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教科書検定の透明性を高めよ

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昨年12月25日、「新しい歴史教科書をつくる会」(会長筆者)が関与した自由社版の中学校用歴史教科書が、最終的に検定不合格となつた。この20年間、5回の検定合格を得てきた「つくる会」系の教科書が不合格となつたことは、何とかして「つくる会」系の教科書を抹殺したいといふ文部科学省担当者の不当な意図によるものと考へざるを得ない。

 

 

「つくる会」に不合格処分

 

教科書検定は、文科省が定める基準に従つて行はれるが、簡単に述べると、誤字脱字をチェックし、事実の誤りを正し、内容が児童生徒に教へるにふさはしいかどうかを調べるのである。そのチェックした全てを検定意見といふ。

 

検定申請後、数ヶ月経つて、文科省から検定意見が提示される。どの会社の教科書にも、少なくとも100個程度の意見がつく。ここで、担当官とやり取りをして修正した教科書を提出し、検定意見がゼロとなれば合格となる。

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かつては、検定意見の中に、強制力のある「修正意見」と教科書改善のアドバイスである「改善意見」とがあつたが、今は検定意見だけとなつてゐる。

 

さらに今回の検定から新たな基準が導入された。それは、1ページ当たり平均1.2個以上の検定意見がついた場合は、上記の担当官とのやり取りはなく、20日以内にその検定意見に対して反論書を提出し、担当官が反論を認める数によつて、検定意見が1ページ当たり1.2個より少なくなれば、通常の手続きに移行するといふものである。

 

自由社版教科書(全314ページ)は、1ページ当たり1.2個の376個より多い405個の検定意見がついた。このうち誤字脱字は29個、誤りや不正確なものは59個である。292個が、生徒が理解し難い、又は誤解するおそれがあるといふものだつた。

 

 

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主観的な文科省検定意見

 

生徒が理解し難い、又は誤解するおそれといふ極めて主観的な検定意見が大半を占める。しかもその多くは、一般人にとつてはどうしてなのか理解し難いものである。

 

2例だけ上げる。年表の中の「1949年中華人民共和国(共産党政権)成立」の記述中、「共産党政権」について、中華人民共和国は連合政権であるから、生徒が誤解するおそれがあるとされた(中国は実質的な共産党政権ではないのか)。

 

他は、天安門事件についてのコラムで、ワイシャツ姿の若者が戦車の前に立つて進路を妨害してゐる有名な写真を掲げ、「民主化運動を弾圧するために出動した中国人民解放軍の戦車に立ち向かう学生」の記述について、「写真の人物の性格について断定的に過ぎる」から生徒が誤解するおそれがあるといふのである。

 

自由社は、405個の検定意見のうち175個について反論書を提出した。ところが、12月25日、全部について反論を認めないといふ処分が下つた。

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これは昭和61年に、高校用歴史教科書『新編日本史』が、検定合格後に強制的に記述内容を変更させられた事件に次ぐ、文科省のスキャンダルである。

検定制度は、従来のやうに「修正意見」と「改善意見」との二本立てとし、検定終了後に検定過程を明らかにするなどの透明性を高める必要がある。

 

筆者:髙池勝彦(国基研副理事長・弁護士)

 

 

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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第659回(2020年3月2日付)を転載しています

 

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