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バスが線路を走る世界初のDMVの乗り心地

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線路も道路も両方走ることができる夢の乗り物「デュアル・モード・ビークル(DMV)」が12月25日から、徳島県と高知県にまたがるエリアで営業運転を始める。DMVの本格的な営業運転は世界で初めて。過疎化の激しい地元では、四国の東南部を「四国の右下」と呼んでPRしており、DMVの運行を起爆剤にして全国から鉄道ファンや観光客を集めたいと期待を寄せている。開業に先立つ訓練運転・試乗会を取材した。

 

Dual-mode vehicle switching from road to rail mode on a test run, Kaiyo Town, Tokushima Prefecture.

 

約15秒で変身

 

世界初のDMVを運行するのは、第三セクターの阿佐海岸鉄道。試乗会の出発点は、徳島県海陽町の観光施設、阿波海南文化村だった。座席18席のボンネットタイプの乗り合いバスだ。

 

バスは約1キロ先、JR牟岐線と阿佐海岸鉄道が接続する阿波海南駅へ。切り替え地点(モードインターチェンジ)に停車し、乗客を乗せたまま運転手が操作すると、わずか約15秒で車体前部が浮き上がり、モードチェンジ。バスから鉄道に変身した。

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変形の最中もあまり揺れはない。停車ボタンのついた乗り合いバスが線路を走るという不思議な感覚だが、雄大な景色を堪能しながら、海辺を走る爽快感もある。

 

2駅を経て10キロ先の甲浦(かんのうら)駅(高知県東洋町)へ到着すると、鉄車輪をしまい、再びバスとして出発。終点「道の駅宍喰(ししくい)温泉」(海陽町)までは約4キロで、文化村からは40分足らずで到着した。

 

試乗会に参加した徳島県吉野川市の元会社員、阿部芳男さん(70)は「実物を見るのを楽しみにしていた。新しい体験のワクワク感があり満足だ。乗ること自体が自慢になる」と、興奮した様子だった。

 

料金は片道800円(小児は半額)。1日上下各13~15便。土日の1往復は室戸方面に足を延ばす。

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車両は赤(愛称・阿佐海岸維新)、青(未来への波乗り)、緑(すだちの風)の3台で、1台約1億4千万円で新造したという。

 

Dual-mode vehicle on a test run in road mode, Kaiyo Town, Tokushima Prefecture.

 

険しかった道のり

 

なぜDMVを導入することになったのか。

 

乗り換え不要で地域の足の確保になることや観光客の増加の期待といった理由もあるが、阿佐海岸鉄道の井原豊喜専務は「災害で海沿いの道路が通行止めになっても鉄道部分はトンネルと高架なので物や人を運べる」と、災害時の緊急輸送路確保という意味合いもあると語る。

 

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DMVはディーゼル車だが、ディーゼル機関車に比べると購入費用は安く、燃費は約4分の1。ただ輸送能力は5分の1だ。

 

阿佐海岸鉄道は昭和63年に設立。徳島県南部から高知県東部の海沿いを結ぶ阿佐線の建設工事が55年に中断されていたが、大半の構造物が完成していた海部駅(海陽町)-甲浦駅(東洋町)間を建設・開業するのが目的だった。平成4年から阿佐東(とう)線として運行を始めたが沿線人口が少なく採算は全くとれなかった。

 

28年に主要株主の徳島県がDMV本格導入検討を発表。実用化に向けて、車両製作▽駅の改修▽運転保安システム構築-を進めてきた。当初の総事業費概算は10億円で、2020年東京五輪開催時期を開業目標としていた。

 

ただ、五輪の延期や新型コロナウイルス禍による準備作業の中断で1年遅れ、さらに3年6月に国土交通省のDMV技術評価検討会で車輪アーム補強の必要性を指摘され、開業は12月にずれ込んだ。車両の強度対策や専用保安システム構築などが追加され、総事業費は16億円超に膨らんだが、何とか開業にこぎつけた。

 

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DMV crossing the iron bridge on a test run at Kaiyo, Tokushima Prefecture.

 

DMVで新しい人流を

 

地域活性化には、観光地域づくり法人(DMO)の「四国の右下観光局」と沿線自治体が連携して「四国の右下、右上がり」を合言葉に取り組んでいる。

 

海陽町や東洋町、高知県室戸市は人口減少・過疎化が進み、高齢化率は40%を超える。鉄道空白地帯で他地域からの交通アクセスが整っていないことも課題だった。

 

DMV開業で「一度は乗ってみたい」という人たちの観光も増えることが想定されるが、徳島県次世代交通課の脇谷浩一副課長は「また訪れたいと思ってもらう、リピーターを増やす努力が地元に求められる」と話す。

 

沿線には「【世界初】が走る町」と書かれた横断幕やのぼりが各所に設置されている。地元の観光業者らもキーホルダーやクッキーなどのグッズや土産物を新しく作るなど、歓迎ムードは高まっている。

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井原専務は「DMVに乗りに訪れたお客さまにこの地域の良さを広く知ってもらいたい」と意気込む。脇谷副課長は「外から新しい人の流れを持ってこないと生活インフラが守れない。他と同じでは効果がないので思い切って世界初に挑んだ。乗っていただくことが地域への最大の応援になる」とアピールしていた。

 

Dual-mode vehicle shows passengers stepping off the vehicle at Shishikui Onsen, one of the DMV departure and arrival stops.

 

筆者:和田基宏(産経新聞)

 

 

この記事の英文記事を読む

 

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