伝統文化を支えてきた日本の養蚕業が、消滅の瀬戸際に立たされている。政府には、関係業界と連携した振興策を講じてもらいたい。
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皇居内では毎年「御養蚕納の儀」が行われ、収穫した繭からとれた生糸が神前に供えられる=2025年7月(宮内庁提供)

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伝統文化を支えてきた日本の養蚕業が、消滅の瀬戸際に立たされている。

養蚕農家が高齢化などで激減し、平成元年に全国で約5万7000戸あったのが、令和7年には113戸を残すのみとなった。

養蚕と製糸でつくられる生糸は絹織物をはじめ、さまざまな伝統工芸品に使われる。国産生糸は、しなやかさや糸の細さなどに特徴があり、中国産など輸入生糸に比べて品質が高いと評判だ。

日本の歴史とも密接に関わる養蚕業を消滅させないよう、政府には、関係業界と連携した振興策を講じてもらいたい。

一般財団法人大日本蚕糸会のまとめによれば、7年の養蚕農家は前年より21戸減り、過去最少となった。深刻なのは高齢化だ。残っている農家の6割強が70歳以上であるうえ、約9割は後継者がおらず、今年中に100戸を下回る恐れがある。

日本の養蚕の歴史は古く、弥生時代の遺跡からも確認されている。明治時代になると国策により発展し、生糸は最大の輸出品となった。最盛期の昭和初期には、国内農家の約4割が養蚕を手掛けていたという。

だが、戦後に経済復興を遂げた昭和40年代以降は中国産など安価な輸入生糸が増加し、日本の養蚕は急速に衰退した。30年代半ばには1800以上あった国内の製糸工場も、令和6年現在で稼働しているのは7工場のみとなった。

その結果、国内の絹製品需要の大部分は輸入生糸で賄われ、国産生糸のシェアは6年現在で0.13%に過ぎない。シェアを上げるには、国産生糸をブランド化して付加価値を高めるほか、魅力を国内外に広く知ってもらう活動も欠かせない。

そのうえで、養蚕業への新規参入や規模拡大への支援、生産コストに見合った長期的な利益確保のための取り組みを政府には進めてもらいたい。

養蚕は皇居でも行われている。明治天皇の皇后である昭憲皇太后が明治4年にはじめて以来、歴代皇后に引き継がれ、令和の御代も皇后陛下が毎年取り組んでおられる。

伊勢神宮で20年に1度、社殿や服飾品などを一新する式年遷宮でも大量の国産生糸が使われる。養蚕業の持続は、日本文化の根幹に関わる問題であることを、忘れてはならない。

2026年5月19日付産経新聞【主張】を転載しています

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