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泰緬鉄道を走ったSL、靖国神社奉納から40年 100歳の元鉄道連隊大隊長が思い語る

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先の大戦時に旧日本軍によってタイ―ビルマ(現ミャンマー)間に建設された泰緬(たいめん)鉄道を走り、戦後34年たって日本に帰還した蒸気機関車C56形31号機が31日、靖国神社(東京都千代田区)に奉納されて40年の節目を迎えた。境内にある資料館「遊就館」で記念式典が行われ、鉄道建設に従事し、31号機の帰還に尽力した元日本陸軍鉄道第9連隊大隊長の菅野廉一(すがの・れんいち)さん(100)=新宿区=が出席。産経新聞の取材に歴史の生き証人である31号機への思いを語った。

 

泰緬鉄道は昭和17(1942)年7月、ビルマ戦線で、旧日本軍の人員や物資の輸送路を確保するため、建設が始まった。かつて英軍が建設を構想しながら断念した山岳地帯。ジャングルを貫き、あまたの谷に木橋を架けていく。重機の代わりにゾウが使われた。

 

車両を牽引(けんいん)する機関車として現地に〝出征〟したのが90両のC56形蒸気機関車。中でも31号機は特別だった。当時、鉄道第9連隊中隊長として建設の先頭に立った菅野さんは「線路の敷設が進むたびに、試運転の31号機が進んでいく。常に線路の最先端にいた31号機は、われわれにとって象徴だった」と振り返る。

 

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「1日1キロ」敷設

 

まさに突貫工事だった。ノミで岩を削っては路盤をつくり、人海戦術でジャングルを切り開く。1日約1キロのペースで線路を敷設し、東海道線の東京―大垣間に匹敵する全長約415キロの線路を、わずか約1年3カ月で完成させた。

 

32年に公開された映画「戦場にかける橋」で、舞台となったタイのクワイ河鉄橋は泰緬鉄道をシンボルとして描かれている。泰緬鉄道の建設では過酷な労働により多くの捕虜の人命も失われた。日本側は戦後、「俘虜(ふりょ)(捕虜)関係調査中央委員会」を設置。「意図的な虐待は絶対にない」と連合国側に説明したが、英国では「死の鉄道」と呼ばれ、旧日本軍による残虐行為の代名詞にもなった。

 

ただ菅野さんは「映画は真実ではない。決してお客さま扱いしたとは言わないが、虐待の意思は全くなかった」と証言する。また、映画では捕虜が技術的な援助をしたと描かれているが、「実際は鉄道連隊が指揮した。毎日決まった数の捕虜が送られてきたが、夕方には帰した」と語る。

 

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「末永く残って」

 

菅野さんは戦後、ビルマ・ラングーン(現ヤンゴン)のアーロン収容所に送られ、抑留された。戦犯として裁かれ、命を落とした戦友もいた。

 

23年の復員後、鉄道第9連隊の戦友会を発足。何度もタイへと渡り、31号機を捜し続けた。そして53年6月、泰緬鉄道から遠く離れたマレーシア国境に近い町で日本人の鉄道研究家が偶然発見。解体を待つ31号機は草むらに放置されていた。連絡を受けた菅野さんらが輸送費の募金に奔走。翌54年、タイ国内で発見された44号機とともに貨物船で運ばれた。37年ぶりの帰還を果たした31号機は靖国神社に奉納。44号機は静岡県の大井川鉄道に送られ、復活運転を果たした。

 

「日本に帰ってきた31号機は、向こうで亡くなった戦友たちの代表。だから靖国神社に奉納した」

 

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戦友会では毎年、31号機を囲んで慰霊祭を行ってきたが、出席者の減少により平成15年で終了。しかし、泰緬鉄道の建設で命を落とした戦友や捕虜、現地の労働者たちを供養する気持ちに変わりはない。菅野さんが語気を強める。「この機関車の存在をいつまでも忘れてほしくない。戦争の悲惨さ、むなしさを伝えている。末永く、残っていてほしい」

 

菅野さんが戦前から撮り続けてきた泰緬鉄道などの写真は8月3日~11月3日に遊就館で展示される。

 

筆者:大竹直樹(産経新聞)

 

 

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【用語解説】泰緬鉄道

先の大戦時に、軍事物資輸送の補給路としてタイ(泰)とビルマ(緬甸・現ミャンマー)を結んだ鉄道。タイのノンプラドックとビルマのタンビザヤ間全長約415キロを約1年3カ月で開通させた。日本軍約1万5千人のほか連合軍捕虜約5万5千人、現地の労働者ら約20万人(推定)が建設に従事。現在も一部がタイ国鉄の路線として残存する。

 

 

 

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