台湾南部・高雄市の廟「紅毛港保安堂」で、安倍晋三元首相の銅像に献花する高市早苗・前経済安全保障担当相(手前左)ら=2025年4月(西見由章撮影)
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高市早苗首相は就任から半年、歴代政権が向き合ってきた問いに直面している。政治的な勢いを憲法改正へと結実させることができるのか、である。
与党・自民党にとって、憲法改正は単なる政策目標にとどまらない。1955年の結党以来の党是である。高市氏にとっても、この問題は個人的な意味合いを帯びる。師と仰ぐ安倍晋三元首相は、改憲を政権の中核課題に据えながら、ついに実現には至らなかった。
情勢は多くの点で追い風となっている。中東情勢の緊迫化はエネルギー市場を揺さぶり、中国は軍事・経済の両面で日本および周辺地域への圧力を強め続けている。何より、世界の地政学は大きな転換期にある。
国内では、高市首相と自民党は連立枠組みの再編を経て求心力を強化し、2月の衆院選で歴史的勝利を収めるなど、政権基盤の固めを進めている。
継承の重責
高市首相はすでに意欲を明確にしている。4月12日に東京で開かれた自民党大会で、来年の党大会までに憲法改正案の提出に向けた明確な展望を示したいとの考えを表明した。
さらに、「歴史の新たな一ページを開くべきか」を国民投票で直接問う必要があるとも訴えた。
論点の核心にあるのが、1946年の連合国軍占領下で起草された憲法9条である。第1項は戦争放棄と国際紛争を解決する手段としての武力行使や威嚇を否認し、第2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。

この結果、日本は長年にわたり、実質的には軍隊を保持しながら、憲法上はこれを禁じているかのように読めるという、明白な矛盾を抱えてきた。
現時点で高市氏は、最も踏み込んだ改憲論を掲げているわけではない。例えば、第2項の全面削除を求めてはいない。むしろ、自衛隊の存在と必要な自衛措置の行使を明記する条項を追加しつつ、現行の2項を維持するという、自民党の主流的立場に沿う姿勢を示している。

9条を巡る論点
これは穏当な提案にも映るが、文言の重みは小さくない。自衛隊はすでに存在し、国民から広範な信頼を得ている。歴代政権は長年にわたり、憲法9条は自衛のために必要最小限の実力行使を許容するとの解釈を積み重ねてきた。
もっとも、その解釈は常に法的均衡と曖昧さの上に成り立ってきた。自衛隊を憲法に明記したからといって、日本が直ちに「普通の軍事国家」に転じるわけではなく、戦後の平和主義が否定されるものでもない。だが、自衛隊に明確な法的根拠を与え、憲法との緊張関係にあるとの批判を弱める効果は大きい。
このため、支持者の一部は今回の提案を単なる象徴以上の意味を持つものと捉える。戦後長く日本に影を落としてきた論点に、少なくとも政治的な決着をもたらす可能性があるからだ。さらに、自衛隊が憲法上明確に位置付けられれば、防衛政策や自衛隊の権限を巡る今後の議論は、これまでとは異なる前提から出発することになるだろう。
険しい道のり
では、高市政権の前途は開けているのか。必ずしもそうではない。
好意的な世論調査だけで事態が動くわけではない。日本の憲法改正手続きは、もともと高いハードルが設けられている。改正案はまず、国会の衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成を得なければならない。その上で国民投票に付され、有効投票の過半数の賛成を確保する必要がある。
高市氏の険しい戦いは、まさにここから始まる。原油高や経済・国際情勢の不透明感が広がる中でも、内閣支持率は底堅く推移し、一定の政治的資本を手にしている。しかし、与党陣営は参院で発議に必要な3分の2には届いていない。保守勢力内でも、改憲の踏み込み度合いを巡り見解は一枚岩ではない。

世論もまた、決して収斂しているわけではない。イラン情勢や中国への警戒感の高まりなど、厳しさを増す安全保障環境は、抑止力や日本が置かれた法的制約への関心を高めている。これは改憲論に追い風となり得る。一方で、戦後の記憶に根差した懸念はなお根強く、憲法改正を伴わずとも防衛力の強化は可能だとする見方もある。
こうした分断は4月19日、国会前で開かれた反対集会にも表れた。「戦争反対」「憲法を変えるな」と掲げた参加者は主催者発表で約3万6000人に上り、政府の改憲路線を戦後平和主義への脅威と批判した。
それでも高市氏は、第一歩を踏み出した。今後は、世論の共感や不安を国会での発議に必要な議席、さらには国民投票での過半数へと結び付けられるかが問われることになる。
筆者:吉田賢司(JAPAN Forward記者)
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