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月周回基地へ新たな任務 日本の新型物資補給機

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国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ新型の補給機「HTV-X」の開発が進んでいる。8月に退役した「こうのとり」の後継機で、設計の改良でコスト低減と性能向上を両立させる。月の周回基地への物資輸送も想定しており、日本の有人宇宙開発で歴史的な役割を担う。

 

 

荷物搭載量1.5倍に

 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、新型機は全長約8メートル、直径約4.4メートルの円筒形。本体の大きさや形状は、こうのとりとほぼ同じだ。開発費は技術の転用などで抑え、こうのとり初号機の3割減となる350億円を見込む。

 

次世代大型ロケット「H3」に搭載し、種子島宇宙センター(鹿児島県)で来年度にも打ち上げる。H3はエンジン開発の不調で打ち上げが1年延期されたが、新型機への影響は最小限にとどめるという。

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9回の任務を全て成功させたこうのとりの実積を基に、より効率的な飛行方法を採用。小型エンジンの数や配管などを減らして約2トン軽量化し、代わりに荷物や燃料の搭載量を増やす。

 

こうのとりと比べ荷物は約1.5倍の約5.8トン、燃料の追加で寿命は約12倍の最大2年に延ばす。従来は機体に張り付けていた太陽電池パネルを翼のように広げて面積を拡大し、電力は約1.5倍に増やす計画だ。

 

 

離脱後も活動可能

 

こうのとりは将来の有人宇宙船につながる豊富な知見をもたらしたが、ISSへの物資補給に特化していた。これに対し新型機は多様な任務を担い、新たな宇宙技術の獲得を目指す。

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打ち上げ後、すぐに太陽電池パネルを広げ、高度約400キロのISSに接近。こうのとりと同じように、滞在中の飛行士がロボットアームを操作してつかんでドッキングさせる。

 

最長で半年間係留し、不用品を積み込んで離脱。その後、こうのとりはすぐに地球の大気圏で燃え尽きたが、新型機はさらに1年半ほど活動できる。

 

人工衛星のように地球を周回しながら地上や宇宙空間を観測するほか、小型衛星の放出や新技術の検証などを行う。ISSに届ける荷物とは別に、離脱後の活動に使う資機材を重さ約250キロまで搭載できる。

 

 

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ドッキングが鍵に

 

さらに大きな目標は有人月探査への貢献だ。米国が主導し、日本などの協力で2020年代半ばの建設を目指す月周回基地「ゲートウエー」に物資を運ぶ。文部科学省は来年度予算案の概算要求に関連経費として約610億円を計上した。

 

日米が今年7月に署名した共同宣言では、日本人宇宙飛行士による月面着陸も盛り込まれた。新型機による物資補給は、日本人が米国の宇宙船に乗って月に行くため支払う「運賃」に相当するもので、その成否は日本の月面着陸の実現も左右する。

 

成功の鍵を握るのは、周回基地に自動でドッキングする技術だ。ISSのようにロボットアームでつかむ場合と比べ、機体が基地にまっすぐ接近するため衝突の恐れが高まるが、事故は絶対に許されない。

 

基地への距離や方角をレーザーで精密に測るセンサーなどの開発が不可欠で、ISSに向かう新型機の2号機でこの自動ドッキング技術を実証する。

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荷物の搬入口の反対側にセンサーや国際標準のドッキング機構などを装着。ISSを離脱後、機体の向きを変えて、再び接近して自動でドッキングするという高度な技術が求められる。

 

新型機開発の責任者の伊藤徳政プロジェクトマネージャは「日本の有人宇宙開発をさらに前進させるため、着実にHTV-Xの開発を進め、活躍の場を広げたい」と意気込む。

 

筆者:小野晋史(産経新聞科学部)

 

 

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