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活用すべきは浮いた寄付金、尖閣問題解決の糸口は資料館建設にあり

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先月14日、沖縄県石垣市において、尖閣諸島が1895年1月14日に日本の領土として編入された日を祝し「尖閣諸島開拓の日」式典が開催された。

 

これは石垣市で行われる毎年恒例の式典だ。2011年より始まったこの式典は、今年で10年という節目を迎える。12年に行われた2回目の式典では、私も米海兵隊メンターのグラント・ニューシャム大佐と共に参列し、感銘を受けた。

 

当時大佐はハワイにある米海兵隊太平洋軍に所属し、私は沖縄県の海兵隊太平洋基地で勤務していた。それぞれ異なる司令部に勤めていたが、共に非公式な立場で記念式典とその後に市民会館で行われた公式な式典を見学させていただいた。

 

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毎年恒例の本イベントは、通常、全国および地元の与野党議員たちが出席している。また、尖閣諸島の行政管轄権を持つ石垣市長の中山義隆氏も毎年出席し、あいさつされている。

 

そして、尖閣諸島の歴史や日本への編入の背景、同諸島に対する日本の主権に対する中国の挑戦、さらには、中国の領海侵犯などによる現地漁師たちの問題を取り上げ、本件に関して意識を高める重要なイベントだ。

 

こうした啓発式典は大変重要だが、尖閣問題に関する意識醸成のためには不十分だ。そこで私は、12年に東京都が集めた資金を活用し、石垣市に「尖閣諸島資料館」の建設を実施すべきだと考える。

 

構想では、資料館は4階建ての建物で、これを次のような区分けにするのがよいだろう。

 

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1階部分にはオープンスペースを用意し、修学旅行生や団体観光客などが見学前後に食事や休憩がとれる集会所を設け、壁には尖閣諸島の写真や地図を貼ることで入館者に尖閣諸島の姿と地理関係をまず意識させる。

 

2階にはこうした学生たちや観光客、地元民が講演を聴いたり、尖閣諸島についてのドキュメンタリーを視聴できる講義室ないし上映室を設け、それに続く展示室には過去1世紀以上に渡って撮影された尖閣諸島の写真と、その歴史的背景を説明したボードを展示する。

 

3階には尖閣諸島関係の物品や重要な資料のコピー、写真などここでしか見られない展示物を設置する。なお、説明文には日本語はもちろんのこと、英語やその他の言語でも表記することで、本館の希少性と尖閣諸島が持つ連綿とした歴史を全世界にアピールする場にする。

 

そして4階には、世界中から集まった尖閣に関わるあらゆる資料(外交文書や論文、記事や書籍、雑誌ないしビデオ)のアーカイブを視聴できるライブラリーを設け、研究者に公開する。そうすれば、この資料館は尖閣諸島情報に関する世界最大のリポジトリ(宝庫)になるだろう。

 

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多くの人は覚えていると思うが、当時の東京都知事であり、巷では愛国者として有名な石原慎太郎氏が外国籍の民間人に転売できないよう、都によって尖閣諸島数島の購入を勇気をもって表明し、それを機に日本全国から14億円もの寄付金が集まった。

 

しかし、12年に旧民主党政権が尖閣諸島を「国有化」すると決定したことから、多額にのぼった寄付金はいまだ利用されず、基金として宙に浮いたままだ。そのため私は、当時東京都に「資料館建設」の構想を米軍職現役でありながら実名で英字紙を通じて提案していた。

 

およそ3年前のことではあるが、石原氏や猪瀬直樹前都知事の2人と別々で面会した際、両者ともこの提案に関心を寄せ、猪瀬氏は寄付金の使用目的の変更を示した上で、「東京都議会が基金の設置法を改正すれば、石垣市にて資料館の建設が可能だろう」と教えてくれた。

 

もし、尖閣諸島資料館が実現すれば、官民含めさまざまなメリットがもたらされる。例えば、石垣島は国内外の観光客にとって日本有数の観光スポットだ。そのため日本の領土、特に尖閣諸島問題に対する国民の理解が深まるだろうし、尖閣諸島が日本の領土であることを世界中の人々に認識させるよい機会となる。

 

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また、国際交流や学術研究促進のため客員研究者の招聘(しょうへい)を通じて国外における学術的発信を強化をするだけでなく、尖閣諸島資料館の研究者や学芸員が、国内外の大学やシンクタンクに遠隔で講演を行うことで、尖閣諸島についての学問的交流も可能となる。

 

石垣市や日本政府などの機関も、尖閣諸島の動植物の生態系調査という理由付けで不可解かつセンシティブになりがちな調査船派遣や、定点カメラの設置やドローンなどによる撮影もできる。

 

実際、終戦直後の45年から沖縄が日本へ復帰した72年までの米国統治下では、多くの日本人科学者や政府職員が尖閣諸島を訪れることができた。だが、施政権が日本に返還されると、特に近年ではあるが皮肉なことに日本人の訪問は厳しく制限されている。その結果、今日では、同諸島の現状に関する情報はほとんどない。

 

以上の点から、尖閣諸島の学術研究は日本国民や研究者にとって重要な意味を持つ。現状、日本政府は日本人が尖閣諸島を訪れることを制限しているが、将来的には資料館のスタッフがツアーガイドとして国内外向けに広報したり、調査研究ができる環境が望ましい。

 

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さらに言えば、自民党は12年12月の衆院選前に、尖閣諸島に公務員を常駐させると公約したが、いまだに実現していない。多くの日本人や米国の日米同盟支持者は、尖閣諸島に対する日本の実効支配を一層示すために、公務員常駐が必須だと考えている。

 

広報外交が弱いと言われている日本だからこそ、資料館の建設による国内外への情報発信が重要だ。コロナ禍で人の往来が減っているものの、アフターコロナを見据えて、むしろ動くなら今であろう。この1年で中国はコロナ禍を利用し、香港の一国二制度の形骸化や台湾への圧力も強めている。

 

さらには今月1日から、中国は海警局の船による武器使用を認める海警法を施行し、尖閣諸島の緊張感は一層高まっている。米中の対立はより深まり、国際環境は大きく変化し続けている。これまで静観しがちだった日本も、私が提案する資料館建設を含め、今後何かしらの行動が求められるだろう。

 

 

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筆者:ロバート・D・エルドリッヂ
政治学者、エルドリッヂ研究所所長、元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長。1968年、米ニュージャージー州生まれ。米リンチバーグ大卒、神戸大大学院博士課程修了。90年に来日し、阪大大学院准教授、在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長などを経て、現職。東日本大震災時に「トモダチ作戦」を立案、実行したことでも知られる。近著に『平和バカの壁』(産経新聞出版、共著)。
ロバート・D・エルドリッヂ詳細ページへ

 

 

この記事の英文記事(2021年1月28日掲載)を読む

 

 

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