新潟県佐渡島の生物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイは、庭のメダカを飼育する水槽に広がる小さなビオトープに、突如現れた初夏の闖入者を紹介します。
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スイレンの上で休む変態途中のカエル。しっぽが残っている(大山文兄撮影)

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新潟県佐渡島に国の特別天然記念物、トキを撮影するために6年前に移住した際、東京の自宅から大事に運んできたものがある。メダカを飼育している水槽だ。その飼育ケースから、様々な生き物が巣立っている。今回は大空ではなく、身近な庭の小さな生き物にカメラを向けた。

メダカ飼育ケースはビオトープ

ケースの大きさは長さが縦80センチ、横50センチ、高さ20センチ。4つをズラリと並べている。庭の池から植え替えた睡蓮とカキツバタなどの水性植物や、泥に生息する微生物のおかげで水が浄化され、水を取り替えなくてもよい自然の生態系が再現されている。箱庭ビオトープといっていいだろう。

この中の一つのケースで異変を感じたのは4月中旬のことだ。いつものようにメダカにエサを与えていると、入れた覚えのない小さなオタマジャクシが、何匹も水面まで顔を出し、メダカと一緒にエサを食べていた。気づかない間に、ケースに卵を産みつけたらしい。

2年前には、ケース内のカキツバタに、モリアオガエルが泡状の卵の塊を3個産みつけたことがある。モリアオガエルは、森の樹木の上などで生活している日本固有種だ。5月下旬ごろになると、池などの水面に張り出した木の枝に卵を産むユニークな生態で知られる。

近所の水田の畔に産み付けられていたモリアオガエルの卵塊(大山文兄撮影)

佐渡では、人家のそばにも生息しており、隣接する水田の畔にも卵を産みつける。今回、出現したオタマジャクシは、産卵時期などから、モリアオガエルではなく、ヤマアカガエルではないかと推測した。

初めは1センチほどの大きさのオタマジャクシも、メダカのエサを食べ続け、6月に入ると、3センチを超えメダカより大きくなってしまった。この頃になると、オタマジャクシ数百匹がウジャウジャ泳ぎ回り、本来の住民であるメダカが遠慮しながらエサを食べる状態になっていた。庇を貸して母屋を取られた形だ。

メダカのエサを食べて大きくなったオタマジャクシの群れ(大山文兄撮影)

カエルに変態、水槽ケースからの旅立ち

毎日のエサやりのとき、オタマジャクシの成長ぶりを見るのが楽しみになっていった。水を汚さないように、エサの量はメダカが食べられる分量しかあげていなかったが、オタマジャクシのために多めにエサをあげるようになった。

発見してから丸2ヶ月。6月下旬には、足が生え、カエルに変態し、スイレンの葉の上を飛び跳ねる数も増えてきた。

オタマジャクシの間は水中でエラ呼吸し、藻やプランクトンの死骸などを食べているが、足がはえ、肺呼吸するようになると、生きている昆虫しか食べなくなる。オタマジャクシ時代は、私が近づくと水面に浮かび上がってエサをアピールしていたが、カエルになると恩を忘れ、ぴょんぴょんと逃げ去っていった。

散水ホースの上で休んでいたのはお馴染みのアマガエル。奥はメダカの水槽(大山文兄撮影)

カマキリ、トンボの姿も

メダカケースのそばで育てているハーブの葉には、卵から孵化したばかりのカマキリの幼虫を見つけた。水色の体が特徴の、アオモンイトトンボもヤゴからトンボへと姿を変えて飛びたっていく。

ヤゴからトンボへと羽化している様子。殻は落下したのか確認できなかった(大山文兄撮影)

自宅から一歩出るだけで、小さいころから大好きだった昆虫や小動物の誕生を観察できるのは佐渡に移住した醍醐味の一つだ。

孵化したばかりのカマキリの赤ちゃん(大山文兄撮影)

わがもの顔だったオタマジャクシがいなくなり、本来の主のもとに返ったケースを見るとちょっぴり寂しさを感じてしまう。命をつなぐために、来年も戻っておいで! やっと静かに泳げるにようになったメダカに話しかけてしまった。

筆者:大山文兄(フォトジャーナリスト)

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■大山文兄 産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。

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