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ハイテク交通の落とし穴 無人運転ぬぐえぬ不安

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横浜市の新交通システム「シーサイドライン」の自動運転列車の逆走事故から1カ月あまり。事故原因は自動運転システムそのものに起因するものではなかったとみられるが、運転士のいない自動運転列車への不安はぬぐえない。大地震などの異常時にどこまで対応できるのか。人間に代わってコンピューターが制御するハイテク交通に潜む“落とし穴”の総点検が求められるが、利用者も仕組みや歴史を知っておいて損はない。

 

 

無人の自動運転を可能にしたのは、列車の運行をコンピューターで制御する「自動列車運転装置」(ATO)。制限速度を超過した場合に自動でブレーキをかけ、制限速度以下になるとブレーキを緩めて列車を制御する「自動列車制御装置」(ATC)が新幹線や一部の地下鉄などで採用されているが、ATOはさらに、駅での停車や発車も自動で行うことができる。

 

 

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運転士いれば…

 

事故は6月1日夜、始発の新杉田駅で起きた。無人運転の列車が折り返しの発車時に逆走、約25メートル先の車止めに激突して14人が重軽傷を負った。

 

運行会社や運輸安全委員会によると、車両のモーター制御装置につながる配線が車体内部の骨組みに長期間接触、断線した可能性がある。進行方向を装置に伝える2本の配線のうち下り方向へ切り替えを指示する1本が断線したことで進行方向から切り替わらず、逆走する形となったようだ。

 

鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は「運転士が乗務していれば後退した時点で異変に気づき、すぐ止められただろう」と指摘する。無人で自動運転の「ニュートラム」(大阪)でも平成5年、住之江公園駅で暴走した車両が車止めに衝突、200人超の負傷者が出た。

 

ATOは東京メトロ丸ノ内線や南北線など地下鉄でも採用されているが、無人運転は実施していない。「緊急時に対応できるよう必ず運転士を乗務させることになっているため」(東京メトロ)だという。

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鉄道評論家の川島令三(りょうぞう)氏は「始発駅で列車が後ろに下がることは想定されていなかった。後退したら急ブレーキがかかる仕組みを構築すべきだ」とし、1つのトラブルが致命的にならぬよう二重三重のバックアップを講じた「フェイルセーフ」の重要性を強調する。

 

 

「未知の危険」も

 

一方、関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「自動運転は運転に伴うヒューマンエラー(人為的ミス)がない分、安全性は高い」としつつ、「地震などの自然災害などに誰が乗客を守り、誘導するのかという問題がある」との見解だ。

 

自動運転を実現したハイテクのATOには、「未知の危険」も潜んでいる。日大危機管理学部の福田充教授は「交通インフラもサイバー攻撃の標的になるリスクがある。自動運転の運行システムをハッキングから守る仕組みを構築する必要がある」と警鐘を鳴らす。

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自動運転は一般的に、有人運転より事故発生率は低いとされるが、ATOは「もろ刃の剣」。福田教授は「安全性が高いといっても、運転士のいない列車に乗ることに不安を覚えるのは当然だ。不測の事態にも対応できるチェック機能のさらなる強化が欠かせない」と話している。

 

 

「近未来の乗り物」38年の歴史

 

都市部の高架線を自動運転で走る新交通システムは「近未来の乗り物」の象徴だが、その歴史は意外と古く、昭和56年に開業した「ポートライナー」(神戸市)が最初。その後 「ゆりかもめ」(東京)など多くの路線でATOによる無人の自動運転を実施。無人運転によって乗務員の人件費を抑えられる利点もある。

 

一方、ATOを導入せず、運転士が乗務するワンマン運転を実施している路線も。

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「ユーカリが丘線」(千葉県)は自動列車停止装置(ATS)を採用し、運転士による手動運転を行っている。「レオライナー」(埼玉県)とともに、第三セクターの多い新交通システムでは数少ない純民間企業が経営する路線だ。

 

車両が小さく建設コストが抑えられる新交通システムは、鉄道の「空白地帯」だった地域の足にもなった。「陸の孤島」と呼ばれていた東京都足立区の舎人(とねり)地区と都心を結ぶ「日暮里・舎人ライナー」もその一つ。公営交通による唯一の新交通システムでもある。

 

廃線も存在する。平成3年に開業した「ピーチライナー」(愛知県)は都心へのアクセスが不便だったことから利用客が伸び悩み、「ピンチライナー」と揶揄(やゆ)され、結局、開業からわずか15年で廃止された。

 

 

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明確な定義なし

 

新交通システムは日本独自の呼称で明確な定義はない。ただ一般的には、ゴムタイヤの車輪を備えた列車が、高架の専用軌道を走る交通機関を指し、自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)という名称がある。

 

従来の鉄道と異なるのは鉄の車輪ではなく、ゴムタイヤを採用している点だ。

 

騒音や振動が少なく、鉄のレールの上を鉄の車輪で走る従来の鉄道と比べ、摩擦力が大きいため急勾配や急カーブの路線でも走行できるというメリットがある。

 

 

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