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国会で与党議員が中国論議

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日本にとっての中国の動向がますます重みを増してきた。コロナウイルスの感染しかり、中国の武装艦艇の尖閣領海への侵入しかり、である。だが日本の国会ではふしぎなほど中国について語らないという異様な現状についてこのコラムで書いた。

 

ところがきわめて珍しいとはいえ、日本の国会でも中国についての議論が展開されることがあるという事実を知った。しかもつい最近、質疑もかなり鋭い内容だった。公正を期すという意味もこめて、この中国論議を報告しておこう。もっと、もっと、という声援をこめながら、である。ごく短時間の論議だったからだ。

 

この中国論議は6月2日午前、参議院財政金融委員会で起きた。委員の1人の有村治子参議院議員(自民党)が中国に関する発言や質問をしたからだった。ただしこの質疑応答も全体で24分だったから、日本の国会での本格的な中国論議からはほど遠いといえよう。だが中国をテーマとする論議があったことは朗報だといえる。

 

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有村議員は参議院全国区選出、当選4回というベテランに近い政治家である。すでに閣僚経験もあり、国際問題、外交政策に関してはこれまでも積極的な発言、提言をしてきた。

 

有村議員はこの委員会では冒頭発言でまずいま日本を襲う新型コロナウイルスについて明確にその発生を中国に結びつけて言明した。

 

「いままさに世界を震憾させている新型コロナウイルス禍は、社会が抱える諸問題をあぶり出し、構造的な変化を加速させます。その主たる課題の一つが、発生源、感染症の発生源である中国がどのような言動をするのか、また、日本や世界が大国・中国とどのように向き合うべきなのかという構造的問題であります」

 

コロナウイルスが中国の武漢で発生したことは世界の常識だといえる。だが日本の国政の場ではその簡明な事実がなかなかストレートには語られない。一部のメディアも同様である。中国への忖度だろう。だが有村議員はこの点、淡々と世界の常識を述べていった。

 

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有村議員はそのうえでオーストラリア政府がコロナウイルスの発生の実態を調査することを提案して、中国政府から激しい反発を受けていることを報告し、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国寄りの言動をとりすぎて非難されたことを伝えた。

 

そしてさらに中国政府が近年、国連関連の国際機関のトップの地位を自国出身者や自国の影響下にある人物に獲得させるキャンペーンを進めていることを警告をこめて報告した。

 

有村議員は中国政府の国際機関への影響力行使作戦を批判的に説明し、では日本政府はこの状況をどうみるのか、と質問した。政府側は外務副大臣の鈴木馨祐氏が「注意を払っているが、日本政府として具体的な措置はとっていない」という趣旨の答弁をした。

 

そこで有村議員は中国政府の「千人計画」について提起した。「千人計画」とは中国政府が各国の理工系の優秀な学者、技術者を給料面などの最高待遇で中国の研究機関に迎え、軍事関連の技術の向上などを図る計画である。アメリカでは議会上院の複数の委員会が「アメリカの軍事技術の不当な流出につながる」として警告を発していた。

 

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アメリカでは自国民がこの「千人計画」に加わる場合、政府への報告を義務づけている。有村議員がこの点を政府側に尋ねると、日本にはまったくその種の規定はなく、日本政府は「千人計画」と日本人研究者とのつながりなどは把握していないことが政府委員から答弁された。

 

有村議員は日本側での年来の軍事研究禁止についても中国の軍事脅威への懸念をにじませながら発言した。

 

「まさに米中が非常に神経戦を展開している中で、日本学術会議では、安全保障分野、軍事転用が可能な分野の先端技術を自己規制し、忌避されている。その一方で、日本の技術や教育資源によって培われた最先端技術を持つ研究者が研究技術を軍事転用することを是認し、すでに奨励をしている他国の国家戦略の中枢に担がれ、結果として、日本の安全を脅かしたり、日本企業の競争力、先端非術の開発力、防衛力が 不当にそがれるようなことがあったとしたら、これは国民の命と健康と財産を守る日本の力が一気に落ちることを意味します」

 

遠回しながら、日本の学術会議の二重基準や日本政府のその許容を批判する形となった。

 

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そして最後に有村議員は安倍政権がなお進めようとしている習近平国家主席の国賓招聘に対して、反対の意見を表明したのだった。

 

「このコロナ禍においても、沖縄県の尖閣諸島沖で領海侵入を繰り返し、日本の漁業者を追尾し威嚇する暴挙に出ている中国のどこが国際協調なのか、日中友好なのか、正直なところ、理解に苦しみます」

 

「先日、自民党の中山外務部会長が官邸に申入れたとおり、このような状況にあっては、改善がみられない限り、国賓、すなわち天皇陛下との拝謁がなされる日本国としての最高の賓客として習近平主席を歓迎する機運なんてとてもじゃないという主権者の声、国民の声が少なくありません。大国・中固としての誠実な対応なかりせば、国賓待遇は慎重にも慎重に再検討すべきだとの意思を明確に議事録に残して、私、有村治子の質問を終わります」

 

日本の国会でもこうした声が発せられることは多くの日本国民が知ってもよいだろう。私の知る限り、同議員の発言は一般メディアで報じられることはまったくなかった。

 

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筆者:古森義久

 

 

2020年6月10日「Japan In-depth」の記事を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

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