大西洋を航行中のクルーズ船で、「ハンタウイルス」の集団感染が疑われる事例が発生した。ハンタウイルスに感染すると、発熱やせきなどの症状が出た後、急速に進行し、死に至ることがある。WHOや関係国の保健当局はしっかりと調査し、的確に対応することが必要である。
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ハンタウイルスの集団感染疑いが出ているクルーズ船=5月4日、カボベルデ沖(ロイター=共同)

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大西洋を航行中のクルーズ船で、ネズミなどの齧歯(げっし)類が媒介する「ハンタウイルス」の集団感染が疑われる事例が発生している。

船はオランダ船籍で、約150人が乗っている。感染が確認された人と疑われる人は計8人で、うち3人が死亡した。

人から人への感染はまれとされるが、世界保健機関(WHO)は、濃厚接触による感染が起きた可能性も排除せずに調査を進めている。「一般市民への感染リスクは低い」としているが、疑い例の確定診断や感染経路の特定などを急ぎ、情報を速やかに公表せねばならない。

スイス政府は、クルーズ船を先に下りた男性1人の感染を帰国後に確認したと発表した。

乗客には日本人1人が含まれる。厚生労働省は、感染した乗客が日本に入国した場合でも、適切な隔離や接触者の管理などにより、「国内で人から人への感染で拡大する可能性は低い」としている。予断を持たずに、対応してもらいたい。

新型コロナウイルス禍では、厚労省の初動の遅れから感染が急速に拡大した。同じ過ちを繰り返してはならない。

新型コロナの流行初期に起きた「ダイヤモンド・プリンセス」のような様相は呈していない。WHOや関係国の保健当局はしっかりと調査し、的確に対応することが必要である。

ハンタウイルスは、齧歯類の排泄(はいせつ)物を含む粉塵(ふんじん)の吸入などで感染する。発熱やせき、筋肉痛などの症状が出た後、急速に進行し、死に至ることがある。船で確認されたのは、「アンデス型」と呼ばれるタイプで致死率が40~50%とされる。

死亡したのは、オランダ人の夫婦とドイツ人で、感染が確認された1人が南アフリカで集中治療を受けている。感染が疑われる人のうち3人は、オランダで治療を受けるため船外に搬送された。日本人の感染は確認されていない。乗客には自室待機が指示されているという。

アルゼンチンから南極地方に立ち寄り、アフリカ西部の島国カボベルデで停泊した。その後、航行を再開しており、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島に9日にも到着する。適切な検査と処置を行った後、乗客と乗員は各国へ移送される予定だ。スペイン政府の受け入れ判断を多としたい。

2026年5月8日付産経新聞【主張】を転載しています

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