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【主張】コロナ下の祭り 祈りや願い考える機会に

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新型コロナウイルス禍を受けて、祭りやそれに伴う恒例行事の自粛が続いている。こんなときこそ祭り本来の意味を考え、先人の祈りに思いを致す機会にしたい。加えて付随する伝統行事や芸能文化の灯を絶やさぬよう目配りも必要だ。

 

この夏、日本三大祭りに数えられる京都・祇園祭の鉾山(やまほこ)巡行や大阪・天神祭の船渡御が相次いで中止となった。東北三大祭りの青森のねぶた、秋田の竿燈(かんとう)、仙台七夕も中止だ。

 

郷土色豊かな祭りは地元活力の源であるだけでなく、観光資源として地域振興に重要な役割を果たしてきた。「3密」回避のためにはやむを得ないが、地域経済にとっても文化振興面でも痛手だ。

 

まずは来年の開催に向けて資金や人材を確保し、必要ならば自治体や地元の支援などで態勢を整えたい。例えば祇園祭山鉾連合会が活動資金を募るため行ってきたクラウドファンディングで、今年はこれまでで最も多い1500万円超が集まった。このように広く援助を求めるのも手だろう。

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一方で神社などの神事自体は今年も粛々と営まれている。祇園祭は八坂神社の祭礼だが、神輿(みこし)渡御も神輿の代わりに今年は祭神を遷(うつ)した榊を馬の背に立てて進んだ。神事は続けられている。

 

古来、京都や大阪などの大都市では、人口密度の高さゆえに流行しがちな疫病の退散を祈って祭りが始まった。背景には、災害やはやり病は怨霊のたたりと考えた御霊(ごりょう)信仰がある。祇園祭は平安時代の貞観年間に始まったとされ、疫病は政争に敗れた人々の怨霊の仕業と考えた。天神信仰も元は菅原道真の怨霊である。それらを奉って鎮めたのが根源なのだ。

 

祇園祭宵山の歩行者天国も天神祭恒例の花火もない静かな夏である。だから人々が神事に託した願いについて改めて考える。そんな落ち着いた時間を過ごしたい。

 

祭りではないが、今月16日に行われる京都の伝統行事「五山送り火」も規模が縮小されることになった。山を背景に「大」などの文字や形を炎で描き、大勢の見物客でにぎわう風物詩だが、本来はお盆で迎えた先祖の霊を再び霊界に送る送り火である。

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ならば、にぎわいより祈りに心を寄せ、家族や友人と静かに過ごしてみてはどうだろう。自宅で小さな送り火をたいてもいい。コロナ退散を願いつつ。

 

 

2020年8月9日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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