~~
ロシアのプーチン大統領が12月14日、国民との対話行事と記者会見を行い、ウクライナ侵略戦争の継続に意欲を見せた。
プーチン氏の侵略が首尾よく終わることがあれば、弱肉強食がまかり通る無法の世界となる。アジアにも当然影響する。この根本的な現実を再認識し、ウクライナ支援の隊列を固め直すべきだ。
プーチン氏は「ロシアが目的を達したときに平和は訪れる」とし、ウクライナの親欧米派排除を意味する「非ナチス化」や「非軍事化」が目的だと改めて述べた。米欧の支援は枯渇しつつあり、各戦線で露軍が優位にあるとの認識も示した。
対話行事は年末恒例だが、昨年は侵略戦争が苦戦続きで取りやめた。ウクライナの反攻が停滞し、戦況が好転したとみて今年は行ったが、侵略を正当化する茶番だ。来年3月の露大統領選へ弾みをつける狙いもあった。大統領選は自らの「圧勝」を演出するためのものだが、それでも政治基盤は強固だと誇示したかったのだろう。
プーチン氏が侵略戦争の勝利を展望しているとすれば、極めて遺憾なことだ。ウクライナと米欧日は現状をよく検証し、反省すべき点は改めなければならない。
露軍撃退に必要とされる武器の対ウクライナ供与が遅れ、結果として、露軍に占領地で強固な防衛線を築く時間を与えた。米議会では与野党対立でウクライナ支援の予算案が通っていないが、空費する時間はない。
プーチン氏は、今年の経済成長率が約3・5%になる見通しだと露経済の底堅さも誇った。米欧日には対露制裁をさらに強固にする努力が不可欠だ。
戦争の長期化でウクライナ国民に疲れが出ていることも指摘されるが、抗戦の意思が揺らいでいるわけではない。
ロシアにも甚大な犠牲が出ている。独裁体制ゆえに国民の不満が表面化しづらいことに留意する必要があり、国内事情はプーチン氏が豪語するほど安泰ではない。極端な戦時経済に明るい展望があろうはずもない。
プーチン氏は対話行事で「ルールに基づく国際秩序など実際にはない。ルールは時の政治状況や利益で変わる」とも言い放った。この危険な独裁者に、侵略の「果実」を与えるようなことがあってはならない。
◇
2023年12月16日付産経新聞【主張】を転載しています