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開業50年、これからの鴨川シーワールド

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バンドウイルカ「スリム」と国内初の人工授精で生まれた「サニー」の誕生直後の様子(2003年7月19日撮影)

1970年10月1日の鴨川シーワールド開業日の正面ゲートの様子

 

千葉県鴨川市にある鴨川シーワールドは1970年10月1日に開業し、今年で50年を迎えました。この節目の年に新型コロナウイルス感染症の世界的流行と、その影響によって4・5月の大型連休を含め、約2カ月間も臨時休館することになるとは想像すらしていませんでした。しかし、この間、われわれは可能な限り、通常と変わらない動物たちへの飼育管理を心がけ、あえていつも通りのショーを(もちろん無観客で)実施したりもしました。幸い従業員の感染はもちろん動物たちへの影響もなく6月からは段階的に営業を再開することができました。

 

誕生直後のシャチ「ラン」と母親「ステラ」(中央2頭)を囲んで泳ぐ2頭の姉「ラビー」と「ララ」(2006年2月25日撮影)

現在、行われている鴨川シーワールドのシャチショー

開業年の1970年10月に行われたシャチのショー

 

なかなか再開の目途が立たず、不安の大きかった休館期間でしたが、悪いことばかりが続いたというわけではありません。時間と手間をかけてトレーニングを集中的に進めることができたほか、このコロナ禍の無観客ショーは経験の浅いトレーナーや動物にとって絶好の練習機会となりました。

 

特に実施時刻が決められているショーや来館者向けの参加体験プログラムは、時間的な制約を気にせずに済ますことができました。館の様々な作業に余裕が生まれただけでなく、変化の乏しい動物たちの飼育環境に、いつ何時に何が始まるかわからないという刺激が加わったことは、動物たちの精神的な健康維持という点で良い変化をもたらしました。

 

飼育動物の生活の質の見直しは今、多くの動物園・水族館でその取り組みが始まっています。世界の動物園・水族館は、動物福祉基準の導入による飼育動物の生活改善を重要課題に掲げており、動物の栄養、環境、健康、行動それぞれの状態とそれらが動物の精神に及ぼす影響を評価して、より良い動物福祉の状態の促進を目指しています。

 

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残念ながら日本には動物園・水族館の運営を管理する主務官庁が設置されていません。そのため、施設の設置から始まり、展示生物の入手、動物福祉に大きく関わる飼養施設の規模や管理ならびに展示の要件など、動物園・水族館における一連の活動を包括的に規定した法律もありません。

 

数年前に論争を起こした「イルカ問題」で反対派との相互理解を通じた解決を難しくしたのは、イルカの入手(追い込み漁)における動物福祉上の懸念に対し、この正当性を適正に説明する法体系が、食糧としての水産資源管理を規定したものしか存在しなかったことも要因と考えられています。

 

               母親「ムック」に甘える日本で初めて生まれたセイウチ「チャッキー」(1996年6月19日撮影)

 

国内法がないため、ほとんどすべての種において海外の法令などを参考にして動物福祉基準作りが進められていますが、数年内には新基準の下で評価が行われる見通しです。

こうした国内全体での作業のほかに、鴨川シーワールドは今、独自の目標として、動物福祉と人道的な扱いを国際規格で審査する組織による認証の取得を目指しています。製品やサービスを環境への配慮、持続可能性、倫理的な正しさなどに基づいて認証する制度の動物版と言え、世界の状況に目を移してみると、すでに多くの園館が認証を取得しています。

 

今回、われわれが経験したようなパンデミックの中にあっては、動物園・水族館は「不要」という意見があったかもしれませんが、鴨川シーワールドがコロナ後の社会にも、必要とされる場所であるために、上に紹介した取り組みを通じて多くの方々の支持を得られる水族館を目指したいと考えています。

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このことは、開業50年の節目を機に強く抱く、私たちの切なる願いでもあります。

 

著者:勝俣 浩(鴨川シーワールド館長)
1962年10月16日生まれ(57歳)
1987年 鴨川シーワールド入社
2016年~館長(飼育支配人)
千葉県鴨川市出身
元ラガーマン

 

この記事の英文記事を読む

 

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