最高値を更新した日経平均株価の終値を示すモニター=4月16日、東京都港区の外為どっとコム
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日本経済は、イラン危機に対し表面上は安定しているものの、内実はなお脆弱な状態にある。2月下旬以降、イランを巡る戦火とホルムズ海峡周辺の混乱により、原油市場は再び世界経済の焦点に浮上した。世界の原油およびLNG輸送の約2割が同海峡を通過しており、恒久的な停戦への不透明感を背景に、北海ブレント原油は1バレル=100ドル近辺で推移している。
日本にとって経済的影響は直ちに及ぶ。2025年10~12月期の実質GDPは前期比0.3%増、通年では1.2%増となり、2026年2月の消費者物価指数は前年比1.3%上昇、失業率は2.6%であった。
しかし、2月の家計消費は実質で1.8%減少し、3月の消費者信頼感指数も33.3に低下した。エネルギー輸入に新たな打撃が加われば、耐性の余地は乏しいことが浮き彫りとなっている。
もっとも、見通しは悲観論が示すほど暗いのか。経済アナリストの馬渕磨理子氏と、武者リサーチ代表で投資ストラテジストの武者陵司氏は、いずれも異なる見方を示す。馬渕氏は市場のシグナルに着目し、過度な悲観を戒める。一方、武者氏は、投資家が全面的な原油ショックを織り込んでいないのは合理的だと指摘する。
混乱の先にあるもの
馬渕麻里子氏は4月15日、インターネット番組「ニッポンジャーナル」で、この問題の核心を端的な問いに集約した。「これほど多くの情報と不安が飛び交う中で、何を見て、何を信じるべきか」というものである。

同氏は、目先の動揺ではなくマクロの視点から捉えるべきだと説く。「株式市場は上昇している」と指摘し、イラン情勢が依然として大きな地政学リスクであるにもかかわらず、日経平均株価は5万7000円台まで回復し、5万8000円に迫る動きを見せているとした。
また、原油価格も1バレル=100ドルを下回る水準に戻っており、4月3日ごろからは、原油高がそのまま日本株安につながるという従来の相関関係が弱まり始めていると指摘。「これは軽視すべきではない」との見方を示した。
株高も消費者は慎重姿勢
日本で際立つのは、比較的落ち着いた市場と、現場で広がる一段と厳しい空気との乖離だ。日本銀行は今月、地域経済について「一部に弱さが残るものの、緩やかに回復している」との認識を示した。
もっとも、短期的な見通しは急速に悪化している。内閣府の景気動向調査である景気ウォッチャー調査の先行き指数は、3月に前月比11.3ポイント低下の38.7となり、コロナ禍以来の低水準を記録した。馬渕氏はこれを「かなり意味のある悪化」と位置付け、外食など裁量的支出を中心に消費者が一段と支出を抑制する可能性を示唆した。
ただし、こうした弱い心理指標が全てを物語っているわけではないと同氏はみる。「SOX指数と日経平均株価はほぼ連動して推移している」と述べ、半導体関連株が相場回復の主因であると指摘。「半導体をはじめとするハイテク株は成長期待に極めて敏感だ。投資家がイラン危機が長期的な原油主導の景気後退を招くと本気で考えているなら、こうした銘柄を買うはずがない」と説明する。むしろ市場は、目先の不安を織り込みつつも、既に安定化を見据え始めているとの見方を示した。
ホルムズ・ショックの限界
より市場戦略の観点から、武者氏はこの見方を一層推し進める。4月16日付の武者リサーチ「ストラテジーブレティン」で、メディアの悲観論と市場の動きとの乖離は看過できないほど大きいと指摘した。
同氏によれば、2月28日の対イラン空爆後、米主要株価指数S&P500は4月13日までに下げをすべて取り戻し、過去最高値まで1%以内の水準に回復した。また、足元の原油価格は1バレル=90~110ドルと高止まりしている一方、6か月先物は70ドル台に落ち着いている点にも言及。「市場はホルムズ海峡の長期封鎖や第三次石油ショックなどというセンセーションは全く想定していない」と結論付けた。
では、ホルムズ海峡は日本にとってどの程度の脅威なのか。同氏はその重要性を認めつつも、世界経済は1970年代当時ほど原油に依存していないと指摘。日本のエネルギー構成に占める石油の比率は、第1次石油危機当時の1973年の76%から、2024年には35%へと低下した。
さらに、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)のパイプラインなど、迂回ルートも整備されていると強調する。日本が安全であるとするものではないが、現在のホルムズ危機が、多くの人が直感的に想定するような世界的崩壊を引き起こす可能性は低いとの見方を示した。
破局的とまでは言えない状況
武者氏は、ホルムズ海峡の長期閉鎖はイラン自身の利益にも反すると指摘する。同海峡は中国との貿易をはじめ、イランにとっても重要な生命線であるためだ。このため、ホルムズを交渉材料として利用しようとする動きについて、「窮鼠猫をかむ如くの悪手である」との見方を示す。
日本は、輸入エネルギー価格や輸送コストの再上昇に対して依然として脆弱であり、特に消費が既に圧迫されている状況では影響が大きい。ただ、市場はもはやこれを全面的な原油ショックとみなして取引しているわけではなく、その影響には一定の限界があるとの見方を織り込み始めている。馬渕氏が「金融市場を見れば未来の一端が見える」と述べる通りである。
現時点での見通しは、緊張と不確実性を伴うものの、なお破局的とまでは言えない状況にある。
筆者:ダニエル・マニング(JAPAN Forward記者)
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