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自衛隊ヘイトを乗り越えて

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成人の日(1月11日)の2日後、産経新聞の那覇支局に、陸上自衛隊那覇駐屯地の広報担当者から電話があった。

 

「15日に隊員の成人式を行います。取材に来ませんか」

 

その日は、玉城デニー知事の定例会見がある。丁重にお断りすると、別の幹部から再び電話が鳴った。

 

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「何とか来られませんか。感動すると思いますよ」

 

もう一度天秤(てんびん)にかける。今度は自衛隊に傾いた。

 

 

隊員は門前払い

 

そして15日。取材に行って正解だった。感動したのだ。那覇市長をはじめ地元自治体の首長が、初めて祝賀メッセージを寄せたからである。

 

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それがなぜ「感動」なのかは、沖縄の自衛隊の、苦難の歴史を知れば分かろう。

 

およそ50年前、昭和47年の本土復帰とともに那覇に駐屯した自衛隊は、革新勢力から激しいバッシングを受けた。

 

自治体の労組などが駐屯地前でデモを繰り返し、「人殺し部隊は本土に帰れ」「軍靴で沖縄を汚すな」と罵声を浴びせるなんて序の口だ。自衛隊員の住民登録を拒否する、電報を受け付けない、体育大会への選手参加を認めない-等々、基本的人権すら踏みにじられた。

 

隊員だけでなく家族も差別され、子供が学校の入学式や始業式に参加できなかったケースもある。

 

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中でも問題となったのが、隊員の成人式への出席阻止だ。那覇市は昭和50年、「会場が混乱する恐れがある」として自衛隊に出席辞退を要請。52年には当時の革新系市長が「自衛隊は招かれざる客」と発言し、正式に出席を拒否した。

 

那覇市は54年、人権侵害との批判を受けて方針を改め、隊員に招待状を送るようになる。しかし今度は自治労、市職労、革マル派などが過激な妨害活動を繰り返した。

 

会場入り口に労組員らが陣取り、女性はそのまま通すが、男性はチェックし、隊員と分かれば罵声を浴びせて追い返すというやり方だ。

 

当時の新聞報道によれば、労組員らに囲まれた隊員が「一生に一度のことだ。一人の人間として参加したい」と訴えても、門前払いされた。

 

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制服着用も自粛

 

こうした妨害活動は平成に入ってからも続く。規模は縮小しつつも11年ごろまで抗議集会などが毎年開かれた。那覇市の成人式は15年以降、市主催から実行委員会形式に変わるが、その時ですら自衛隊に、制服着用での参加自粛を求めたほどだ。

 

このため自衛隊は長年、駐屯地内でひっそりと成人式を開いてきた。

 

憲法第14条は人種、信条、性別などいかなる差別も禁止し、第22条は職業選択の自由を保障する。

 

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自衛隊をヘイト(憎悪)してきた革新勢力が、護憲派を名乗るのは噴飯である。さらに彼らが最近、ヘイトスピーチ禁止条例づくりに躍起になっているのだから唖然(あぜん)とするほかない。

 

 

来年はこの人に

 

と、そんな歴史があるだけに、陸自那覇駐屯地で開かれた今年の成人式は感動的だった。新型コロナウイルス禍のためビデオによるメッセージとなったが、地元首長が初めて祝賀を寄せた意義は大きい。

 

危険な不発弾処理や夜間の緊急患者空輸など県民の命を守る長年の活動が、イデオロギーを超えて認められたといえば、少し大げさだろうか。

 

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残念なこともある。自衛隊への感謝を表明した沖縄市長や南城市長のメッセージに比べ、那覇市長のそれが、何とも上から目線なのだ。

 

こんな調子である。

 

「新成人の皆さんには、これから大人として責任ある行動が求められます。周りの方々への感謝の気持ちを忘れることなく、節度と品位を持った社会人になってくれることを切に願います」

 

まるで、親のすねをかじる大学生らを諭すような口ぶりだ。すでに部隊の原動力として活動する二十歳の隊員には、いささか失礼だろう。

 

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ここはひとつ、この人にお手本を示してもらいたい。玉城デニー知事だ。

 

玉城氏は昨年、豚熱と新型コロナ対策で自衛隊に計4回の災害派遣を要請した。

 

今年の成人式にはメッセージを出し忘れたようだが、コロナ禍が収まった来年には自ら出席し、感動的スピーチを披露してくれるに違いない。

 

筆者:川瀬弘至(産経新聞論説委員)

 

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2021年1月24日付産経新聞【日曜に書く】を転載しています

 

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