201908 Super Kabuki Hatsune Miku

Nakamura Shido II and Hatsune Miko performing “Hanakurabe Senbonzakura” in August 2019 in Minamiza Theater, Kyoto. (©Shochiku-NTT/©Cho Kabuki)

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東京・歌舞伎座で12月3日に開幕する「十二月大歌舞伎」第1部で歌舞伎俳優、中村獅童(51)とバーチャル・シンガーの初音ミクが共演する超歌舞伎Powered by NTT「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」が上演される。超歌舞伎は平成28年、古典歌舞伎と最新テクノロジーが融合して誕生。11月中旬に開かれた記者会見で、初演から座頭(ざがしら)を務めてきた獅童が本公演について語った。

 

 

ついに殿堂で

 

超歌舞伎は令和元年には南座に進出。昨年は博多座、御園座、新橋演舞場、南座と4座で上演された。そして今年、ついに歌舞伎の殿堂、歌舞伎座で上演される。

 

東京・歌舞伎座(共同)

 

「うれしいという思いが一番強い。歌舞伎座でやるには異質な演目なので賛否両論あると思う。でも、それをやるのが中村獅童。伝統を守りつつ、革新を追求する生き方を貫きたい」と決意を語った。

 

超歌舞伎は、歌舞伎をほとんど見たことがないサブカルチャー好きの若者たちに支持されてきた。会場ではライブコンサートのようにペンライトが振られ、獅童の屋号「萬屋」のほか、初音ミクには「初音屋」、技術協力をしているNTTには「電話屋」といった大向こうが掛かる。

 

「歌舞伎座でペンライトが光るのは初めてでは。今まで見たことがない風景を、歌舞伎座で作ってみたい」と意気込む。

 

 

ミクを「尊敬」

 

上演されるのは初演と同じ演目で、歌舞伎の名作「義経千本桜」と初音ミクの人気ボカロ曲「千本桜」が融合した作品。

 

「歌舞伎の醍醐味である踊りや立ち回りなどがすべて盛り込まれているのが超歌舞伎。一見、奇抜なことをやりそうだが、われわれがやっている演技法は古典歌舞伎にのっとったもの」と説く。

 

さらに「(中村)勘九郎さんと七之助さんが『超歌舞伎に僕たちも出る』と言ってくれたことがうれしかった」。今回新たに加わった「発端の場」に、2人が出演する。

 

初音ミクについては「尊敬している。歌舞伎が未経験だった初演から、どんどん踊りも上達している。陰での努力は大変なものでは」と共演者を擬人化しながら、技術スタッフをねぎらった。

 

取材会で撮影に応じる(左から)長男の小川陽喜、次男の小川夏幹、中村獅童 =11月13日、東京・銀座(佐藤徳昭撮影)

 

次男、夏幹が初舞台

 

また、獅童の長男、小川陽喜(はるき、5)が出演するほか、「歌舞伎役者になりたい」という次男の小川夏幹(なつき、3)が初お目見えする。

 

会見で獅童は「夏幹は生まれながらに、両手の小指が欠損している状態」と明かした。「歌舞伎役者として指がないことは隠せない」とし、人前に立たせるべきではないのでは、と悩んだという。

 

その上で「子供の気持ちを尊重して、やらせようではないか」という結論に至った。「彼にしか分からない悲しみをこれから味わうかもしれないが、役者にとってそれは最大の武器。すごく強力なライバルが現れたと思っている」とエールを送った。

 

障害のある人を表す「チャレンジド」という呼称を紹介しながら、「チャレンジドってすごく格好いいと思う。前を見据えてチャレンジしていく精神を、僕も忘れたくない。超歌舞伎を歌舞伎座でやるということは、僕自身のチャレンジでもある」と表明した。

 

「歌舞伎座での上演は僕にとっては集大成。8年目を迎える超歌舞伎だが、その思いをすべてぶつけていきたい」。そして、「歌舞伎座がゴール地点と心の中で思っていたので、超歌舞伎は一回これでひとつのピリオドにしたい」。今回が超歌舞伎の見納めになるかもしれない。

 

12月26日まで。問い合わせは、チケットホン松竹(0570-000-4899)。

 

筆者:水沼啓子(産経新聞)

 

 

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