小泉進次郎防衛相は、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で演説し、高市早苗政権の姿勢を「新型軍国主義」だとする中国の批判に対し、「虚偽の主張」だと強く反論した。
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アジア安全保障会議で演説する小泉防衛相=シンガポール(AP=共同)

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小泉進次郎防衛相は5月31日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で演説した。防衛力の抜本強化に取り組む高市早苗政権の姿勢を「新型軍国主義」だとする中国の批判に対し、「虚偽の主張」だと強く反論。先の大戦後一貫して国際法を順守する日本の立場を強調し、対話の必要性を訴えた。演説の全文は以下の通り。

本日、シャングリラ・ダイアログという、インド太平洋の未来を考える極めて重要な場でお話しできることを、大変光栄に思います。主催者であるIISS、そして開催国シンガポールに、心から敬意と感謝を申し上げます。

また、マレーシアのカレド国防大臣、オランダのディラン副首相兼国防大臣とご一緒できることを嬉しく思います。

皆さま。

インド太平洋は、世界の成長センターです。若い力があり、技術があり、活力があります。そして何より、自由で開かれた海によって結ばれています。

この地域の平和と安定は、この地域だけの問題ではありません。世界の平和と繁栄そのものに直結しています。

本日、太平洋、インド洋、そして大西洋をつなぐ国々の閣僚がここに集っている。この事実そのものが、三つの海が相互につながっていることを示すものです。オランダのこの地域での最近のプレゼンスを歓迎します。

しかし同時に、インド太平洋は厳しい現実にも直面しています。力や威圧による一方的な現状変更の試み。経済的威圧。ルールへの挑戦。サイバー、宇宙、情報を含む複合的な競争、あらゆるものの武器化。平時と有事の境目は、ますます曖昧になっています。

SNSやAIが悪用され、偽情報や情報操作によって人々の判断そのものが揺さぶられる時代にもなりました。いま私たちが守るべきものは何か。それは、各国が自らの意思で進路を選び取る自由です。

現在、ホルムズ海峡が自由でも開かれてもいない状況に我々は直面しています。自由でも開かれてもいない海峡、自由でも開かれてもいないシーレーン、自由でも開かれてもいない秩序、この状況が誰の利益にもならないことは明らかではないでしょうか。自由で開かれた秩序の重要性、これはどれだけ強調しても強調しすぎることはありません。

皆さま。

各国が、自ら選ぶ力を持つこと。その土台の上に、自由で開かれた地域を築き、守り、強くしていくこと。

日本は、この目標の実現に向けて、皆さまと共に行動します。その決意が、高市政権が新たに打ち出した進化版FOIPです。

どの国も、威圧や強制によって進路を決められてはならない。どの国も、自らの意思で未来を選べなければならない。そして、この地域は、ルールと原則を尊重するすべての国に開かれていなければならない。

これが、日本の考えるインド太平洋の姿です。

この姿は、願うだけでは実現しません。行動が必要です。継続が必要です。

特に、防衛当局の役割は重要です。各国の努力を、孤立した努力に終わらせないこと。部隊運用、共同訓練、情報共有、装備・技術協力、防衛産業協力、制度整備。これらをつなぎ、実効的な抑止力と対処力に変えていかなければなりません。
そのために必要なものは三つあります。信頼、透明性、そして対話です。

信頼。国際法が守られること。主権が尊重されること。力や威圧による一方的な現状変更を認めないこと。この共通の意思なくして、地域の秩序は成り立ちません。

透明性。不透明な軍備増強や意図の見えない行動は、不信と誤算を招きます。透明性は、緊張を抑え、危機を防ぐ土台です。
そして対話。国家間には立場の違いがある。意見の違いもある。しかし、だからこそ対話が必要です。違いがあるから対話する。緊張があるから対話を続ける。

日本は、すべての国との対話に常にオープンです。ここにご一緒しているカレド国防大臣に主催いただいた昨年のADMMプラスでは、中国のカウンターパートと率直かつ有意義な会談を行うことができました。今回お会いする機会がなかったことを、私は率直に残念に思います。しかし、対話の扉は常に開かれています。地域と世界の平和と安定のため、私は中国を含む関係国と意思疎通を重ねていきます。

アジア安全保障会議で演説する小泉防衛相=シンガポール(ロイター=共同)

