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ベイルート大爆発は史上最大級 カーナビシステムで突き止めた

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昨年8月にレバノンの首都ベイルートで発生し、200人以上が死亡した大規模爆発は、核実験を除き、歴史上最大級の爆発であったことが分かった。北海道大の研究グループが解析して導き出した。テロさえ疑われた大爆発は、平成16年に起きた浅間山(長野、群馬両県)噴火や27年の口永良部(くちのえらぶ)島噴火(鹿児島県)と同じ規模だったという。活用したのは、カーナビでおなじみの衛星測位システム(GNSS/GPS)。高度300キロの上空にある電子のわずかな「揺らぎ」から割り出したという。

 

 

電離圏擾乱を探る

 

大爆発は、ベイルートで昨年8月4日午後6時すぎ、市街地に近い港湾地区で発生。200人以上が死亡した。

 

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規模を特定したのは、北海道大学大学院理学研究院の日置(へき)幸介教授(地球物理学)の研究グループ。日置教授は、衛星測位システムを使って地球で起きたさまざまな現象の解明に取り組んでいる。

 

地球の大気の上層は、太陽からの紫外線やX線の吸収などによって、その一部がイオンと電子に分かれた状態にある。この状態にある層を「電離圏」と呼び、高度60キロから1000キロ以上にわたる領域は電子密度が最も高い「F領域」といい、多くの自由電子が飛び交っている。

 

電離圏は、火山の噴火や地震などに伴って起こる空気の振動によって、電子の数が増えたり減ったりする。その乱れを電離圏擾乱(じょうらん)という。

 

日置教授によると、GNSSに使われる人工衛星から届く2つの周波数を持つ電波を地上で測れば、衛星と地上局を結ぶ直線状にある電離圏のすべての電子数が分かる。研究グループはこの仕組みを活用し、ベイルート上空の電離圏擾乱の振幅幅を導き出した。

 

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データ解析の結果、大爆発に伴う爆風(音波)は爆破約10分後には、地上300キロに届き、F領域に達した。領域の電子の増減は0・1%の振り幅があったという。

 

日置教授らは同様の手法で、火山噴火の規模を突き止める研究を進めており、これと比較したところ、0・1%の振幅は平成16年の浅間山噴火、23年の鹿児島・霧島新燃岳噴火、27年の口永良部島噴火と同規模と判明。ベイルートの大爆発は核実験を除き、歴史上最大級の爆発だったとまとめた。

 

 

地球で起こる現象をすべて解析

 

今回の大爆発は現場から数キロ離れたベイルート中心部でも建物の窓が割れ、高層ビルは爆風が貫通して廃虚と化した。死者は200人を超え、負傷者は6000人以上を数えた。爆風によって広範囲で建物などに被害が出ており、最大30万人が自宅を失い、損害額は150億ドル(約1兆5700億円)を超すと推計されている。

 

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原因は、港湾地区の倉庫に保管されていた、爆薬の原料となる大量の硝酸アンモニウム。6年間にわたり保安措置を取られていなかったといい、溶接作業中に出た火花が引火し、爆発を引き起こしたとみられている。

 

調査で活用された、衛星測位システムは地上約2万キロメートルを周回する人工衛星を利用して現在の位置を計測する。GNSSは全地球を利用可能範囲とするシステムで、ここまでに至らない爆発でも、今回の手法を使えば、世界中で起こる爆発についても、どの程度の規模なのかが分かるという。

 

日置教授は同様のGNSSを使った解析で、弾道ミサイルの軌道や出力の推定、太陽の爆発である「太陽フレア」の規模の推定のほか、地震に伴う地殻変動や地震動の規模推定などに取り組んでいる。

 

ベイルート大爆発に関する研究もそのひとつ。日置教授は「今回は爆発の規模がどの程度かということが分かったが、GNSSを用いた電離圏観測の技術は分野を問わない。今回の結果も、現在取り組む火山噴火の爆発エネルギーの把握に役立たせたい」と話している。

 

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2021年2月13日産経ニュース【びっくりサイエンス】を転載しています

 

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