日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」。東日本大震災後、日米の協力と友情を基盤に誕生した「TOMODACHI イニシアチブ」の同窓生が能登半島沖地震の被災地を視察、そこで感じた思いを綴ったエッセイを紹介します。
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日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」の第46回は、東日本大震災をきっかけに誕生した日米の若者リーダー育成プログラム「TOMODACHIイニシアチブ」の同窓生、広瀬光仁さんのエッセイを紹介する。当時石巻高校3年生だった広瀬さんらが3月に能登半島の被災地を視察し、現地のリーダーらとの交流を通じて感じた「能登と東北 祝祭性は復活できるか」をお届けする。

広瀬光仁さん(本人提供)

能登と東北 祝祭性は復活できるか

私は、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で生まれ育った。石巻は復興の道を歩んでいるが、人口減少と少子化により、将来的な消滅の危機もはらんでいる。能登もまた同様の課題に直面しており、震災がそれに拍車をかけている。今回、私が能登のプロジェクトに参加したのは、共通の課題を抱える二つの地域を比較し、「復興のあり方には地域性があるのではないか」という疑問を確かめるためだった。

取り壊される予定の和倉温泉「加賀屋」(広瀬さん提供)

訪れた七尾市では、今もアスファルトに亀裂が走り、剥がれた歩道タイルが積み重なっていた。震災前は年中どこかで祭りが行われ、活気ある商業拠点として多くの人々の営みが続いてきた場所だ。祭りを通じてその平穏な暮らしが続くよう祈られてきたが、地震は祭りを奪い、名所である和倉温泉の温泉街も休業に追い込まれた。

そのなかで、まちづくりを進める「いしかわ地域づくり協会」コーディネーター、森山奈美さんの言葉が深く心に残った。「能登は震災を経て、かつてのような循環型社会の側面が強くなる。これからの持続可能性を考える際のモデルケースになる町だ」という言葉だ。

能登は震災前から過疎化という大きな課題を抱えていた。「人口が減り、商売が成り立ちにくいからこそ、循環型経済への移行が必要だ」と森山さんは説く。単なる復旧にとどまらず、復興のノウハウ自体を資源とする「環境型社会の実践の場」を目指すという視点だ。

能登の復興において、私は「祝祭性」がキーワードになると感じた。祝祭性とは単にイベントとしての祭りを指すのではない。その場の空気感や一体感、生活に息づくリズムを包含するものだ。「和倉温泉お祭り会館」では、地域の文化や歴史が人々の生活と密接に結びついていることを実感した。

私の故郷、石巻もまた祭りが多く、祝祭性が息づく街だった。しかし、復興の過程でそれらが置き去りにされてしまったように感じる。中心部の立町商店街は人通りが絶え、シャッター街となった。一方で、かつて田んぼが広がっていた蛇田町は都市開発が進み、ショッピングモールを中心とした均質なニュータウンへと姿を変えた。

シャッター街になった石巻市立町の商店街(広瀬さん提供)

私の知る限り、震災後に二つの祭りが姿を消し、継続しているものも規模が大幅に縮小された。「石巻川開き祭り」では、かつて各商店が自慢の浄瑠璃人形を飾って競い合ったと聞くが、今ではその習慣も失われてしまった。

インフラや建物といったハード面の整備が優先され、目に見えないソフト面、すなわち心の復興が後回しにされてしまったのではないか。その結果、新しい街への帰属意識が薄れ、地元の若者が戻る機会を失う一因にもなっている。

もちろん、能登においてもインフラの復旧は急務だ。しかし、同時に生活文化に根ざした「祝祭性」というソフト面の復興の重要性が、ここでは強く認識されているように見受けられた。

東日本大震災当時、私は3歳だった。避難先の体育館から一度自宅に戻り、貴重品を取りに行った母親を玄関先で待っていたことを覚えている。サイレンが鳴り響く中、恐怖で泣きじゃくる私の手を、近所の人がそっと握ってくれた。あの時、絶望の中で感じた人の温もりを胸に、18歳になった私がこうして能登の地を視察できたことに深く感謝したい。

「ようこそ七尾へ」という看板が出迎えてくれた(広瀬さん提供)

人は、変わらず残り続けるものに強く心を動かされる。継続させることは容易ではないが、だからこそ守り抜く価値があるのだと今回の視察で学んだ。

七尾に到着して最初に目にしたのは、「ようこそ 七尾へ」と書かれた駅の看板だった。震災前からそこにあるというこの看板のように、能登の歴史と復興の歩みを、石巻と能登という二つの視点から世界に伝えていきたい。

筆者:広瀬光仁(ひろせ・みつひと)
宮城県石巻市在住。
石巻高校3年(当時)
2024年にTOMODACHIサマー・ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム2.0に参加、カリフォルニア、バークレーに3週間滞在
「能登に心を動かされ、もっとこの歴史が長く輝かしいものになってほしい。寄稿はそれを可能にするチャンスだった」という言葉をJAPAN Forwardに寄せた。

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