This post is also available in:
全国で拡大するクマ被害を背景に今後も高い需要が見込まれ、品薄になっている「クマ撃退スプレー」。非常時の護身用に用いられるが、粗悪品や模造品が横行する消費トラブルも相次いでおり、強い成分を含むスプレーの取り扱いに戸惑う購入者もいる。7月1日には名古屋市内でスプレーが噴射される事案も発生。専門家は正しく使わなければ、危険を招く恐れもあるとし、「使用前に成分と使い方を理解しておくことが重要だ」と話す。
「現在全店舗で完売状態、次回入荷は7月下旬になる」と話すのは、大手アウトドアメーカー「モンベル」(大阪市西区)の担当者。同社では例年に比べてクマ対策アイテムに関する問い合わせが増加しているという。なかでも効果の高いクマ撃退スプレーについては春先の入荷後、すぐに全店舗で完売。同社では米国環境保護局(EPA)の認証を受けた製品を1万3000円程度で取り扱っているが、次回の入荷予定は7月末となっている。

担当者によると、キャンプや登山のアウトドア時以外にも、日常生活の備えとして購入する人も増えており、今後も品薄状況は続くとみられる。令和6年からは、北海道や東北などの旅行先での使用に向けたレンタルサービスを開始したところ、好評だという。
■
クマ撃退スプレーは、濃縮された唐辛子エキスを主成分とした非常に強力な護身用グッズ。万が一のクマとの遭遇に備え、正しい使い方を知っておくことが必要だ。
遠くにいるクマには効果がないため、スプレーを噴射する前に、自分の方へクマが向かってきているのか行動をしっかりと確認しなければならない。噴射によりかえってクマの過激な反応を引き起こす恐れもある。クマと近い距離で遭遇したか、あるいはクマが数メートルまで接近してきた場合に、クマの目と鼻のあたりを狙って噴射。その際には、自分にスプレーがかからないよう風上からの噴射が基本となる。
一方、撃退スプレーに関する消費者トラブルも相次いでいる。大手通販サイトでは、相場より安い1000円台の商品も見受けられ、SNS上では模造品への注意喚起の投稿が並ぶ。
消費者向け相談窓口を設置する国民生活センターには、通販サイトで購入したクマ撃退スプレーが液漏れし、返品対応もされないという相談があったほか、通販で購入手続きをしたにもかかわらず商品が届かないといった事例も発生しているという。また、スプレー特有の強力な成分に「処分方法がわからない」「怖くて使えない」といった声も寄せられている。
■
7月1日には、名古屋市内の郵便局で利用客の20代男性がクマよけスプレーを噴射し、噴射した男性を含む男女計5人が病院に搬送された。いずれも命に別条はない。男性は「誤って噴射した」と話しているという。
クマの生態に詳しい東京農工大大学院の小池伸介教授(生態学)はクマ撃退スプレーについて「正しい使い方ができなければ効果はない。クマと数メートルの距離になった状況で使う、最終手段だ」と指摘する。
その上で、スプレーの品質に関し「米国環境保護局の認可があるかどうかが1つの目安になる。使用前には成分や量、噴射距離を理解しておくことが重要だ」と強調。日常的な備えとして購入する人が増えている現状に「最近のクマの出没状況から『持つな』とは言えないが、市街地での携帯は、人への健康被害など噴射による二次被害のリスクが高い」との見解を示した。
筆者:堀口明里(産経新聞)
This post is also available in:

