ヒゲクジラ類の肉に豊富な成分「バレニン」が、パーキンソン病の予防に役立つ可能性が研究で浮上した。効果を確認できれば、新たな治療法につながりそうだ。
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バレニンが豊富なイワシクジラ(感鯨下関提供)

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ヒゲクジラの仲間の肉に豊富な「バレニン」という成分が、脳の難病パーキンソン病の予防に役立つ可能性が、岩手大などの研究で浮上した。パーキンソン病を再現したマウスに投与すると、症状が軽減された。人でも効果を確認できれば、新たな治療法につながりそうだ。4月17日付の欧学術誌で報告された。

バレニンは、ナガスクジラ、ミンククジラ、イワシクジラなどヒゲクジラ類に豊富な物質で、認知機能障害の改善など脳機能に関わる効果が報告されている。そのため、脳から体への指令がうまく伝わらず、手足の震えや運動機能低下、転倒、認知機能の衰えが起きるパーキンソン病の症状改善も期待された。

この病気は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンを作る神経細胞の減少で発症する。この細胞内で、エネルギー生産を担う小器官ミトコンドリアが損傷し細胞死を招くことが進行の一因とみられる。そこで研究チームは、ドーパミン神経細胞のミトコンドリアの機能を阻害しパーキンソン病を再現したマウスで、バレニンの効果を調べた。

このマウスでは、飼育箱内を落ち着きなく動き回る異常な行動がみられた。だが、13週間にわたりバレニンを毎日投与すると、異常行動で動き回る距離が3~8週後に2~3割抑えられた。ドーパミン神経細胞では、傷ついたミトコンドリアが分解され、作り直される仕組みが働いていた。

脳神経の病気の研究が専門の尾﨑拓・岩手大准教授(細胞生化学)は「バレニンが神経細胞に作用する機構の一部が判明した。突出した効果だった」と話す。ただ、クジラ肉を食べればパーキンソン病を確実に防げると示されたわけではないため、今後は人での有効性や成分を安全に脳へ届ける方法を調べるとしている。

実験で使ったバレニンは、イワシクジラから抽出された。イワシクジラの肉100グラム当たりのバレニン含有量は、豚肉の約27倍、鶏肉の約250倍、牛肉の約640倍。熱に強く、体内でも安定しているという。

パーキンソン病は、65歳以上の100人に約1人が発症するとされる。根治療法は未確立で、ドーパミンの補給療法が中心となっている。

筆者:伊藤 壽一郎(産経新聞)

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