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真珠湾攻撃80年 「証言者なき時代」の戦争研究 声紋解析で人物特定を

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日米戦争の発端となった昭和16年の真珠湾攻撃から、8日で80年を迎えた。成算が危ぶまれていたこの作戦はなぜ決行され、そこから何を教訓とするべきなのか。日本海軍史研究の第一人者として知られる大和ミュージアム館長の戸高一成さん(73)に、これまでの研究状況と、当事者取材が不可能になった時代の研究のあり方を聞いた。

 

 

Pearl Harbor, on December 7, 1941.

 

真珠湾攻撃では、米太平洋艦隊の本拠地であるハワイの真珠湾に対し、航空母艦6隻と航空部隊を中心とした日本海軍の機動部隊が奇襲をかけ、戦艦4隻撃沈などの大戦果を挙げた。

 

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戸高さんは「戦争の発端となった重要なできごとなので、戦中から日米双方で調査が行われているし、戦後の米歴史家ゴードン・プランゲによる『トラトラトラ』といった大著もある。比較的早い時期から、全体像の9割方は明らかになっていた」としつつ、「作戦そのものよりも、なぜあの作戦が許可されたのか、という点が長いあいだ問題となってきた」と話す。

 

Japanese bombers used armor piercing projectiles to sink the USS Arizona and other ships in Pearl Harbor on December 7, 1941.

 

海軍は明治末以来、日米戦争の際は日本近海で米艦隊を迎え撃つことを前提に戦力を整備しており、太平洋中部のハワイまでの長駆侵攻は想定外だった。真珠湾に向かった艦隊も、各艦の燃料以外に大量の燃料入りドラム缶を積むなどの無理をして出撃している。海軍の作戦指揮を担う軍令部が猛反対するこの危険な作戦の実施を、自らの職をかけて強硬に要求したのが連合艦隊司令長官の山本五十六だが、戸高さんは「果たしてどこまで本気だったのか」と疑問を向ける。

 

「もともと山本は日米開戦自体に反対の立場。しかし軍人の弱さで、負けるからできないとは言えない。文書的な資料がないので推測になるが、山本は対米戦争をしたくないがために、真珠湾攻撃という無理なことを言い出して諦めさせようとしたのではないか」

 

真珠湾攻撃から80年となる12月7日、第二次大戦記念碑を訪問するバイデン米大統領

 

だが、最終的には軍令部が折れる形で作戦の実施が決まった。戸高さんはそこに、現在も続く日本的組織の意思決定の問題をみる。

 

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「まず、はっきりダメだと言えなかった山本の弱さが第一。次に、山本がそこまで言うならやらせてみようと流された軍令部首脳の責任も大きい。海軍のトップと現場のリーダーの両方が自分の真意を正直に言わなかったために、うやむやのうちに決行されてしまったというのが実態だろう」

 

Japanese bombers used armor piercing projectiles to sink the USS Arizona and other ships in Pearl Harbor on December 7, 1941.

 

米側もハワイまで日本艦隊が出てくるとは予想しておらず、敵の油断もあって作戦は結果的に大成功を収めた。しかし、「一番いけないのがその後で、機動部隊を出せば勝てると安易に使いすぎ、作戦が雑になっていった。真珠湾の成功が、半年後のミッドウェー海戦での大敗をもたらしたといっても過言ではありません」。

 

ハワイのアリゾナ記念館での追悼式

 

戦後76年が過ぎ、これから従軍体験者に取材することが不可能な時代になっていく。戸高さんは、「新しい証言は取れなくなりますが、当事者がうそを言い出して邪魔をするようなこともなくなる。歴史上の出来事として冷静に見直すことができるようになるなど、悪いことばかりではない」と述べ、今後の戦争研究の展望を語る。「歴史学の対象として文献調査を徹底していくのはもちろんですが、映像や音声などを歴史資料として扱う方法をきちんと確立しなければ。たとえば戦後に旧軍人らが行った会合を録音したテープだけが残り、発言者が誰か分からなくなっているものがたくさんある。データを蓄積して声紋を解析し、人物を特定するような研究も必要ですね」

 

 

戸高一成(とだか・かずしげ)
昭和23年、宮崎県生まれ。財団法人史料調査会理事、昭和館図書情報部長を経て平成17年から現職。令和元年、編著書『[証言録]海軍反省会』全11巻で菊池寛賞。著書に『日本海軍戦史』など。

 

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2021年12月8日産経ニュース【学芸万華鏡】を転載しています

 

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