軍事協定延長でも韓国の反日・反米扇動は続く

 

 

韓国の文在寅政権は11月22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するとした決定の「条件付き効力停止」を発表した。また、日本政府による戦略物資の輸出管理強化を理由とした世界貿易機関(WTO)への提訴の取り下げを表明した。一方、我が国経済産業省は「韓国側が貿易管理体制の改善に向けた意欲を示している」として局長級協議を行うことを明らかにしつつ、GSOMIAと輸出管理問題は無関係との従来の立場を再確認した。

 

 

懲りない文政権の虚偽発表

 

ソウルからの情報では、韓国側がフッ化水素酸など3品目の戦略物資について適切な扱いをすることを前提に輸出管理強化撤回を検討することで合意されたという。この合意はこれまでの日本の主張が完全に貫かれたものだ。輸出管理強化の理由は、3品目が韓国に輸出された後、テロ支援国などに転売されている疑いがあった上、輸出管理を適切化するための実務協議が文政権になり1度も開かれていないからだった。今回合意した局長級協議で韓国が管理適切化のための措置を明らかにすれば、輸出管理を元のやり方に戻すことはあり得る。

 

文政権は24日に「韓国側が貿易管理体制の改善に向けた意欲を示している」とした日本の発表は事実ではないと抗議し、日本政府が陳謝したと一方的に発表した。日本政府は、発表内容は事前に韓国と擦り合わせていたものだと即座に反論した。8月のGSOMIA破棄通告の際、米国は理解していると発表して、すぐ、そのような事実はないと米政府に抗議されたことを思い出させる、文政権による虚偽発表だ。

 

そもそも8月の時点で、韓国の外務省、国防省など関係官庁はそろってGSOMIA破棄に反対していた。ところが文在寅大統領が独断で破棄通告を決めた。反日世論を煽れば来年4月の総選挙を有利に進められるという計算があった。大統領府に多数布陣している革命家出身の秘書官らが日米韓の軍事連携から韓国を離脱させたいと願っている。

 

 

未決着の戦時労働者問題

 

しかし、米政府が米国の安全保障上の利益を侵すとして韓国に強い圧力をかけ、対韓経済制裁さえ予想される事態となって、文政権は折れた。しかし、韓国世論は破棄賛成が51%、反対は29%で、文政権の暴走が過半数の支持を集めている。従って、今回の決定で反日だけでなく反米感情が高まる可能性がある。

 

破棄に反対したマスコミの大部分も日韓両政府が対立の原因をつくったと書いて日本の責任を追求していたし、根本原因である昨年10月の韓国最高裁判決(日本企業に朝鮮人戦時労働者への賠償支払いを命じた判決)については、韓国政府の善処を求めた日本の態度を批判する論調が多数を占めている。

 

その中で、「国民革命」勢力を自称し、文政権退陣要求運動を進めている保守派グループは、最高裁判決が「条約法に関するウィーン条約」違反であり、文在寅政権は判決を尊重するという立場を撤回して国内措置で日本企業の私有財産を守れという正論を展開している。正論が勝つか扇動が勝つか、まだ勝負はついていない。

 

西岡力国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授

 

 

国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第635回(2019年11月25日付)を転載しています。

 

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Tsutomu Nishioka

Author:

Tsutomu Nishioka is a senior fellow and a planning committee member at the Japan Institute for National Fundamentals and a visiting professor at Reitaku University. He covers South and North Korea.

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