日米首脳会談で握手を交わす高市早苗首相(左)とトランプ米大統領=3月19日、ワシントンのホワイトハウス(AP=共同)
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イラン情勢とホルムズ海峡を巡る緊張は、日米同盟に不確実性をもたらしている。トランプ米大統領と高市早苗首相が3月19日の首脳会談で、ミサイル共同生産や抑止力強化、経済安全保障分野での連携強化といった幅広い議題を打ち出してからわずか数週間後、トランプ氏はイラン関連の作戦で日本が「支援していない」と公に不満を示した。
これにより、日米関係には不快ながらも重要性を増す疑問が浮上している。すなわち、今回の危機において米国は日本に何を求めているのか、そして日本は憲法や法制度、政治的制約の下で現実的に何ができるのか、という点である。
同盟の抑止力と方向性
トランプ前政権の国家安全保障会議(NSC)首席補佐官を務めたアレクサンダー・グレイ氏はJAPAN Forwardのインタビューで、、イラン情勢による混乱が大局的な戦略認識を曇らせるべきではないと指摘した。
グレイ氏は「両国が直面する最大の課題は中国とその悪質な活動だ」と強調。「日本は21世紀における最も重要な同盟国であり、インド太平洋における最有力の軍事・経済大国として共同で対応している」と述べた。さらに、対中対応という共通課題こそが関係の中核であるとし、高市政権は「米国にとって統治パートナーとして特異な位置にある」と評価した。
こうした見方は、トランプ氏と高市首相による首脳会談の公式見解とも概ね一致する。ホワイトハウスによれば、両首脳はミサイル分野での協力拡大に合意し、2025年の米地上発射型ミサイルシステム「タイフォン」の日本本土配備後の連携継続を確認。さらに、日本の空対空ミサイル「AMRAAM」の増産への関与や、迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の国内生産を迅速に4倍に拡大することを検討することで一致した。
一方、日本の外務省も、抑止力と対処能力の強化に向け、ミサイルの共同開発・共同生産を含む「幅広い安全保障協力」を推進することで合意したと発表している。
問われる国内改革の実効性
グレイ氏は、同盟が文言上強固に見えるかどうかではなく、日本が実際に戦略的パートナーとしての能力を高め続けられるかが本質的な問題だと指摘した。特に国内改革こそが最大の試金石になると繰り返し強調した。

同氏は「高市政権にとって最大の課題は、日本を対中戦略における米国の主要な軍事・戦略パートナーとして一層強化し続けることだ」と述べ、より伝統的な情報機関の整備や防衛装備品の輸出促進などを具体例に挙げた。
さらに、「言葉を選ばずに言えば、重要なのは純粋な軍事力と、それを抑止のために活用する能力の向上だ」と指摘。その点においてこそ、日本が最も大きな価値を発揮できると説明した。
投資の履行が焦点
こうした指摘は注目に値する。3月の首脳会談では、より幅広い議題も打ち出されていたためだ。日米両政府はいずれも、重要鉱物や深海資源、人工知能(AI)、エネルギー安全保障、戦略的投資などを含む包括的な協議が行われたと説明。日米戦略投資イニシアチブの第2弾案件や、小型モジュール炉(SMR)開発への支援も議題に上った。
グレイ氏は、重要鉱物や対米投資の重要性自体は認めつつも、当面の政治課題はトランプ政権下で投資パッケージを着実に履行することにあるとの認識を示した。
同氏は「トランプ氏にとって極めて重要であり、米国内の支持層にとっても極めて重要だ」と指摘。その上で、日本がこうした資金投資に積極的な「真剣で信頼できる友人」と見なされることが、トランプ政権に国内的な支持をもたらし、同盟を正しい方向に維持する後押しになると強調した。
仲介よりインド太平洋重視
イラン対応を巡り、グレイ氏は日本に大きな外交的役割を担わせることには慎重な見方を示した。3月の首脳会談に関する日本側の説明では、高市首相がイランの核兵器保有を断じて認めない姿勢を示し、ホルムズ海峡の封鎖や航行への脅威を含むイランの行動を非難したとされる。また、早期の緊張緩和とエネルギー安定の重要性も強調され、両首脳は中東の平和と安定について緊密に意思疎通を維持することで一致した。
しかしグレイ氏は、日本がより有効に役割を果たせるのは別の分野だと指摘する。「現時点で日本がどこに関与できるのかは明確ではない」と述べ、米国にはすでに複数の仲介ルートが存在するとした。その上で、日本は「対中およびインド太平洋における抑止力と戦力増幅の能力を一層強化すべきだ」と強調した。
こうした考え方は、日本が現行の制約下で直ちに取り得る対応にも反映されている。グレイ氏はペルシャ湾での大規模な軍事行動よりも、日本周辺で既存の手段を強化することの重要性を指摘。「海上保安庁や警察庁など、日本が保有するあらゆる国家的手段を活用し、中国のグレーゾーン活動への対抗を強化すべきだ」と述べた。「グレーゾーンはハイブリッド戦の領域であり、事態が発生する可能性が高い分野だ」としている。
トランプ氏が見る同盟の評価軸
グレイ氏は、トランプ氏の発言が一見ちぐはぐに映る理由についても見解を示した。トランプ氏が日本の対応に不満を公に表明することがあっても、それが直ちに同盟関係の失敗を意味するわけではないという。
同氏によれば、真の評価基準は日本が中期的にどれだけ進展しているかにある。防衛費の増額や装備調達の前進、防衛装備品輸出規制の緩和、さらにはより有能なパートナーとなるための制度改革などが指標となる。「重要なのは予算であり、政策文書であり、白書であり、現場で実際にどれだけ前進しているかだ」と述べた。その基準で見れば、日本は「具体的かつ着実な進展」を遂げていると評価した。
今後について、同氏は日米同盟に強気の見方を示す。一方で最大の懸念として挙げたのはイラン情勢ではなく、むしろ慢心だ。投資合意の締結だけで十分と見なすことへの警戒を示し、日本政府や企業が約束した投資を実行できなければ、政治的な代償は小さくないと指摘。その上で、こうした点が克服されれば、日米関係は「非常に成功した数年間」に向かうとの見通しを示した。
筆者:ダニエル・マニング(JAPAN Forward記者)
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