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しょぼいコロナ財政金融の習政権 西側の対中包囲で窮地に

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新型コロナウイルス禍は世界各国の財政・金融をかつてない速度で拡張させているが、中国は例外かもしれない。日米欧に比べ、その度合いは実にしょぼいのだ。足かせになっているのは外貨難で、西側世界による対中包囲網が形成されると、習近平政権は経済運営で窮地に立たされる。

 

 

グラフは主要国のコロナ対策関連財政支出、融資など金融支援、各国中央銀行の資金発行増加額の、2020年の国内総生産(GDP)予測値に対する比率である。財政支出と金融支援は国際通貨基金(IMF)が20年末時点でまとめている。中央銀行の資金発行増加額は各国の金融統計から筆者が算出した。

 

財政支出の規模とGDP比は米国が最も高い。今年1月に誕生したバイデン政権による追加支出を含めると、GDP比は25%を超える見通しだ。日本の財政支出額の約83.6兆円は米国に次ぐ規模で、金融支援のGDP比は米欧をしのぐ。

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中央銀行がカネを刷って金融市場に流し込む金融の量的拡大策は08年9月のリーマン・ショックを機に米欧でデフレ回避や市場安定の決め手となった。リーマン時には様子見だった日銀は12年12月にアベノミクスが始動して以来、量的拡大策を脱デフレに向けた異次元金融緩和の柱としてきた。

 

そして20年3月のコロナショック以来、日米欧の中央銀行はコロナ関連対策費捻出のために増発される国債の買い入れを中心に量的拡大策を再強化している。財政支出と中央銀行の資金発行をいたずらに拡大させると悪性インフレや高金利を招くというのが保守派の考えだったが、現実には物価高騰は起きず、日米欧ではゼロ金利が続く。財政と金融政策に関する世界の潮流は歴史的転換を遂げつつある。

 

グラフに戻る。米国に次ぐGDP規模を誇る中国はコロナ不況下で異様とも見えるほど財政や金融による対策の水準が低い。リーマン時、中国はGDP比15%の財政支出を追加し、中央銀行の中国人民銀行は資金発行を同10%相当増やした。ところが、今回はそれぞれ4.7%、1.26%にすぎない。

 

もちろん、習政権には言い分があるだろう。中国は世界のコロナ禍発生源だが、都市のロックダウンなど中国共産党の強権によって感染拡大を封じ込めることに成功した。経済活動は正常化し、昨年の実質経済成長率は主要国の中では唯一のプラス(2.3%)だった。西側のような大掛かりな財政出動も金融緩和も必要ないのだ、と。だが、だまされてはいけない。

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GDPのプラス分は主に貿易黒字の増加が要因だ。製造業の生産を早期に再開させ、コロナ禍で生産が止まった日米欧向けに輸出した。家計消費などの動向を示す卸売り・小売り部門は回復著しい昨年10~12月期でも前年の水準を1.3%下回る。内需は停滞したままなのだ。

 

何よりも気になるのは、人民銀行の資金発行の伸び率が昨年は2%弱にすぎない点だ。中央銀行の資金発行は経済成長のために必要な原資とも言えるのだが、伸び率は同年の名目GDP成長率の約3%を下回っている。成長資金を十分に供給していないという意味で、中国は金融を引き締めている。なぜか。

 

人民銀行は流入する外貨の買い上げを通じて資金を発行している。中国の通貨・金融制度は実質的にドル本位であり、対外依存なのだ。しかし中国の外貨準備は17年以来ほとんど増えていない。貿易黒字や外資の対中投資で外貨を確保する一方で、巨額の資本が逃避しているためで、人民銀行の資金発行に対する外準の比率は12年半ばまでは100%超だったが、この2月では65%台まで落ち込んだ。これ以上ドルの裏付けが弱くなると、中国内外からの人民元への信用が危うくなりかねない。

 

さらに習政権を脅かすのがトランプ米政権時代以来の対中貿易・金融制裁だ。香港の高度な自治の剥奪と民主化運動の抑圧に対し、米国は党幹部らの資産凍結や金融取引の制限に踏み切ったばかりか、場合によっては香港ドルと米ドルの交換停止に踏み切る法的手段を持ち合わせている。適用されると、香港ドルを介して人民元を米ドルに換えるルートが塞がれる。バイデン政権はさらに、ウイグル族への人権侵害に関連した制裁による国際包囲網を呼びかけ、中国ビジネス優先のドイツを含む欧州連合(EU)も同調した。

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先の米アラスカ州での米中外交対話で中国側代表の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員はブリンケン米国務長官に対し、居丈高に米国の「金融覇権」行使を非難した。習氏の悲鳴である。金融は全体主義者のアキレス腱なのだ。

 

筆者:田村秀男(産経新聞編集委員)

 

 

2021年3月28日付産経新聞【日曜経済講座】を転載しています

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