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[香港改造]~5~ 議場に中国国章 社会を覆う共産党の影

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「中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くします」。香港立法会(議会)で今月3日、90人の議員が1人ずつ宣誓を行った。

 

議場正面の壁には香港の区章の代わりに、大きな中国の国章が掲げられた。

 

その下で宣誓文を読み上げたのは、民主派が排除された昨年12月の選挙で当選した89人の親中派と1人の中間派議員だ。

 

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Newly elected pro-Beijing lawmaker Junius Ho, left, takes his oath in front of Chief Executive Carrie Lam during the oath-taking ceremony of the legislative council in Hong Kong, Monday, Jan. 3, 2022. (AP Photo/Kin Cheung)

 

宣誓者の中に、親中派最大政党、民主建港協進連盟(民建連)副主席の周浩鼎(しゅう・こうてい、42)がいた。その選対本部で指揮を執ったのが巫成鋒(ふ・せいほう、35)である。

 

見違えた。少しふっくらとした顔に自信がみなぎっている。前回会ったのは2019年11月の区議会選のとき。巫は民建連から出馬し民主派候補に敗れた。

 

覚えている光景がある。当時は、普通選挙と「香港人による香港統治」の真の実現を求める民主派のデモが盛んな時期だった。親中派候補の巫が街頭でチラシを配っていると、さっと駆け寄って小声で言葉を掛ける支持者らがいた。悪いことでもしているかのように、周りを気にしていた。

 

あれから2年余り-。

 

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「中国政府とは運命共同体です。国家が栄えれば、香港も発展する」。その主張に変わりはなかった。

 

Mr. Fu Seiho stands in the doorway of his office in Hong Kong in 2019. His term of office on the ward council continues until the end of 2019. (Photo by Sankei)

 

「選挙で負けたときは悔しくて、これからのことが不安だった。でも新型コロナウイルスの感染が広がると、それどころではなくなり、地域の市民サービスに力を尽くしてきたのです」

 

巫は昨年9月、政府トップの行政長官や立法会議員の一部を選出する「選挙委員会」(定数1500)のメンバーに選ばれた。

 

□ □

 

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昨年11月下旬。香港国家安全維持法(国安法)違反の罪で起訴された民主派47人の公判を傍聴した。

 

国安法の裁判は、行政長官の林鄭月娥(りんてい・げつが)が指名した判事が担う。これまで政府寄りの訴訟指揮や判決が目立っていたので、廷内は静まり返っているのかと思いきや、まるで違っていた。

 

民主活動家の黄之鋒(25)や戴耀廷(たい・ようてい、57)ら47人が陣取る被告席と傍聴席から、弁護人の陳述に、やんややんやの歓声や拍手が送られたのだ。廷吏が注意しても騒然とした雰囲気は収まらなかった。

 

対照的に、香港社会は静まり返っている。

 

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Images of Goddess of Democracy statue are placed by students, to pay tribute to the victims of the Tiananmen Square crackdown in Beijing on June 4, 1989, at the place where the statue used to stand, at the Chinese university of Hong Kong, after been removed by school authority, in Hong Kong, China, December 24, 2021. REUTERS/Tyrone Siu

 

巫が敗れた区議会選で当選した民主派候補たちの中に、売れない俳優だった冼錦豪(しょう・きんごう、32)がいる。

 

その後、国安法の施行で民主派への締め付けが強まり、悩んだ末に区議を辞職、映画を勉強することにした。香港を離れるという。「民主派区議」の経歴が、今の社会ではマイナスにしかならないからだ。

 

「一見すると、香港は平穏になった。でも、抑圧される市民には発散する手立てがない。どういう形か分からないが、いずれ不満が爆発するのではないか」

 

区議として19カ月間、地域住民の声に耳を傾け続けた冼はこう占った。

 

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西洋式建築が残る繁華街の一角に、民主派を支持してきたレストランがある。19年のデモ当時は民主派市民らのたまり場だった。

 

「信念を撃ちぬくことはできない」。店のメニューの余白には今もデモのスローガンが記されている。

 

店を切り盛りする30代の女性は古き良き香港を振り返る。「香港は西洋と東洋の文化が交じり合ったところ。自らの権利が何かを知りそれを主張する西洋と、ルールを順守する東洋の良さを兼ね備えていた…」

 

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Hong Kong people line up to vote in the last free local election (November 24, 2019, Sankei)

 

現在は、「愛国者による香港統治」を狙う中国共産党によって自由が奪われ、中国の専制主義が香港を覆いつくそうとしている。

 

「店で政治の話をする人はもういません。生きるため、生活するために、今は静かにしているんです」

 

しかし客の中には、店を出るときに小声で「頑張って」「頑張ろう」と言葉を掛ける人もいるという。

 

19年の区議会選当時とは全く逆の光景が、現在の香港社会に広がっている。偶然ではない。民主主義と専制主義の戦いの最前線となった香港の宿命である。

 

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西洋と東洋の文化は共存できても、民主主義と専制主義の共存はあり得ない。香港人たちが自らの犠牲をもって世界に教えてくれたのは、そのことだ。

 

自由と民主の〝墓標〟だけが増えていく。

 

(敬称略)=おわり

 

筆者:藤本欣也(産経新聞)

 

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2022年1月16日付産経新聞【香港改造】(全5回)を転載しています

[香港改造]~1~ リンゴは自由の墓場となった

[香港改造]~2~ スパイが浸透するメディア界

[香港改造]~3~ 中国式教育で子供を洗脳せよ

[香港改造]~4~ 出所した若者たちの苦悩

この記事の英文記事を読む

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