新潟県佐渡島の生物を紹介する映像記者、大山文兄のフォトエッセイは、猛暑をサバイバルする特別天然記念物トキの「おもしろ習性」を紹介します。
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砂利道に並ぶトキ。衛視のように背の高いサギが遠方の監視を任されたように見える(大山文兄撮影)

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夏本番。海に囲まれた佐渡島にも、容赦ない暑さが襲っている。そんな中、最近、不思議に思うことがある。日陰がない炎天下でも、トキが集団で砂利道の上に立っているのがよく観察されるのだ。

男性も日傘を持つ時代。トキも日差しを遮ることができる林にいれば、過ごしやすいのではないか。 水が張ってある田んぼの畦の方が涼しいのではと思うが、日差しで熱くなった砂利道にじっとトキが佇んでいる。炎天下の砂浜を素足で歩いて、火傷しそうになった思い出がよみがえったが、トキは涼しい顔だ。

そこで、トキ保護センターで32年間にわたり獣医を務めてきた 金子良則さ んに理由を聞いたところ、「トキの足は血管が少なく、 熱が体内に伝わりにくいからではないか」という。

田んぼの畦では、トキの身体が稲からすっぽり隠れてしまう(大山文兄撮影)

目立ってなんぼ

では、 なぜ目立つ砂利道に群れるのか? 金子さんは「その答えはトキに聞かなければ分からない」としな がらも、「成長した稲の丈の高さに関係があるのでは」と話す。

この時期の稲の長さは60センチにもなり、 トキの姿がスッポリと隠れる。猛禽類などの天敵に見つかりにくくはなる一方で、トキも 周囲を見 渡すことができず 安心できない。このため、 田んぼの畔ではなく、 見通しのよい砂利道で 群れになって周囲を見張っているのではないかという。通せんぼのように道をふさいでいるトキが何かに驚き、一斉に飛び立つ姿は壮観でもある。

エサとりで泥だらけになって一斉に飛び立つトキの群れ。この時期、幼鳥も混じっている(大山文兄撮影)

トキも夏バテ?

夏場は、トキもエサの好みが変わる。 大好物のドジョウはカロリーが高く、 体温が上がりやすくなるため、 昆虫類を好んで食べるようになるという。実際に、飼育下のトキも、 夏場はエサのドジョウを残すことが多くなるため、 冬場の 半分に量を減らすという。トキも夏バテしているわけだ。

鳥は汗をかくことが出来ないため、 口を大きく開け、 水分を蒸発させて身体から熱を逃す。以前のコラムでハーハーと口をあけて浅い呼吸を繰り返す「パンティング」の様子を動画で紹介したが、人のように汗をかいて体内の温度を下げられない動物は大変だ。

雑草が生える畦で集団でいるトキ(大山文兄撮影)

汗をかいて体内の温度を下げられるとはいえ、夏場の撮影は命に関わる。トキの撮影は、 トキを驚かさないため車内から行うことが環境省が定めたルールのため、撮影時にはエンジンを止める。クーラーが使えない車内からの撮影は、 サウナ状態で熱中症の危険性が常に伴う。このため、日が上らない早朝4時半ごろから遅くても8時頃、 夕方は4時ごろから日没までを撮影タイムとしているが、撮影に夢中になって時間を忘れることもある。

真夏の撮影は、少し大げさだがまさに命がけといえるかもしれない。

ヒトが自転車で通っても動じないトキの群れ(大山文兄撮影)

筆者:大山文兄(フォトジャーナリスト)

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■大山文兄 産経新聞社写真報道局で新聞協会賞を2回受賞。新聞社時代に11年間にわたり、トキの野生復帰を取材。2020年に退社して佐渡島に移住、農業に従事しながら、トキをはじめとする動物の写真を撮り続けている。映像記者として佐渡の魅力を発信中。インスタグラムでフォローしてください。

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