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コロナ渦の鉄道インフラ輸出 「トップセールス」停滞を許すな

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内の鉄道旅客需要が低迷する中、政府は米国で進行中の高速鉄道計画を始めとする日本の鉄道インフラシステムの輸出計画に力を注ぐ。鉄道の海外展開で日本と受注獲得を競うライバルである中国や欧州の巨大企業を横目に、政府はトップセールスを通じて都市化が加速する東南アジアなどに向けて日本企業への発注を働きかけるなど協力関係の強化を進めてきた。ところが、新型コロナ対策の渡航・入国制限でトップセールスの停滞を余儀なくされる状況がいまなお続いている。

 

日本の新幹線システムが採用される米テキサス州の高速鉄道計画では今年7月、事業を手掛ける米民間企業、テキサス・セントラルに対する政府系機関による29億円の追加支援が認可された。この事業は、ダラス-ヒューストン間を1時間半でつなぐ計画で、政府は「日米インフラ協力の象徴的なプロジェクト」と位置付ける。日本側がこの事業のためにこれまで拠出した金額は260億円規模となった。

 

ただ、建設にかかる費用総額については「精査中で具体的に示せる金額がまだない状況だ」(国土交通省)という。2020年中の着工を目指す計画だが、現地での用地取得は全体の4割にとどまっており、着工に向けた具体的なスケジュールの見通しは定まっていない。

 

鉄道インフラシステムの海外展開で、最大のライバルは中国や欧州の企業だ。各国では近年、鉄道車両メーカーの買収や合併に伴う企業の巨大化が進んでいる。国交省が今年7月に発表した20年版のインフラシステム海外展開行動計画では、中国企業について「国内の巨大市場を背景に勢力を拡大してきた」中国大手2社が15年に合併し、世界最大の車両メーカー「中国中車」が誕生したと指摘した。欧州についても、仏大手アルストムによるカナダ、ボンバルディアの鉄道部門買収が、21年6月をめどに完了する見通しと言及。各国大手の動きに警戒する。

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そんな中、政府は東南アジアなど各国政府に対し、積極的なトップセールスを展開してきた。19年12月には赤羽一嘉国交相が就任後初の海外出張として、インドネシア、ミャンマー、シンガポールを歴訪し、各国政府と鉄道や港湾開発などで協力することを確認した。赤羽氏はこの時のことを振り返り、「今後の協力拡大に対する高い期待を感じた」と手応えを語る。鉄道など日本のインフラシステムの売り込みのため、国交省が19年に実施した政務三役によるトップセールスは計26カ国、延べ35件に上った。

 

しかし、今年に入ると新型コロナ感染症が世界各地に流行し、各国が渡航や入国の制限を開始。トップセールスの流れも停滞した。

 

政府が鉄道インフラの輸出に力を入れる背景には、国内の旅客需要の拡大が期待しにくい実情がある。

 

国交省の行動計画は、国内の鉄道需要について、「今後の人口減少を見据えると、大幅な需要増加は見込まれない」と指摘し、さらに新型コロナの影響で旅客需要も停滞する。海外市場についても新型コロナの影響は無視できないが、世界では年間約24兆円規模の市場があるとされ、海外に望みを託したいという政府の考えが透ける。

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ここにきて中国の“失点”が明らかになった。

 

中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱してから鉄道輸出を強化。15年にはインドネシアの高速鉄道計画で受注を獲得した。首都ジャカルタと西ジャワ州バンドンを結ぶ計画だが、完成予定が複数回延期されたことなどを背景に、インドネシア政府は計画の見直しを迫られている。今年5月には日本からの協力を得たい考えを明かした。現実には、日本側に直接提案や要請は来ておらず、技術面の問題などで今から日本が参加することは難しいとの見方もあり、日本が協力するかは不明だ。

 

高速鉄道計画は当初、日本が新幹線方式を売り込んでいた。しかし、後に加わった中国がインドネシアに財政負担を求めない方式を提案して採用された経緯がある。インドネシアの一件は、技術面や財政面などを長期的に考慮すれば、「日本式を採用する方が優位性が高い」と輸出相手国を早期に納得させることが重要だと示す証左とも言える。

 

日本では、ベトナムやタイなどを対象に入国制限の緩和措置が徐々に進んでいる。今後、タイミングを逃さずにトップセールスを再開できるかが今後の受注獲得の方向を左右しそうだ。

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筆者:岡田美月(産経新聞経済本部)

 

 

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