北朝鮮による改良型地対地戦術弾道ミサイルの試射=4月19日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
This post is also available in:
北朝鮮の最新のミサイル試験は、米国を抑止する長距離兵器の開発を進める一方で、地域有事を念頭に短距離能力の高度化を図っている実態を示唆している。
4月19日、平壌は複数の短距離弾道ミサイルを日本海へ向けて発射した。北朝鮮メディアは、クラスター(収束)弾や破片地雷弾を搭載した改良型戦術弾道ミサイルの試験であったと伝えている。
今回の発射に先立ち、新型の5000トン級駆逐艦「崔賢(チェヒョン)」から戦略巡航ミサイルや対艦ミサイルの試射が行われたと報じられており、保有兵器の規模と実戦運用能力の双方を高める狙いがうかがえる。
今回の発射は同国にとって今月4回目、今年7回目のミサイル試験となった。核保有国を自任する同国の動きは、地域の安全保障環境に一層の緊張をもたらしている。
地域攻撃能力の脅威
地域の安全保障当局にとって、北朝鮮の短距離攻撃能力こそが、より差し迫った懸念材料となり得る。
米シンクタンク・ハドソン研究所の長尾賢研究員は、射程1000キロ未満のミサイル試験が増加している点について、「極超音速化によって敵の防空網を突破し、、有事に的に打撃を与えるなどの技術的改良のみならず、実戦での運用方法も研究している可能性がある」と指摘する。
具体的には、発射を1分間隔に短くして連続発射、または複数の場所から発射して同じ目標を攻撃するなど、運用面の研究をしている。
また、今回報じられたクラスター弾の使用は、脅威の複雑性を一段と高める要素となる。これらの兵器は多数の子弾を広範囲に散布する構造で、地上部隊への攻撃に有効とされる一方、民間人への被害リスクが高いとして国際的に論争の的となっている。
クラスター弾の使用を禁止する国際条約には120カ国以上が署名しているが、北朝鮮、イラン、イスラエル、米国はいずれも参加していない。

今回試験されたクラスター弾搭載ミサイルの射程は約136キロとみられ、ソウルや複数の在韓米軍基地を射程に収める一方、日本には届かない水準にとどまる。日本を射程に収めるには、おおむね1000~1300キロ程度の射程が必要になるという。
また、今回の発射では潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)能力の可能性も注視された。これが確認されれば、生存性の高い第二撃能力の確保を通じ抑止力の強化を図る動きとみられる。ただし、同国の潜水艦戦力は依然として技術的に未成熟であると長尾氏は指摘している。
二重の抑止戦略
一方、こうした一連の動きは、国連の核監視機関が北朝鮮の核開発について「極めて深刻な」進展がみられると警告する中で起きている。核弾頭の保有数を巡っては推計に幅があるものの、外部機関の分析ではおおむね約50発規模とされる。
専門家らは、米国とイスラエルによるイラン攻撃や、今年1月に米国がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した作戦が、核兵器こそ体制維持に不可欠との平壌の認識を一層強めた可能性が高いとみる。
韓国の文正仁元大統領特別補佐官(延世大名誉教授)は、「米イスラエルによるイラン攻撃や、これに先立つベネズエラでの作戦は、米国が選択すれば体制転換や指導部の排除に踏み切るとの北朝鮮の長年の認識を強化した公算が大きい」と指摘する。

こうした文脈の中で、文氏は北朝鮮が「二重の抑止(デュアル・ディタレンス)」を追求していると分析する。
つまり、在韓・在日米軍に対する打撃能力を誇示すると同時に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を加速し、米本土への攻撃能力を誇示することで米国を牽制する狙いである。
実際の運用としては、短距離および中距離弾道ミサイルの発射試験を継続しつつ、大陸間打撃能力の高度化を並行して進める構図となる。今年中にもICBMの追加発射が行われる可能性は否定できないと文氏は指摘している。
後継者問題
軍事的なメッセージに加え、金正恩朝鮮労働党総書記が10代の娘、金主愛とともに最新の試験に立ち会ったことは、世界でも最も閉鎖的な国家の一つである北朝鮮において、13歳とされる同氏の役割を巡る憶測を一段と強めている。
韓国の情報機関は最近、金主愛が父の有力な後継者として位置付けられていることを示す信頼性の高い情報を把握していると明らかにした。

もっとも、文氏はこうした見方に異を唱え、「現時点で北朝鮮の後継政治を論じるのはナンセンスだ」と指摘する。
権力移行の兆候というよりも、娘を伴った公の場への登場は、家族思いで配慮のある指導者像を国内に印象付ける政治的演出の側面が強いとみる。とりわけ外部文化への接触が増えつつある若年層に向けたイメージ戦略の一環と分析される。
筆者:吉田賢司(JAPAN Forward記者)
This post is also available in:

