5月22日、米ニューヨークの国連本部で開かれたNPT再検討会議の最終日の会合。成果文書を採択できず決裂し、閉幕した(共同)
This post is also available in:
核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、全加盟国の共通目標となる成果文書を採択できずに閉会した。
5年に1度の同会議が成果文書をまとめられずに決裂したのはこれで3回連続だ。核軍縮と不拡散を目指すNPT体制への打撃が指摘されている。
だが、それを嘆いているだけではいけない。日本に求められているのは、実効性ある核抑止態勢の確保である。核攻撃やその脅しを受けないよう、拡大抑止を提供する米国との同盟をまず強化していきたい。
NPTは米露英仏中の「核兵器国」だけに核武装を認め、他の「非核兵器国」には許さない不平等条約だ。核兵器国は誠実に核軍縮交渉を行う義務を負うが遅々として進んでいない。
再検討会議の成果文書は全会一致が原則だ。米国はイランの核兵器開発、核武装は認められないとの記述を求め、原子力の平和利用をしているだけとするイランやロシアは削除を求めて対立し、不採択にいたった。
イラン核武装は世界への脅威となりかねない。イラン問題を盛り込む成果文書を採択できなかったのは残念だった。
もっとも、そのような成果文書を採択しても核軍縮が進むとは思えない。核大国が米ソ(露)2カ国の時代は核軍縮の余地があった。だが、今は米露中の3つの核大国がある。それぞれが相手2カ国の核戦力との対峙(たいじ)を考えざるを得ず交渉は絶望的に難しい。そもそも、核戦力の急速な追い上げを図る中国は交渉に極めて消極的だ。
成果文書案には他にも問題があった。たとえば最終案では、北朝鮮の核武装を認めない文言がロシアの要求で削除されてしまった。
交渉の途中までは中国が提案した核兵器の先制不使用の文言まであった。この提案を望ましく思うなら間違いだ。侵略国が圧倒的な通常兵力で攻撃しようとする時、核戦力での反撃の余地を残しておく方が侵略を抑止できる現実がある。第二次世界大戦後の欧州がそうだった。大量破壊兵器である生物・化学兵器の使用抑止にも核戦力は役割を果たしている。これらの抑止を放棄するのは危うすぎる。
今の科学技術の水準では、核の惨禍を防ぐために核抑止が欠かせない。平和の追求にはその現実を踏まえる必要がある。
◇
2026年5月26日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in:

