穏やかなインフレは日本の財政運営にとって好ましいと考えている人は多い。政府は財政支出に対して積極的な姿勢を示してきたが、現実にはインフレが進行すれば政府の抱える債務の利払いが増えていくので財政運営に負荷がかかることになる。
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穏やかなインフレは日本の財政運営にとって好ましいものである。そう考えている人は多いだろう。確かに物価や賃金が上昇すれば税収の増加につながる。また、政府の債務にしても、物価上昇によって国内総生産(GDP)が増えていくので、債務の対GDP比も低下傾向になる。デフレの時代には政府債務を減らすことが困難であったことに比べて、穏やかなインフレ中では対GDP比での債務を抑えることは容易である。

こうした流れの中で、近年、政府は財政支出に対して積極的な姿勢を示してきた。インフレ税という表現を使う人もいる。物価が上がれば、国民の保有する貨幣の実質価値は目減りする。その分、結果的に政府の収入になるというのだ。ただ、この議論には怪しい面がある。

確かに物価が上がっても、長期金利(国債利回り)に変化がなければ、インフレは財政運営に有利に働く。しかし、現実にはインフレが進行すれば長期金利も上昇するので、政府の抱える債務の利払いが増えていくので財政運営に負荷がかかることになる。

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筆者:伊藤元重(東京大名誉教授)

2026年6月8日産経ニュース【刺さるコラム】より

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