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暴かれた中国依存の脆さ

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国難である。

 

中国湖北省武漢市由来の新型コロナウイルス蔓延(まんえん)の危機の真っただ中、わが国が国難に打ち勝つ鍵は、政府と国民が一体となって協力できるか否かである。政治家も国民も、かつて後藤新平が唱えたひとつの純真さに徹することができるか。百の学問よりも千の経験よりも、渾身(こんしん)の努力をする一人一人の純真さが、国難から日本を救う力となる。

 

政府がいつ緊急事態を宣言するかが注目されているが、わが国の緊急事態宣言は他国と異なり、ほとんど命令ができない。要請および指示どまりの優しさ、緩さが特徴だ。わが国の国家としての建てつけは政府が命令し、国民が従う形ではない。だからこそ政府と国民の協力
なしには課題は達成できないのだ。

 

力を行使できない国である分、政府はいかなる国のいかなる政府よりも賢く洞察しなければ、わが国は持たない。国民も各人が賢明に自制心を働かせなければ、好きなだけ野放図になり、これまたわが国は持たない。普通の国にあっては当然の力強い仕組みが欠けているために、わが国は政府と国民の賢さによって国を保つしかないのだ。

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万が一、政府がかつての民主党政権のような愚かな政府となり、国民が自己中心主義に走るとき、わが国は著しく力を失っていくだろう。

 

日本の美点を思い出そう。他者に迷惑をかけない。他者のために役立つ。社会の一隅を照らす。日本人が大切にしてきたこうした価値観を全世代で思い起こし、実生活に生かしていこう。そうすれば必ずウイルスに打ち勝てる。

 

国民は政府を信頼できると思うとき、必ず、協力する。だからこそ、安倍晋三首相は自らの言葉で国民に語りかけるのがよい。政府は必ず国民を守る、と。政府を信頼してよいのだ、と。

 

コロナウイルス抑制のために政府は自粛を要請し、人の移動が抑制された。経済は急激に冷え込み、文字どおり需要が消えたサービス産業やフリーランスの人々、皆が悲鳴を上げている。中小零細企業も資金繰りが大変だ。

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自民党の岸田文雄政調会長は4月3日、所得減の世帯に一世帯当たり30万円を支給すると発表したが、実際の支給は5月になるという。

 

遅すぎないか。国民は迅速な対処を求めている。米国は国民への現金給付を10日で法制化した。日本はなぜこんなに時間がかかるのか。

 

国会の頑迷な仕組みがあるとはいえ、自民・公明両党の責任は大きい。同時に日々増える感染者や犠牲者のことを考えていないかのように、危機対策とは無関係の非建設的な議論しかできない野党は無責任極まる。とりわけ立憲民主党は言語道断である。この政治の堕落こそ、日本が直面する最大級の国難だ。

 

コロナウイルス問題はわが国だけでなく世界全体が中国依存の脆弱(ぜいじゃく)体質に陥っていたことを暴き出した。ウイルス問題は公衆衛生ではなく、安全保障の根幹を問う問題なのだ。これまで日本の財界も政府も、日中関係を主に経済的視点から見てきたが、今や視点を変えるときだ。実際、サプライチェーンの見直しの中で改めて戦略としての「中国+1」が強調され始めた。

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以前から「中国+1」は議論されてきた。ただし、あくまでも人件費など経済的要素に基づく発想だ。わが国の企業は中国進出に際し、利益に注目する余り、中国との取引が将来もたらす結果について考えなかったと言わざるを得ない。

 

歴史を捏造(ねつぞう)されても、知的財産を盗まれても、領土を狙われても、撤退するわけでもない。訴えて戦うわけでもない。利潤追求の企業でありながら、大切な財産である知的財産を盗まれても、それよりもっと優れたものを発案すればよいという姿勢を、多くの日本企業はとってきた。諦めか卑屈さか。眼前の利益に目を奪われて将来の大きな損失、取り返しのつかない敗北が見えないのだ。

 

だが、コロナウイルスが明確に描き出したのは、中国問題を経済だけの次元でとらえ続ければ、いずれわが国はひどい目に遭うということだ。

 

中国の戦略はある意味、分かりやすい。国際社会のマスク不足の中、世界全体のマスクの80%を生産している中国が、マスク外交を展開中だ。わが国の地方自治体にもマスクが贈呈された。その陰で、中国で日本向けにマスク生産を手掛けてきた日本企業のマスクが、在庫も含めて一切合切接収されていた。

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2010年成立の国防動員法によって、有事の際には外国企業も中国政府の命令に従わなければならない。マスクの接収は起こるべくして起こったのだ。日本企業のマスクが中国政府に接収され、それを彼らは中国の善意として日本に贈り、日本人が感謝して喜ぶという愚かな構図だ。

 

インフルエンザ薬「アビガン」も見てみよう。

 

安倍首相はコロナウイルスに、富士フイルムホールディングス(HD)傘下の製薬会社、富士フイルム富山化学が販売するアビガンが有効だと語り、同社は3月31日から国内でアビガンの治験に入った。

 

他方中国ではすでに、アビガンの有効成分、ファビピラビルの治験は終了し、中国科学技術省はアビガンの有効性を発表した。

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富士フイルムの中国における特許はすでに切れており、ライセンス契約も終了しているため、中国製のアビガンが世界で大量に使用されても富士フイルムの利益には貢献しない。日本だけでなく、米国も、先進医薬の技術を事実上中国に渡す形で中国とのビジネス関係を結んできた。結局、技術は奪われ、医薬品を中国の供給に頼ることにならざるを得ず、中国に弱みを握られることになる。

 

その結果、何が起きるか。中国共産党の機関メディア、新華社が3月4日に掲げた社説の次のくだりはその意味で注目に値する。

 

「中国は医薬品の輸出規制をすることも可能だ。その場合、米国はコロナウイルスの大海に沈むだろう」

 

まさに国民の命を人質にとった恫喝(どうかつ)である。日本政府も企業も、対中関係に安全保障の要素を加えて考え直さなければならない。まず「武漢ウイルス」に国民の力の結集で打ち勝ち、緊急事態宣言も見直していこう。優しいだけの日本国の建てつけを、憲法を改正してまともな形に直していこう。

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筆者:櫻井よしこ

 

 

2020年4月6日付産経新聞【美しき勁き国へ】を転載しています

 

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