石破茂元首相は、戦後のホルムズ海峡の安全保障に関し、日本が主導的な役割を果たすべきだと訴えるとともに、集団的自衛権の行使範囲を明確にする新たな法整備の必要性を指摘した。
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インタビューに応じる石破茂元首相(©Japan Forward/吉田賢司)

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石破茂前首相がJAPAN Forwardとのインタビューに応じ、イラン停戦が完全に成立した後、ホルムズ海峡の安全確保に向けた国連の有志連合の形成に日本が「中心的役割」を果たすべきだとの認識を示した。

一方、米国がイラン攻撃に踏み切る前に「米国にとって差し迫った危険がなんだったのか」を十分に確認しない限り、日本政府は米国を全面的に支持することはできないと指摘した。

また、防衛相を務めた経験を持つ同氏は、集団的自衛権をより効果的に行使するため、憲法の下で何が許容され、何が許されないのかを明確にする安全保障基本法が必要だと主張した。

インタビューの要旨は次の通り。

――「米国による対イラン攻撃が合法であったか、日本は明確にすべきだ」との指摘について、その真意は

2003年のイラク戦争に先立ち、結果的には間違っていたが、当時の米国務長官コリン・パウエル氏は国連の場で、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの理由を挙げ、米国の軍事行動を正当化した。

パウエル米元国務長官(ゲッティ=共同)

今回、トランプ政権は対イラン攻撃の根拠について、ソーシャルメディア上で説明するという手法を取っている。

もちろん、差し迫った危険が存在する場合には、先制的自衛は国際法上認められている。しかし、日本が米国を全面的に支持するのであれば、米国がイランからどのような差し迫った脅威に直面していると認識していたのかを理解する必要がある。

――北大西洋条約機構(NATO)が戦後のホルムズ海峡の安全確保に向けた計画を策定中との報道がある。日本は参加すべきか

完全な停戦が成立すれば、国連が適切な決議を採択すべきである。日本はここで中心的役割を担い、同決議に基づき、有志連合の枠組みを通じてホルムズ海峡における安全な航行の確保に寄与すべきだと考える。

――日本が取り得る他の貢献策はあるか

停戦後の対応としては、防衛省設置法で調査・研究の目的でホルムズ海峡に出すこともできる。また、日本船舶の保護の観点から、放棄機雷の無力化といった措置を講じることも選択肢である。

これが現行の海上警備法の解釈の下で困難であるならば、日本はイラク戦争やアフガニスタン戦争の際に採用したような特別措置法の制定に慣れている。そんなに難しくない。

米イランの停戦合意後にオマーン沖のホルムズ海峡を通過する船=4月8日(ゲッティ=共同)

――最近、韓国のシンクタンクが開催した年次会議「アサン・プレナム」で、台湾海峡と朝鮮半島における同時有事のリスクに言及した理由は

中国が台湾に対する軍事行動に踏み切る場合、日本にとっての有事に発展させない形で実施する可能性が高い。すなわち、台湾には武力を行使しつつも、尖閣諸島や南西諸島への攻撃は控える公算が大きい。

仮にこれらの地域が攻撃されれば、日米安全保障条約は確実に発動される。その結果、同盟は台湾戦域で中国と直接対峙する全面的関与へと至ることになる。中国にとっては戦略的メリットがあまりないと思う。そのような事態は避けるとみられる。したがって、台湾有事が直ちに日本有事に直結するとは限らない。

しかし、朝鮮半島有事は性格を異にする。在日米軍は在日米軍は朝鮮国連軍として機能するので、そこにおいては事前協議を必要としない。在日米軍は朝鮮国連軍として朝鮮半島に出入りすることができる。だから、朝鮮半島有事はそく日本有事になるというわけだ。

この意味で、朝鮮半島有事はほぼ確実に日本有事の性格を帯びる。仮に台湾海峡を含む複数の有事が同時に発生すれば、事態は一層深刻化する。だからこそ、日米韓は事前に共通認識を持っていないと大混乱になる。

――台湾有事が日本有事となるのは、どのような場合か

まず、中国が台湾本土に攻撃を仕掛けるというのは、台湾が独立宣言をするとか、米国が台湾を承認するとか、米国が台湾との間に明確にニュークリアシェアリングを行うとか、そういうことが起きないと中国が台湾に侵攻するメリットはなにもない。

こうした事態に至らない限り、中国による全面的な侵攻の戦略的意義は限定的とみられる。

それでも、中国が台湾に対して軍事侵攻に踏み切り、米国が集団的自衛権を発動して同盟国に支援を要請した場合、日本もまた同様にその権利を行使する可能性が高い。

韓国のシンクタンクが主催するシンポジウムで講演する石破茂前首相=4月8日、ソウル市内(時吉達也撮影)

――日本が集団的自衛権を全面的に行使するために、憲法改正は必要か

改正は必要ないと考える。日本が集団的自衛権を憲法上行使できないとという条文は存在していない。それは解釈の問題だ。

日本はこれまで、集団的自衛権の行使は憲法の下で許容される「必要最小限度」を超えるとの立場を取ってきた。しかし、これはあくまで解釈の問題にすぎない。こうした背景から、2015年には平和安全法制が整備され、国家存立が脅かされる例外的な場合に限り、限定的な集団的自衛権の行使が可能となった。

優先すべきは、国家安全保障の基本法を制定することである。同法には、集団的自衛権行使の要件や限界、武器輸出をめぐる基準、さらには非核三原則の解釈などを明記すべきである。

――米国の不確実性の高まりは、中堅国間の連携強化を一層重要にしているか

スペインやイタリア、カナダといった国々が米国に非常に意見をだしやすいのは、北大西洋条約機構(NATO)の集団安全保障体制に組み込まれているためである。集団防衛は権利ではなく義務である。カナダのカーニー首相のダボス会議での演説にみられる発想も、やはりどうしても欧州中心の考え方だ。

インド太平洋では、米国はANZUS、日本、韓国、フィリピンとの同盟・安全保障関係、さらに台湾関係法に基づく台湾との関係など、多層的なネットワークを維持している。これらをより有機的に結び付けること自体に大きな困難があるとは思わない。

ただし、日本だけが集団的自衛権の行使に踏み出せない、あるいは踏み出さない状況が続けば、そのような枠組みは到底成り立たないであろう。

聞き手:吉田賢司(JAPAN Forward記者)

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