茨城県神栖市の廃プラ油化設備(三菱ケミカル提供)
This post is also available in:
3カ月あまりに及ぶ中東情勢の緊迫化が日本経済を揺さぶっている。さまざまな化学品の原料となるナフサに供給不安が生じ、サプライチェーン(供給網)の脆(もろ)さを露呈した。だが、この技術の実用化が進めば、資源を海外に頼る弱みを軽減できるかもしれない。廃プラスチックの「ケミカルリサイクル」である。
ケミカルリサイクルは物質を化学的に分子レベルに分解して再利用する技術だ。ナフサを原料とするプラスチックの場合では油にまで分解し、その油を原料として再利用する。
超臨界水が廃プラにかかる熱を均一に
三菱ケミカルとENEOSは昨年7月、三菱ケミカル茨城事業所(同県神栖市)に廃プラのケミカルリサイクル施設を完成。試運転を経て、3月から商業運転に移行した。
両社が廃プラの分解に用いるのは「超臨界水」と呼ばれる高温・高圧の水だ。英企業「ムラ・テクノロジー」から技術を導入した。
廃プラの分解には熱を利用するが、設備の周りから熱を加えると、設備内側が高温になり、廃プラが炭化してしまうという難点があった。超臨界水を用いることで廃プラにかかる熱は均一となり「油の収率が高くなる」(三菱ケミカルの飛鳥一雄CN・CE事業グループ長)のだという。
廃プラの処理量は年間2万トンで、得られる油は主に原油に近い生成油と、ナフサ留分の2種類。生成油はENEOSがガソリンなどの石油製品に精製し、ナフサ留分は三菱ケミカルが基礎化学品の原料として使う。
出光興産も千葉事業所(千葉県市原市)の隣接地に廃プラのケミカルリサイクル設備を設けた。年間2万トンの廃プラを処理でき、4月から商業運転を開始した。
廃プラの処理に用いるのは、原油を精製するために製油所で使った触媒だ。産業廃棄物になるはずの触媒だが、廃プラの処理に用いると、ナフサ留分を多くとれる油に戻すことができるのだという。
筆者:高橋俊一(産経新聞論説副委員長)
◇
2026年6月14日付産経新聞【日曜経済講座】より
This post is also available in:

