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毒のあるユーモアと癒やし「モルカー」超人気 ストップモーションアニメ復権

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羊毛フェルトのキャラクターが愛らしい、ストップモーション(コマ撮り)アニメ「PUI PUI モルカー」(テレビ東京系、火曜午前7時半~)の人気が爆発している。SNSを中心に熱い話題となるのは、少し毒のあるユーモアと「子供だまし」ではない映像の作り込みだ。23日放送の最終回を前に、専門家は「日本のストップモーションアニメが盛り上がるきっかけになるのでは」と期待を寄せる。

 

 

見逃し配信380万回、海外でも大人気

 

「モルカー」は「モルモット+車」のおかしな日常を描いたアニメで、国内外で受賞歴があるパペットアニメクリエーターの見里朝希(みさと・ともき)監督(28)による作品。子供向けバラエティー番組「きんだーてれび」内で1月5日から全12回の予定で放送されている。

 

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「モルモット+車」という奇妙な取り合わせや、交通渋滞や銀行強盗といったトラブルを引き起こすのは全て人間で、モルカーたちは被害者という“毒のある”構図が初回放送直後から話題になった。

 

モルモットが車になった世界では、トラブルがあってもかわいいから許せてしまう。日常生活から「ゾンビ」まで、さまざまなシチュエーションを楽しもう!というわけだ。1話完結で2分40秒という短さもあって、「人間は愚か」などの書き込みとともに瞬く間にSNSで拡散された。子供向け番組にもかかわらず、その親たちの世代、20~30代を中心に支持を集める。

 

最新話の放送後には毎回ツイッターでトレンド入りし、公式アカウントのフォロワー数は初回放送時点で2千人未満だったのが、今は約40万8千人に。ユーチューブの見逃し配信の再生回数は380万回以上となり、アマゾンプライムビデオやネットフリックスでも配信が決定。また、せりふがないアニメだから国境も越えやすい。台湾では「天竺鼠車車」として地上波で週32回も放送されるなど、大人気になっている。

 

 

画面の全てに意図

 

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「正直、こんな爆発的に人気を集めるとは思わなかった」。モルカーを世に出した「シンエイ動画」の杉山登エグゼクティブプロデューサーは「素晴らしい作品なのは見てすぐ分かった。でも、良い作品が評価されるとは限らないのがこの世界だから」と話す。

 

見里監督の才能にほれ込み作品を売り出すことを決めたが、ネームバリューや人気原作があるわけでもない完全なオリジナル作品。実際、企画を持ち込んでも「当たる保証がない」と出資する会社がなかなか見つからなかった。

 

当初は30分程度の映画的作品の制作を予定していたが、「モルカーのビジュアルがとてもかわいかった」ので、子供向け短尺のシリーズアニメに路線変更。それが手軽に動画を楽しめるSNSの特性と適合し、大ヒットにつながった。

 

杉山さんがうれしいのは、炎天下の駐車場で1匹だけ屋根付きのスペースにいるモルカーに、視聴者が「飼い主に大事にされている」と背景設定に気付くなど、作品世界がよく見られていることだという。「実写ドラマなどとは違って、あの世界に偶然の映り込みはない。見里監督がセットを作るにあたり、全て意図があって配置をしている」

 

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復権の起爆剤に

 

「子供向けだが子供だましではない」と話すのは、映画評論家の小野寺系氏。「画面の情報量がすごい。特に遠くから全体を見たアングルは、風景が破綻しないよう高度な計算のもとで動かされている」という。「アニメを見慣れていない人でもハッとするほど、丁寧に作られているのが分かる」と絶賛する。

 

1コマごとに少しずつ動かして撮影するストップモーションアニメは、ぬいぐるみや粘土など独特の質感を持つ立体キャラクターに適した撮影技術だが、制作に手間と時間がかかることもあり、日本では手描き2Dアニメが主流。またコンピューターグラフィックス(CG)も近年、いっそう高度化している。

 

しかし今回のモルカーの成功は、ストップモーションアニメの豊かな可能性を示したようだ。「今後、クリエーターが注目されることで、作品発表の場が増え、業界全体の裾野が広がれば」として、「日本のストップモーションアニメが盛り上がるきっかけになるのでは」と期待を寄せた。

 

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古い歴史、芸術性も追う

 

ストップモーションアニメは一般的に、1秒間の映像のため12~24枚ほどの写真撮影が必要となる。膨大な作業を伴う制作手法だが、その歴史は古い。小野寺氏によると、「ピングー」や「ウォレスとグルミット」といったキャラクター人気の子供向け商業作品と、チェコ・アニメーションの作家たちのような社会風刺を潜ませ、国際映画祭などで高い評価を得るアート系の作品という2つの系譜があるという。

 

モルカーの場合、「初見は表情豊かなぬいぐるみのかわいさに引き込まれ、繰り返し見ているうちに作り込まれた世界観や毒に気付かされる。どちらの流れもくんでいる」。商業的成功と芸術性を両立させたオリジナル作品として、「アニメの歴史に名を残すだろう」と話した。

 

筆者:三宅令(産経新聞文化部)

 

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