日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」。東日本大震災後、日米の協力と友情を基盤に誕生した「TOMODACHI イニシアチブ」の同窓生が能登半島沖地震の被災地を視察、そこで感じた思いを綴ったエッセイを紹介します。
Ignite 44 Keitakosashi Naka webp

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日本の若者の声を世界に発信する「Ignite」の第44回は、東日本大震災をきっかけに誕生した日米の若者のリーダーを育成する日米の官民パートナーシップ「TOMODACHIイニシアチブ」の同窓生、立命館大学・国際関係学部1年(当時)、中圭太コサシさんが3月14と15の2日間、能登半島沖地震の被災地を視察し、復興に携わる現地のリーダーらと交流した中で感じた思いを綴ったエッセイ「求められる弱いリーダー」を紹介する。

中圭太コサシさん(本人提供))

求められる弱いリーダー

1日目の七尾市でのパネルディスカッションでは、能登半島の復興に携わる3人の女性をゲストに、震災後の経験からこれからの社会のあるべき姿について議論が交わされた。6年前に金沢から故郷能登に戻り、世界農業遺産にも認定されている輪島市の白米千枚田の魅力発信に力を入れてきた堂下真紀子さんは、震災後、損壊した棚田の修復作業に奔走した日々を振り返った。

ただ、一筋縄ではいかなかった。機械を使わず、歴史的に人の手によって維持されてきた白米千枚田の復興で、震災後観光地として復旧を急いだ県や市などの行政側と、従来通りの人の手による修復を主張する愛好会側との間で意見が分かれた。行政側の方針だった重機を使った修復が始まったものの、業者側の知識不足などから、最終的に愛好会と役割分担して修復することになったという。

トップダウンで進めていく手法だけでは、それぞれの現場の抱える事情に対応できず、当事者の納得を得ることができない。災害からの復興に必要とされがちな強いリーダーシップの欠点を意識させられるエピソードであった。

都市計画コンサルタントとして能登のまちづくりに携わる森山奈美さんは、人口減少が進む能登半島と日本全国の現状を踏まえて、「サスティナビリティは元あるものを大きくしていくものではなく、小さくても続いていくことだ」と語った。そして、能登のような地域に求められるリーダー像は、ビジネスの世界で求められる強いリーダーよりも、目的があって仲間がついてくる「弱いリーダー」が必要だと述べた。

堂下さんも森山さんも、トップダウンで物事を進めるリーダーシップよりも、地域の人々や当事者など周囲の人々を重視するリーダーシップの形を示した。私はそこに地域社会など属する小さなコミュニティに求められるこれからのリーダーの在り方を感じ取ることができた。

解体を待つ和倉温泉の旅館(中さん提供)

2日目、舞台は変わって和倉温泉。地域のボランティアガイドと共に震災の爪痕が残る温泉街の現状を視察した後、向かったのは和倉温泉お祭り会館。ここでは能登半島で伝統的に行われている数々の祭りについて展示されていた。その中にはユネスコ無形文化遺産にも指定されている「青柏祭」や、能登半島各地で行われ、キリコと呼ばれる巨大な灯籠を人々が担ぎ練り歩く「キリコ祭り」などがあった。展示室の壁に、それぞれの祭りの様子を収めた映像が流れる。そこにはこれまで地域を引っ張ってきた高齢の住民から、新しく祭りを引き継いだ若い世代が一体となり祭りを盛り上げていく姿が映っていた。

和倉温泉お祭り会館に展示されていたキリコ祭りに使用される神輿(中さん提供)

祭りは地域の文化やアイデンティティの中心であり、コミュニティを維持していくために必要なものだ。コミュニティはリーダーだけでなく、そこに属する一人一人の小さな力によって維持されていく、まさにそう感じさせられる展示であった。

災害からの復興の現場は、多様な立場や利害を持つ人々や団体をまとめるリーダーシップが不可欠である。コミュニティづくりに関心のある私としても、復興の道中にある能登のコミュニティの中でどのようなリーダーシップが取られているのかを学びたいと考えた。

コミュニティとは一人のリーダーがトップダウンで指示して動かしていくのではなく、それを構成する一人一人の小さな力が自然と一つの方向に向かうことにより成り立ち、維持されていくものだということを改めて体感した。コミュニティをまとめるためにはリーダーの力も必要だが、周囲や現場を無視したトップダウンでは前に進めることはできない。

私はまだリーダーシップの経験は浅いが、地域社会や大学など自分の属する小さなコミュニティの中から、周囲の知恵と能力を十分に引き出していくリーダーシップを実践していきたい。

筆者:中圭太コサシ(なか・けいたこさし)
大阪府出身
立命館大学国際関係学部2年生(現在)
2023年のTOMODACHIイニシアティブの Boeing Entrepreneurship Seminarに参加

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