待つ1人の少年の姿をとらえた写真をカードに印刷して配布した。

 

この衝撃あふれる写真は、多くの人々の心に突き刺さった。法王は、カードの裏側には「戦争がもたらしたもの」とのメッセージを添えていた。

 

 

広島、長崎がローマ法王に期待すること

 

広島と長崎の人々は、被爆地を訪れるローマ法王に何を望んでいるのか。

 

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広島市の松井一実市長は7月17日、筆者を含む外国プレスとの会見で「ローマ法王が来られるということであれば、被爆の経験をし、同じような惨禍を許さないための取り組みを続けている私たちを勇気づけることになる。さらに被爆者の思いに立脚した核兵器廃絶、そして、世界恒久平和の実現という被爆地の願いをしっかりと受け止めた上で何らかの力強いメッセージを発信していただけるのではと思っている」と期待を述べた。

 

長崎市の田上富久市長も思いを同じにする。

 

田上市長は「ローマ法王の訪問が実現することは私たちにとっては大変嬉しいこと」と述べたうえで、「法王ご自身が核兵器廃絶を願っておられる方なので、そのメッセージをぜひ被爆地から発していただきたい」「『長崎を世界最後の被爆地に』というメッセージをぜひここから発信していただきたい」と期待を表明した。

 

ヨハネパウロ2世は来日時に「平和アピール」を発し、「戦争は人間の仕業である」とのメッセージを残したことで知られている。

 

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田上市長は「フランシスコ法王の来日によって、再び歴史に残るメッセージを発信していただきたい。そして、それを多くの人々がずっと語り継いでいくことができる平和へのメッセージを残していただけることを期待している」と述べた。

 

 

潜伏キリシタン関連遺産

 

また、田上市長は、2018年夏に世界文化遺産に登録されたばかりの「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)の意味や価値について、法王に語ってもらうことにも期待を示した。

 

潜伏キリシタンとは、キリスト教禁教期の17世紀から19世紀の日本において、250年間ほど隠れて信仰を守り続けたキリスト教徒を指す。潜伏キリシタンは、ハリウッド映画「沈黙-サイレンス-」のヒットもあり、国際社会の注目を集めてきた。

 

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この映画は、遠藤周作が1966年に出版した小説「沈黙」を原作とし、基本的人権としての宗教の自由の大切さや信仰の崇高さを教えてくれている。

 

しかし、長崎市の田上市長は「いまだに世界にはこの世界遺産の価値というのも十分に伝わっていない。その意味で、ローマ法王がこの長崎でその世界遺産の意味や価値を語っていただくことに私たちは大変期待をしている」と述べた。

 

フランシスコ法王は長崎市浦上地区にある浦上天主堂を訪問する予定だ。旧浦上天主堂は長崎原爆投下の爆心地からわずか約500メートルの地点に位置し、建物はほぼ倒壊した。原爆では浦上地区に住んでいた約1万2000人の信徒のうち、約8500人が死亡した。

 

浦上天主堂は1959年に再建され、日本最大規模のカトリック教会となっている。

 

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原爆の非人間性について、全国16の司教区をまとめる日本カトリック司教協議会会長の高見三明・長崎大司教(73)は「爆撃した時のパイロットはカトリック信者だった。しかも、出発するときは神父の祝福を受けていた。ひどいじゃないですか。人を殺すのに祝福を受けていたなんて」と述べた。

 

高見大司教は自らが妊娠中の母の胎内で被爆した胎内被爆者でもある。祖母や叔母らも原爆で命を落とした。

 

高見大司教は、「キリスト教の教会で意図的に何万人死ぬと分かっていて、プルトニウムというすごい爆弾を爆発させた」と語った。

 

高見大司教は、浦上天主堂の廃墟が戦後、原爆の痕跡として残されなかった理由について、「アメリカとしては(原爆の)痕跡を取り払ってほしかった。今でも原爆の写真類とか、原爆の結果を見せるようなものをアメリカ政府は禁じている。アメリカ政府は基本的に原爆の結果を国民に見せないようにしている。本当に残念なことだ」と述べた。

 

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浦上天主堂では、旧天主堂で被爆したマリア像、通称「被爆マリア像」を見ることができる。

 

高見大司教は、「近年では、アメリカの高校生たちも長崎原爆資料館を訪れ、涙を見せていることもある」と述べ、核なき将来への期待を込めた。

 

筆者:高橋浩祐(英軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員)

 

 

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