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中国、国連データにも触手

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「人類の行動を解析」

 

中国が国連で影響力を強めている。中国出身者がトップの国連専門機関は15機関中、4機関に上る。国連を軽視するトランプ米政権が加速させた「米国不在」の隙をうかがってきた中国は、意外なところにも手を伸ばしている。

 

 

国連初のビッグデータ研究所の設置計画が中国浙江(せっこう)省杭州市で進んでいる。飢餓や気候変動など地球規模課題の解決を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する膨大なデータを世界から集めて分析することで、国連の事業に役立てるという触れ込みだ。

 

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気になるのは、中国の研究者が「人類の行動」に関するデータ解析も必要だとしていることだ。中国へのデータ流出を嫌う米国は計画に警戒を強める。米ハドソン研究所研究員のクローディア・ロゼットは米紙への寄稿で、中国が加盟国からデータを集めたり、データ収集に関わる基準を設定したりすることが可能になると警鐘を鳴らす。

 

「国連マークが持つ正当性は、中国共産党のハイテク専制政治を世界に投影することをより容易にする」

 

SDGsを推進する国連経済社会局担当の事務次長は2007年から中国出身者の指定席になっている。

 

現職の劉振民(りゅう・しんみん)は外務次官も務めた元外交官だ。劉が補佐する国連事務総長のアントニオ・グテレスは19年4月に訪中し、SDGsと中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が「つながっている」と明言。中国はSDGsまでも覇権追求の手段にしようとしている。

 

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人権理が弾圧支持

 

米ニューヨークの国連本部。1970年代から大国の攻防を見つめてきた国連職員は「中国はここ10年で非常に国連外交に積極的になった」と話した。

 

中国は2010年、国内総生産(GDP)で日本を抜き米国に次ぐ世界2位に。中国国家主席の習近平は13年9月、巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱し、米大統領だったバラク・オバマは同月、「米国は世界の警察官ではない」と宣言する。「ここ10年」は中国が大国としての自信を強めた時期と重なる。

 

国連(国際連合)は第一次大戦後にできた国際連盟が第二次大戦を防げなかった反省から1945年10月に発足。第二次大戦の戦勝国である米国、ソ連(現・ロシア)、中国、英国、フランスの5カ国が安全保障理事会常任理事国として拒否権を持ち、大国の利害で左右される弊害が指摘されてきたものの紛争防止や保健衛生に役割を果たしてきた。

 

だが、国連の創設を主導した米国は、トランプ政権が国連機関からの脱退を次々と決めた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連人権理事会、世界保健機関(WHO)…。

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2018年に米国が脱退した国連人権理事会では20年6月、中国が施行した香港国家安全維持法を支持する声明をめぐり53カ国・地域が賛同。これに対し、懸念を示す国は27カ国にとどまり、香港への弾圧を支持する国が大きく上回った。

 

米国がWHO脱退を決めたのは、事務局長のテドロス・アダノムの「中国寄り」の姿勢が原因だった。中国から多額の援助を受けるエチオピア出身のテドロスは、新型コロナウイルス発生をめぐる隠蔽を追及するどころか、中国の対応をたたえるばかりだった。ただ、米国が多国間協力に背を向け、司令塔となるべきWHOの指導力不足を露呈したことはワクチン開発に禍根を残した。

 

 

資金不足が常態化

 

ワクチンを共同購入し、途上国・貧困国に行き渡らせる国際的枠組み「COVAX(コバックス)」。現在はWHOが主導し、189カ国・地域が参加する仕組みは、米マイクロソフト創業者で慈善事業家のビル・ゲイツ(65)の構想を基に実現した。

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大国が開発したワクチンを抱え込む「ワクチン帝国主義」に陥れば貧困国は後回しになりかねない。その是正に最大の役割を果たしたのは国際機関ではなく一人のIT長者だった。欧州の国連機関幹部は「国連は元来、政府間機関であり、個人が国家をしのぐ発言力を持つようになれば、国連創設の理念から離れてしまう」と嘆いた。

 

国連機関では資金不足が常態化し、中国や「個人」の存在感が強まる。最大の拠出国である米国がトランプ政権下で関与を弱め、その流れを加速させた。

 

バイデン次期政権は国際協調に回帰するだろうが、中国が国連を権力政治の舞台とし、米国の地位低下を狙う構図は変わらない。

 

国連が代表してきた多国間主義は再生できるのか。デンマークの元首相で北大西洋条約機構(NATO)前事務総長、アナス・フォー・ラスムセンは昨年12月、米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、日本を含む民主主義国家の連携で多国間主義を再建する必要があるとし、次のように説いた。

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「米国が世界の指導者から後退し、自由も後退した。民主主義の自信喪失という西側の病から回復するため、民主主義国家の同盟を構築するときだ」

 

日本が傍観者であってはならない。

 

 

2021年1月4日付産経新聞【自由 強権~21世紀の分岐点】(3)を転載しています

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