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新型コロナが変える対中関係

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中国発の新型コロナウイルスの世界最大感染国となった米国の首都ワシントンは中心部もゴーストタウンとなった。連邦の政府と議会以外の施設がいっせいに閉まり、穏やかな陽光の下での無人街は奇妙な緊迫を感じさせる。

 

そんな異様な環境で暮らす人たちのいまの生活標語は「ソーシャル・ディスタンシング(社会での距離保持)」である。他者との間に物理的な距離をおくことが防疫策の基本というわけだ。

 

さてウイルス感染の爆発的な広がりは衰えないとはいえ、ワシントンの論壇では、人類の歴史でも珍しいこの大事件が今後の世界をどう変えていくか、という議論も熱を帯びてきた。ではなにがどう変わるのか。米側の各界の識者たちの広範な予測はだいたい3つの大きな変化にまとめられる。

 

第1は世界のグローバル化の大幅な後退である。

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グローバル化とは人、物、カネが国境を越えて自由に動くことだ。その流れが世界にもたらす利益は巨大だった。だが中国からの全世界へのウイルスの感染もそのグローバル化の産物だった。危険なウイルスに感染した人間が他の国に渡ってそれを広めたのだ。

 

となれば、その流れにブレーキがかかるのは自明である。世界の多数の国がすでに外国からの入国者を止めている。政治外交評論家のマイケル・バロン氏は「これまでのようなグローバル化はもう復活しない」とまで断言した。その結果、経済面でのグローバルなサプライチェーン(供給網)も内向きの縮小が予測されるわけだ。

 

第2は国家主権の役割拡大である。コロナウイルスの被害にあった国はどこでもその国の政府、つまり主権国家自体がその対策の責任を負った。世界保健機関(WHO)も国連も頼りにはならなかった。どの人間集団でも生存を脅かされれば、それを救うのはその集団の属する主権国家の政府だという現実がより顕著になるわけだ。

 

ワシントンの国際問題評論家、ヒューゴ・ガードン氏は「ウイルス拡散ではとくに欧州でEU(欧州連合)はなにもせず、各主権国家が個別に対応したが、国民の側も自国政府への同一意識が驚くほど強くなった」と解説した。

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第3は中国の国際的な立場である。ウイルス感染国は当然、中国との今後の関与に慎重になるだろう。とくに米国では習近平政権の当初のウイルス隠蔽(いんぺい)への非難が強い。その中国がいまその責任に背を向け、感染国への支援の姿勢をみせる。

 

米国側では中国のそんな動きを「放火犯が消防士のふりをしている」(アジア研究学者、マイケル・ソボリク氏)とまで酷評する。ジム・バンクス下院議員は中国が米国のウイルス感染による被害に賠償金を支払うことを求めた。トム・コットン上院議員は中国政府の責任を追及する決議案を提出した。

 

米国でのこうした広範な中国糾弾はトランプ政権の対中姿勢の硬化と合わせて国際的な中国忌避へと広がることも予測されるわけだ。

 

もちろんまだ予断を許さない。だがいずれの変化も日本を揺るがす激流となりかねないだろう。

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筆者:古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

 

 

2020年3月29日付産経新聞【あめりかノート】を転載しています

 

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