ニデックの半導体ソリューションセンターが入る建物=川崎市(©産経新聞)
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ニデックの不適切会計疑惑をめぐり、同社が第三者委員会の設置を公表した2025年9月3日以降、同社の株価は急落し、3120円あった株価は、同年10月31日に一時1883円(終値)まで下落し、2026年3月16日現在、2261円(終値)であり、依然株価は回復していない。
本稿では、不正会計によって株価が下落することにより損害を被った投資家はどのように救済されるのかについて解説する。なお、より詳細な内容や過去の裁判例については、証券訴訟支援チーム / 牛島総合法律事務所 - Securities Litigation Response Team / Ushijima & Partnersを参照されたい。
損害を被った株主は何ができるのか
有価証券報告書等の虚偽記載等によって損害を被った株主は、当該株式を発行する会社及びその役員に対して損害賠償を請求できる。損害賠償請求の根拠としては、金融商品取引法(以下「金商法」という。)と民法の不法行為であることが多い。このような請求を行う訴訟を一般に証券訴訟という。

不法行為に基づく損害賠償請求をするには、①有価証券報告書等の虚偽記載の存在(不法行為)、②①に関する故意又は過失、③損害の発生及びその額、④①と③との間の因果関係を主張立証する必要がある。
これに対し、金商法に基づく損害賠償請求は、民法の不法行為に基づく損害賠償請求に比べて要件が緩和されており、会社や役員の過失(上記②)を立証する必要がなく、会社や役員の側が、無過失を主張立証する必要がある。また、損害の額を推定する規定があり、株主が当該推定規定を利用する場合は、損害と因果関係(上記③及び④)の立証が不要となる。
他方で、金商法に基づく損害賠償請求は、賠償額の上限規定があることなどから(金商法21条の2第1項、19条1項)、民法の不法行為に基づく請求(民法709条)の方がより賠償額が多くなる可能性があるため、実務上は、両方の請求がなされることが多い。
金商法上の損害推定規定とは
金商法に基づく請求の場合、虚偽記載等の公表日前1年以内に株式を取得し、公表日において引き続き当該有価証券を保有する株主は、損害額の推定規定を用いて損害を主張することができる(金商法21条の2第3項)。
推定される損害の額は、開示書類に虚偽記載があることが公表された日を基準として、公表日前1カ月間の市場価額の平均額から公表日後1カ月間の市場価額の平均額を控除した額である。
もっとも、会社は、損害額の全部または一部が、虚偽記載等によって生じるべき有価証券の値下り以外の事情により生じたことを立証した場合には、当該部分に関しては損害賠償額を減額することができる(金商法21条の2第5項)
有価証券報告書等の虚偽記載等と因果関係のある損害とは
株主は、推定規定を用いない金商法上の請求をする場合及び民法の不法行為に基づく請求をする場合、損害額と因果関係を立証する必要がある。
虚偽記載と相当因果関係のある損害とは、虚偽記載がなかったとしたら株主が置かれていたであろう経済状態と実際の経済状態の差をいい、具体的には虚偽記載に起因する市場株価の下落分を分析することになる。
証券訴訟の困難さ
証券訴訟では、有価証券報告書等の虚偽記載等に起因する株価下落に関する因果関係や損害について、複雑かつ専門的な主張立証を要し、満足することができる結果を導くには、法的な観点のみならず、会計、経済的な観点からの専門的知見が不可欠である。したがって、証券訴訟を行うためには、法律事務所選びが非常に重要となる。
どのような法律事務所を選ぶべきか
証券訴訟の相手方となる上場会社は、通常、大規模法律事務所や高度に経験を蓄積した弁護士チームを擁し、組織的で緻密な防御活動を行う。そのため、株主側が満足することができる結果を得るためには、これら大規模法律事務所と同程度かそれを超える豊富な実務経験と金融規制法制への深い理解に裏付けられた高度な訴訟戦略を行うことができる法律事務所を選ぶ必要がある。
しかしながら、大規模法律事務所の多くは、既に上場会社を依頼者としていることから、株主を代理し当該上場会社を相手方とする裁判を受任することは、コンフリクトのため、できないことが少なくない。

したがって、大規模法律事務所ではなく、企業法務の中でも金融法に精通している法律事務所を選ぶ必要がある。また、上記のとおり証券訴訟は複雑かつ専門的であるため、裁判、特に株価に関する紛争を多く扱っている法律事務所を選ぶことが極めて重要である。
ニデックは、本年3月3日、その時点における一定の第三者委員会の調査結果の調査報告書を公表した。同調査報告書においては、「多数の会計不正が発見された」とされており、これらの会計不正等によるニデックの2025年第1四半期末現在の連結財務諸表の純資産に与える影響額は約▲1397億に上るという。損害を被った株主としては、泣き寝入りすることがないよう、適切な法律事務所を選び、権利行使をしていくべきである。
著者:藤井雅樹、山内大将、百田博太郎(弁護士)
提供:牛島法律事務所
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