fbpx
Connect with us
Advertisement

【主張】藤井新棋聖 将棋界の枠超えた活躍を

Published

on

 

将棋の高校生棋士、藤井聡太七段が7月16日、第91期棋聖戦五番勝負を制し、初タイトルとなる棋聖位を手にした。
17歳11カ月でのタイトル獲得は、屋敷伸之九段が平成2年8月に打ち立てた18歳6カ月を大きく更新する史上最年少記録である。

 

しかも、相手は「現役最強」と言われる渡辺明前棋聖だった。第一人者を堂々と押し切っての快挙に拍手を送りたい。

 

今回の五番勝負では、若者の斬新な着想に何度も驚かされた。その一つが、第2局の序盤で指された「5四金」だ。守備駒の金将を攻めに繰り出す意表の一手は、ニュース番組でも報じられた。

 

常識にとらわれていては浮かばない手で、大一番で用いた決断力も見事だった。

Advertisement

 

本来なら趣味の領域である盤上の一手が社会的な関心事となったのは、新棋聖の若さだけが理由ではあるまい。人工知能(AI)全盛の時代にあって、人間の知能が秘めた可能性を身をもって示してくれたからではないか。

 

AIは人間の思いもよらぬ選択肢を示し、ここ数年で将棋の定跡と常識を大きく変えた。藤井新棋聖は序盤や中盤の戦術研究にAI搭載のソフトを活用しながらも、自身の判断力を磨く作業を怠らなかったという。

 

五番勝負で何度も見せた1時間を超える長考は、結論を急がず、答えに至る過程を大事にしたいという信念の表れだろう。速度重視に傾く現代社会が忘れかけたものを新棋聖は教えてくれた。

 

AIがいくら強くても感動は呼ばない。人は誤った手を指すこともあれば震えもするが、そこには人間ならではの感性や感情、価値観が映し出される。

Advertisement

 

対局者が至近距離で火花を散らし、一手一手に苦悩する姿は、見る者の胸を強く打った。惜しくも失冠した渡辺前棋聖の鬼気迫る表情を通して、勝負の厳しさを知った人も多かったはずだ。

 

「棋聖」は異才として鳴り響いた江戸末期の棋士、天野宗歩をたたえた称号である。昭和37年に産経新聞が創設した棋聖戦は、数々の名勝負の舞台となり、今年は新たな歴史の証人となった。

 

藤井新棋聖は歩みを止めることなく、由緒あるタイトルの価値をさらに高めてほしい。現代の知性を代表する人として、将棋界の枠を超えた活躍も期待したい。

 

Advertisement

 

2020年7月17日付産経新聞【主張】を転載しています

 

この記事の英文記事を読む

 

 

Continue Reading
Click to comment

You must be logged in to post a comment Login

Leave a Reply

Our Partners