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『反日種族主義』著者らの戦い

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7月2日、韓国与党「共に民主党」所属で国会の外交統一委員長である宋永吉議員が、元慰安婦や元戦時労働者の遺族らとともに国会内で記者会見を開き、日韓でベストセラーになった『反日種族主義』の編著者李栄薫氏と、講義中に『反日種族主義』を取り上げて大学当局から懲戒処分を受けた柳錫春・延世大教授らを「歴史歪曲があまりにも深刻で到底黙過できない」と非難し、名誉毀損、死者に対する名誉毀損、国家保安法違反などで刑事告訴すると発表した。

 

 

与党議員らと告訴合戦

 

その会見で代理人の弁護士は、『反日種族主義』の中で著者らが「日本軍慰安婦は売春婦であり、(戦時労働は)強制徴用ではなく朝鮮人の立身出世できる千載一遇の機会であり、独島(竹島)は日本の領土だから返さなければならないというひどい主張をした」と語った。元慰安婦や元戦時労働者の遺族は「血が逆流する思いだ」などと激しい言葉で著者らを罵倒した。7日、遺族9人は元慰安婦支援団体を最近批判して話題になった元慰安婦の李容洙氏と連名で、李栄薫氏らを刑事告訴した。

 

同じ7日に『反日種族主義』の著者の李栄薫、朱益鍾、李宇衍の3氏と柳錫春教授がソウルのプレスセンターで記者会見を開いた。そこで、李栄薫氏らは宋永吉議員らを強い語調で批判し、宋議員らを名誉毀損で逆告訴すると語った。

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会見で李栄薫氏らは、宋議員らが歴史歪曲だと主張した三つの記述は、『反日種族主義』とその続編の『反日種族主義との闘争』の中に存在せず、一部メディアが捏造した虚偽だとして、「宋議員らは『反日種族主義』を読んでさえいないのではないか」と反論した。その上で、自分たちの主張は学問的研究の結果であり、異なる学説を唱える人たちに公開討論を繰り返し求めてきたと説明し、学問的討論を通じず一方的に歴史歪曲と決めつける宋議員らの言動は言論と学問の自由の重大な侵害だ、と語気を強めた。

 

 

学問の自由への挑戦

 

4月の総選挙で議席の6割を得た与党の共に民主党は、これまで野党にも議席比例で分配していた各委員会の委員長ポストを独占し、「憲法改正以外何でもできる」とされる独善的な国会運営を始めている。1980年に学生と市民が戒厳軍に武装抵抗した光州事件について、民主化運動だったという解釈に異論を唱える者を刑事処罰できる「5・18(光州事件)歪曲処罰法案」を与党議員全員の名で提出した。同法案は、逮捕権を持つ特別調査委員会を設置し、歪曲主張をしたとされた者を懲役7年以下の刑に処するという内容だ。

 

その次には、親日発言禁止法案も準備されている。それとは別に、すでに与党議員が「歴史歪曲処罰法案」を提出している。学問と言論の自由は、自由民主主義の根幹だ。韓国が全体主義の方向に進むのか、その動きを止めることができるのか。李栄薫氏らの戦いを注視したい。

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筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第701回・特別版(2020年7月13日)を転載しています

 

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