【正論】天皇が男系男子の理由を説く

 

日本には女性の天皇が即位された例が10例ある。うち2例は「重祚(ちょうそ)」(一度譲位した天皇が再び即位すること)なので、実質8人である。そのうちの6人が6~8世紀に集中しており、初めての女性天皇は推古天皇だ。なぜこの時代に女性天皇が多かったのか。

一説には、蘇我氏や藤原氏といった有力豪族の血がいくつも皇室に入っていた。権力闘争のあおりを受け、次期の男系の天皇が決まらず、女性天皇で中継ぎするケースが多かったからだという。

もっともこの時代にも天皇が若くして崩御。皇位継承順位の1位にあたる親王が幼いために皇后が代理でつなぐケースもあった。親王が生まれるまで女性天皇が中継ぎしたこともある。女性天皇の残る2例は17~18世紀だ。

 

 

時を超え変化なく受け継がれ

 

ここで注目すべきは、女性天皇は存在したが、女系天皇は一人も存在しなかったということだ。女性が中継ぎとして天皇の座につくことはあっても男系でつないできた。男にしかなく父から息子へと受け渡される性染色体Yについては途切れるとか、別のものに変わるということはなかったのだ。

人間は22対の常染色体と一組の性染色体を持っている。性染色体は女でXXで、男でXYという状態だ。常染色体と、女の性染色体の場合は対になっているので生殖細胞がつくられる際に交差が起きる。染色体のどこかに切れ目が入り遺伝子を交換するのである。

ところが男の性染色体であるXとYは、対になっていない。そのため交差が起こらないのだ(ただし厳密には、最末端部分では交差が起きるが、その他の部分では起きない)。よってYは父から息子へまるまる一本、ほとんど変化することなく受け継がれる。

日本の皇室では少なくとも、そして知りうる限り、千数百年にわたり、ほとんど同じYが受け継がれている。Xや常染色体上の遺伝子は交差などによってばらばらとなるなど、世代を経るごとに変化するのに対し、Y上の遺伝子はしっかりと保存されているのだ。

 

 

遺伝学のない時代から

 

過去の歴史において天皇に男子が生まれないとか、生まれても夭逝(ようせい)する、しかも天皇に兄弟がいないなど、天皇の近い血縁に男系の男子が存在しないことがしばしばあった。その際、系図をたどることにより確かに男系である男子、今で言う皇室のYを受け継いでいる男子に皇位を継承させている。

染色体も遺伝子も何らわかっていない時代に、なぜそんな的確な判断がなされたのか不思議だ。もしかすると父から息子へは特別な何かが伝えられる、と皆が共通して認識していたのかもしれない。

ともあれこのように日本の皇室は千数百年にわたり、ほとんど同じYを継承している。こんな国はどこにもない。

イギリス王室にしたところで、1066年に、フランスの一諸侯だったノルマンディー公に始まる、千年にも満たない歴史があるのみ。しかも女王がたつと、たいていはその息子が次の王となり、Yは女王の夫君のYにとって代わられる。かの国の人々にもそのことがわかっているのだろうか、Yが変わると王朝名も夫君にちなんだ名に変わる。

ちなみに現在のイギリスの王朝名はウィンザー朝だが、この名には少々訳がある。1901年、ヴィクトリア女王が亡くなり、長男のエドワード7世が王位についたとき、王朝名は女王の夫君、アルバート公のドイツの実家にちなんだものとなった。しかし第一次世界大戦で英独が敵国となったため、城の名をとり、ウィンザー朝と改められたのである。

 

 

最強のYとその継承の歴史

 

我々は千数百年間も受け継がれてきた皇室のYを決して手放してはいけない。どの国が、どう逆立ちしても敵(かな)わない、最強のYとその継承の歴史を我が国は持っている。天皇陛下となられるお方は、男系でなくてはならないのだ。

その男系が危ういことになっているのは周知のとおりである。次の世代で皇室のYをお持ちであるのは、皇位継承順位1位の秋篠宮さま、2位の悠仁さまのみである。悠仁さまに、もし男子の誕生がなかったら、この国の歴史も権威もおしまいなのだ。

一つの光明は、戦後にGHQ(連合国軍総司令部)によって廃絶となった旧宮家である。この宮家のなかに皇室のYを持っておられる方々がおられる。いや、そもそも男系の維持のために旧宮家は存在していたのであり、皇籍離脱をしたから今、男系の危機が訪れているのだ。

新元号、「令和」は歴史上初めて中国の古典ではなく、日本の古典である「万葉集」からの引用で決まった。脱、中国である。ならば脱GHQとして旧宮家を復帰させてもよいのではないだろうか。

旧宮家復帰が難しいのであれば、皇室のYをお持ちの旧宮家の男性を何らかの形で皇室のメンバーに迎え入れ、男子をなしていただくだけでもよい。国民が男系男子継承の意味を深く理解し、危機を克服したい。

 

筆者:竹内久美子(動物行動学研究家・エッセイスト)

 

 

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Kumiko Takeuchi

Author:

Kumiko Takeuchi is an animal behavioral scientist and essayist.

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