災害への備えを観光資源としたり、復興の歴史と観光を組み合わせたりする「防災ツーリズム」が注目されている。観光客の地方誘客が課題となる中、防災や復興の学びと、地域経済振興の両立にも期待が集まる。
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高知県黒潮町の沿岸部に設置された津波避難タワー。防災ツーリズムの見学先としても活用されている=2026年年3月4日(秋山紀浩撮影)

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列島各地で災害が頻発する中、災害への備えそのものを観光資源としたり、復興の歴史と観光を組み合わせたりする「防災ツーリズム」が注目されている。同様の取り組みは東日本大震災を機に本格化したとされ、能登半島地震からの復興途上にある石川県内でも広がりを見せている。観光客の地方誘客が課題となる中、防災や復興の学びと、地域経済振興の両立にも期待が集まる。

恵みと災いの二面性

南海トラフ巨大地震で国内最大の約34メートルの津波が予想され、「日本一危険な町」と呼ばれた高知県黒潮町。被害想定の公表後、町は町内に津波避難タワーを6基整備し、役場も高台に移した。計画的な避難訓練や独自の防災教育などに注力し、ハード・ソフトの両面から対策を強化してきた。

津波避難タワーの屋内空間に備蓄された防災用具。いすやマット、簡易トイレなどさまざまなものが備えられている=3月4日、高知県黒潮町(秋山紀浩撮影)

こうした先進的な取り組みが注目を集め、全国の自治体が視察に訪れるように。国内最大級の高さを誇る避難タワーの見学や、夜間の避難訓練などで対策を学ぶ有料プログラムなども展開。町によると、1500人以上を受け入れた年もあり、いつしか「日本一の防災の町」とも呼ばれるようにもなった。

防災缶詰を使った創作料理を味わい、備えの大切さを考えるプログラムも好評だ。缶詰を生産するのは地元の黒潮町缶詰製作所。非常食を自分たちの町でつくり、地元の雇用対策につなげる狙いがある。

カツオや砂糖、塩などの地元産品を生かした独自商品の開発を続け、ラインアップは24種類まで増えた。代表取締役の友永公生(きみお)さんは「日常生活でも食べてもらい、減った分を買い足して備蓄してもらえたら」と語る。

缶詰のラインナップを説明する黒潮町缶詰製作所の友永公生さん=3月5日、高知県黒潮町

「自然には恵みと災いの二面性があることを理解してほしい」と話すのは黒潮町情報防災課の村越淳課長。ユニークな取り組みの裏側には、日本一の防災活動を進めているとの自負がある。村越氏は「防災を学びながら、地元食材や自然体験など町の魅力にも触れてほしい」と呼びかけた。

地元住民の雇用機会を創出

関西で防災ツーリズムを推進しているのが、阪神大震災から復興を遂げた兵庫県だ。県内には、防災学習施設「人と防災未来センター」(神戸市)や、壊れた高速道路の橋脚を保存する「震災資料保管庫」(神戸市)などの防災資源が点在。周辺には観光施設も豊富にあることから、県は防災と観光を組み合わせた独自の体験を提唱する。

令和6年の能登半島地震で被災した石川県内でも、被災地を巡りながらレジリエンス(回復力)や防災意識を高める復興ツーリズムが盛んだ。地元住民に語り部としての雇用機会を提供する目的もある。

福島県は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興と被災地の現状を実際に見てもらう「ホープツーリズム」の推進を掲げる。出発地や日数に合わせたモデルコースがある。このほか東北では震災遺構を活用した取り組みも活発だ。

筆者:秋山紀浩(産経新聞)

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