千葉県の市川市動植物園で、オランウータンのぬいぐるみを母親代わりに抱いて過ごす姿が人気となった生後8カ月のニホンザル「パンチ」。世界中から見物客が訪れ、サル山の周りは今でも人の山ができている。
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母親代わりのオランウータンのぬいぐるみとニホンザル「パンチ」(市川市動植物園公式Xから)

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千葉県の市川市動植物園で、オランウータンのぬいぐるみを母親代わりに抱いて過ごす姿が人気となった生後8カ月のニホンザル「パンチ」。サル山で群れに慣れようと奮闘する姿が2月にSNSで広まった。成長を一目見ようと来園する人が急増し、今年度の入場者は開園以来初めて30万人を突破。世界中から見物客が訪れ、サル山の周りは今でも人の山ができている。

昨年7月に生まれたパンチは母ザルの育児放棄により飼育員の手で育てられた。今年2月にサルの群れに入ることを応援するために、同園はSNSで「#がんばれパンチ」と発信し、海外でも人気者となった。

ぬいぐるみを抱く姿が人気を博す一方で、年上のサルから、しつけのためにたたかれたりする動画が拡散され「いじめでは」「かわいそう」といった声が上がった。

園への抗議は英語での国際電話も多く、同市動植物園課の安永崇課長は「職員に負担がかかり、現場は疲弊した」と振り返る。外国ではニホンザルの生態を知らない人も多いといい、「園がもうけるために、劣悪な環境にパンチを入れて『かわいそう』という姿を演出をしているのでは」といった声もあったという。

これを受け、園は2月20日に飼育員名で声明を発表。怒られることで群れのコミュニケーションを学んでいるとした上で「ただかわいそうと思うのではなく、パンチの頑張りを応援していただければと思います」と理解を求めた。現在では抗議電話やメールは減ってきているという。

サル山周辺ではスマートフォンで撮影する外国人の姿も目立つ=3月25日、千葉県市川市(鈴木貴之撮影)

取材に訪れた3月25日は平日にもかかわらず、入り口には午前9時半の開園前から長蛇の列ができていた。安永課長によると「今日はこれでも少ない。土日だと入場するのに1時間から1時間半待ちになっている」という。これまでは地元の客が中心だったが、今では遠方からの来園が増え、土日の入場者は約2倍に膨れ上がっている。

開園前の列に並んでいた神奈川県鎌倉市の女性は2時間かけて、娘や孫2人と来園。「私が行きたいと言って連れてきた。孫たちが春休みに入って、やっと訪れることができた」と開園が待ちきれない様子だった。

平日にもかかわらず開園前から入場待ちの長蛇の列ができていた=3月25日、千葉県市川市(鈴木貴之撮影)

開園後、サル山の周りではスマートフォンで撮影する外国人の姿も目立つ。北海道でスノーボードを楽しむために来日した米国人男性(50)は成田空港から帰国する途中で立ち寄ったといい、「昨日はお花見をしたが、帰るまでに絶対にパンチを見たかった」と日本を満喫した様子。米国から友人とともに来日し、東京や京都を旅行しているという男性(21)は「SNSでパンチを知った。彼が友達を見つけられることを祈っている」とサル山を見守っていた。

米紙でも報じられるなど海外での爆発的な人気の一方で、インターネット上では飼育員を装い、パンチへの寄付を求める偽アカウントや非公式グッズの販売も確認されている。市は16日、口座振り込みやふるさと納税、LINEスタンプ購入でパンチを支援する方法を日本語と英語で案内する「サポーターズガイド」を公表し、トラブル防止に全力を挙げている。

また、サル山周辺が混雑することで観覧マナーの問題も発生している。園は「サル山の前列での観覧は10分までにしてほしい」と入場者に声掛けしているが、中には「こっちは金を払っているんだ」という人もいるという。ネット上では日本語に加え、英語、中国語、韓国語、スペイン語でマナーを周知している。

安永課長は「一番重要なのはパンチが群れに慣れること」と強調し、「多くの人に見られることでサルにもストレスがかかり、けんかになる。その影響は群れで一番小さいパンチにくる」とマナーを守った観覧を呼びかけた。

筆者:鈴木貴之(産経新聞)

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