皆さま。

日本は、具体的に行動します。

第一に、日本は高い透明性の下で、防衛力を着実に整備し、不断にアップデートしていきます。

AI、無人機、サイバー、宇宙。新しい戦い方が世界中に広がっています。どの国も当たり前のこととして、その対応のために自国の防衛力のアップデートに取り組んでいます。日本もまた、この新しい動きに素早く、着実に対応していきます。

自国を守り、自由で開かれた地域の平和と安定に貢献するためです。しかも日本はこのアップデートを高い透明性の下で進めます。何のために整備するのか。どのような考え方で進めるのか。日本は、国際社会に対して明確に説明しながら進めていきます。

防衛力の抜本的強化、防衛生産・技術基盤の強化、そして年末を見据えた戦略三文書の見直しは、その一環です。日本は、現実から目を背けません。必要な備えを、責任ある形で進めます。

皆さまは、日本を「新型軍国主義」と主張しているのを耳にしたことがあるでしょう。しかし、これは事実ではありません。

考えてみてください。核兵器と戦略爆撃機を大量に保有する国が、そのいずれも持たない日本を、「新型軍国主義」と呼んでいるとしたら、おかしいと思いませんか?

まず、日本は、戦後一貫して国連憲章を含む国際法を遵守し、自由で開かれた国際秩序の維持と強化に真摯に取り組んできました。平和国家としての日本の歩みは、地域と国際社会によって評価されています。これがただ一つの事実です。この事実が虚偽の主張によって揺らぐことはありません。理由は単純です。それが事実だからです。

その上で、申し上げたいことがあります。国家間に認識に違いや摩擦は生ずるものです。その時に必要なのは、相手がいないところで事実に基づかない主張を繰り返すことではなく、直接、率直に話し合うことです。実際に、日本の対話の窓は、常に開かれています。

第二に、日本は皆さまとの連携を一段と強化します。

日米同盟の抑止力・対処力の強化。豪州、フィリピン、英国とのRAAを活用した訓練の高度化。QUADにおける海洋状況把握や先端技術協力。ASEAN各国との防衛協力。PIPIRを含む産業基盤の強靱化、そしてAUKUS。こうした取り組みを、点ではなく線にし、線ではなく面にしていきます。

第三に、日本は地域全体の装備協力において、新たな役割を担う決意です。

日本は今年4月、装備移転に関する国内制度を抜本的に見直しました。2023年に開始したOSAも、着実に実績を積み重ねています。これらはすべて、地域の抑止力と対処力を現実に高めるためのものです。いずれも地域の各国から高く評価されています。

いま重要なのは、地域全体として必要な装備と能力を切れ目なく確保していくことです。危機のときに、必要なものが足りない。補給が続かない。そのような状況は、地域全体として避けなければなりません。

だからこそ日本は、装備品協力、防衛産業協力、維持整備協力を、これまで以上に積極的に進めます。各国が必要な能力を持ち、必要な時に使えるようにする。

既に、たくさんの協力が進んでいます。オーストラリアとのフリゲート艦協力、フィリピンへのレーダーや巡視船の供与、護衛艦協力の進展、ニュージーランドにおける日本艦艇への関心、そしてインドネシアとの新たな枠組みです。

これらは、特定の国を念頭に置いた排他的な取り組みではありません。各国が自らの意思で選択し、自らの国を守り、地域の安定に貢献できるようにするための取り組みです。日本は、そのための頼りになるパートナーでありたい。そして、地域の努力を結びつける結節点でありたいと考えています。

皆さま。

分断は、抑止を弱めます。結束は、抑止を強くします。

米国と欧州、そして同盟国・同志国の間に隙間が生まれれば、それを好機と見る勢力が必ず現れます。そのような状況を許してはなりません。私たちは連携を絶やしてはならない。むしろ、いまこそ一層強めなければなりません。

私たちが目指すのは、危機に耐えるだけの地域ではありません。威圧に屈しない地域です。虚偽に惑わされない地域です。圧力に左右されない地域です。

自由で開かれたインド太平洋は、誰かが与えてくれるものではありません。私たち自身が築くものです。私たち自身が守るものです。そして、次の世代に引き継ぐものです。

日本は、皆さまと共に歩みます。皆さまと共に行動します。

ご清聴ありがとうございました。

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