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「自由で開かれたインド太平洋」の維持が重要

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1月20日のバイデン米大統領就任を前に、次期政権でアジア政策を統括する「インド太平洋調整官」という幹部ポストがホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)に新設され、カート・キャンベル元国務次官補の起用が決まった。次期政権の上層部で数少ないアジア通として、キャンベル氏には、法の支配に基づく地域秩序の構築を目指す「自由で開かれたインド太平洋」戦略がバイデン政権でも維持されるよう尽力してほしい。

 

 

含意は中国拡張主義の牽制

 

「自由で開かれたインド太平洋」は2016年、安倍晋三首相(当時)がケニアの国際会議で打ち出した。法の支配のほか、航行の自由や質の高いインフラ整備を重点項目に盛り込み、南シナ海の軍事化や「一帯一路」による勢力圏拡大を進める中国への対抗意識を秘めた構想である。2017年、トランプ大統領は安倍首相の構想に賛同し、「自由で開かれたインド太平洋」を米国の戦略として採用した。

 

ところがバイデン氏はじめ次期政権要人はこれまでのところ「自由で開かれたインド太平洋」という用語の使用を避けている。トランプ政権に使い古された用語を使いたくないというのであれば、考え直すべきだ。この用語は中国拡張主義を牽制するものとして定着しており、オーストラリアも類似の表現を使っている。バイデン次期政権が表現を変えれば、同盟・友好国と中国の双方に対中融和姿勢への転換と受け取られかねない。

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トランプ政権は昨年、閣僚級の高官4人が一連の演説で中国共産党体制を激しく批判。特にポンペオ国務長官は中国への関与政策が失敗だったと断じ、米中は妥協不能なイデオロギー対立に突入した。しかし、バイデン次期政権要人は「中国との関係には敵対の側面、競争の側面に加え、協力の側面もある」(ブリンケン次期国務長官)と語るなど、トランプ政権と対中姿勢の厳しさがだいぶ違う印象を受ける。

 

キャンベル氏にしても、対中関与政策が中国の民主化や国際ルール尊重を促すとの楽観論が間違いだったことを認めながら、中国との競争が中国の体制崩壊を促すと考えるのも間違いで、中国とは共存するしかないというのが持論だ。

 

 

キャンベル氏の次期政権入り

 

キャンベル氏はビル・クリントン政権に国防副次官補(アジア太平洋担当)として参加し、沖縄の米海兵隊普天間飛行場の日本への返還合意をまとめるのに貢献した。オバマ政権1期目には国務次官補(東アジア太平洋担当)となり、ヒラリー・クリントン国務長官がアジア回帰の「ピボット」政策を打ち出すのを助けた。

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「ピボット」と「自由で開かれたインド太平洋」は、中国を米国に対する21世紀最大の挑戦と位置付ける発想が共通している。「ピボット」はヒラリー・クリントン、キャンベル両氏が退任したオバマ政権2期目に「リバランス」政策と改称された上、実効をほとんど伴わずに終わった。民主党政権に三たび加わるキャンベル氏に、期するところがあると思いたい。

 

筆者:冨山泰(国基研企画委員兼研究員)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第756回(2021年1月18日)を転載しています

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