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オリンピックは「怪獣」になり過ぎた!

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私は1964年の東京オリンピックの際、学部学生でありながら、他に国旗の専門家がいないということから国旗担当専門職員として組織委に勤務した。また、それに付随する形で開催されたパラリンピックでは、Language Volunteers of Japanese Red Cross Societyの一員として加わった。「各国からのパラリンピック・アスリートはほとんど日本語しか通じない日本に来ると、言語という新たな障害を持つ。みんなでなんとか手助けしよう」という思いを共有して、当時、200人近い学生がこの役を担った。

 

爾来、私は72年の札幌、98年の長野両冬季オリンピックに際しても、組織委で国旗や儀典に関わる仕事に携わった。そして今般も、国際局アドバイザーとして、オリンピック・パラリンピックでの国旗に直接関わった。

 

 

そうした経験に鑑み、TOKYO2020は遺憾ながらオリンピック本来の理念の浸透や普及に努めたかというと、それはあまりに微力であり、大会は巨大化し、本来の趣旨が不明瞭になり、勝利至上主義、商業主義、ナショナリズム過多、TV向けのショウになり過ぎたと言わざるを得ないし、また、IOCの独断、組織委の非効率や秘密主義も目に余るものがあり、広く都民や国民の強い支持と共感を基盤にした開催や運営でなかったことは誠に残念である。

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東日本大震災からの復興を示し、新型コロナ禍の克服を唱え、最終的には「多様性と調和」を看板にした大会だったが、要するにこれは「何でもあり」ということを美化しただけの表現ではなかったのか。これがオリンピックの「終わりの始まり」だとまでは言わないが、大いなる「変革の始まり」であってほしい。

 

 

そのためにはまず、開催時期と開催地だが、アメリカの有力スポーツの開催時期に照らして、オリンピックは真夏の開催しかないとなれば、北半球では東京以南の都市での開催は無理という他ない。また、大会の規模、施設・競技運営、宿泊施設などから言って、アフリカ大陸での開催可能性はほとんどないという他ない。北半球でも、反対や返上の話が昨今、しばしば耳にするようになった。確かに問題は決して小さくはない。そこで、 IOCが国連傘下にでもなり、アテネに国際協力による施設を建設・維持し、多くの克服すべき点を処理し、そこでの恒久開催というのも一案であろう。

 

より現実性のある当面の提案は、夏の大会と冬の大会で競技を分散してはどうか、ということだ。バスケットボール、バレーボール、バドミントン、卓球、レスリング、体操といった室内競技は冬の大会の中で行ってもいいのではないか。また、 野球、ゴルフ、サッカー、テニスなど、他に世界的かつ伝統的な大会があり、最高レベルのアスリートが不参加ないし消極的な参加という競技は、オリンピックでは廃止していい。

 

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五輪が政治的なアピールの場になりかけているのも警戒すべきだ。今回は、無観客だったから実害はほとんど見られなかった。国名表示や国旗掲示の順番にまで「政治的意思」が示される中、もし、観客で一杯の開会式などで政治的なスローガンを書いた横断幕や旗の掲揚などが行われていたらと思い冷や汗をかいていた。無事に終わり、大会開催に関わるものとしてほっとしたというのがホンネだという他ない。

 

日本自体もこの機会に反省すべき点が多々ある。オリ・パラが日本のイメージの向上につながるという思いや経済効果への期待もあったが、森喜朗組織委会長の女性差別発言による退任をはじめ、開会直前まで数々のスキャンダルが露呈し、開会前は「負の報道」がほとんどだった。

 

 パラ・テニスの試合後、対戦相手と健闘を称えあう国枝慎吾選手

 

逆に開会してからは、「感動の物語」の連続。これには拍手と涙を贈るほかないが、報道の内容はあまりに日本選手の活躍が中心になり過ぎた。各自が多方面から冷静に検証すべきであると考える。

 

私は、オリンピックやパラリンピックが国際理解や友好の促進、障がい者へのハンディキャップの改善に大きく貢献してきたと確信する。しかし、これを抜本的に改善した暁に、IOC・IPCにノーベル平和賞という話がでるなら大きな拍手を送りたいが、今のままでは、大きくなり過ぎた「怪獣」のようなものだと言わざるをえない。

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筆者:吹浦忠正

 

 

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